二皿目、 ――後悔役に立たず 2
狐目は、俺を近くの喫茶店に連れて行った。
窓際の席に陣取って、アイスコーヒーを注文しながら、窓の外を指差す。
そこからは、駅の正面がよく見えた。
「あそこ、もうすぐ鞄持った男が現れまス」
「そいつから鞄を受け取ればいいんだな?」
狐目は左右に首を振った。
「ノー。鞄は、とっテ来る!あいつの隙をついて、こう、サッと」
「ちょっと待て!それじゃ泥棒だろ!」
思わず声を荒げた。
はっと辺りを見回したが、幸いにも平日真っ昼間の店内は閑散としていて、
眠そうにグラスを磨く店主の他には、お喋りに夢中なオバサングループが離れた席にいるだけだった。
「泥棒だなんて聞いてないぞ…!」
声をひそめて抗議する。しかし狐目は涼しい顔で言う。
「泥棒違いマス、その鞄もともと私ノ。
でも取り返すの難シイ。
私はトって来るヲ頼んだ。あなた引き受けタ。
約束した、違うカ?」
確かに俺は引き受けるとは言った。しかし、
「例え本当にあんたのだとしても、勝手に取ってきたら犯罪だ。
重要な情報を隠してたのはそっちだ!」
ふむ、と顎に手を当てて狐目は考えた。
「私の説明うまくなかったのコトあるかモ……。
じゃあこうすル、報酬に三万イロつけるでス。危険手当でス」
「よし、乗った」
やっぱり俺は馬鹿だった。