二十六皿目、 ――男子三日会わざれば 5
食料や日用品を一通り買い込んで、重い荷物と一緒に帰路につく。
スーパーから出る時と門を曲がる時は、どうしても一度周りを確認してしまう。
キンダイチの姿が見えやしないかと。
そんな筈はないのだが、何となく確かめておかないと気が済まない。
それらしき人物など見かけたためしもないと言うのに。
ちょっと敏感になっているのだろう。
アパートに帰り着く。
「ただいまー」
「オカーリ!」「オカァリー!」
鍵を開けて部屋に入ると、クロウとシロウが走り出てくる。
大荷物を手に台所へ向かう俺の足元に、ちょろちょろとまとわりついてくる。
「今日はチキンカレーだぞー」
「カレー」「カレー!」
それが自分達の大好物の名であることは、どちらも理解している。
肉を冷蔵庫に、冷凍物は冷凍庫にとしまい込む俺の後ろで、二匹はスーパーのビニール袋をつついてカサカサ鳴らしている。
中に入ったジャガイモや玉葱が気になるのだろう。
おもむろに頭を突っ込んで、何をしているのかと思えば、
シロウがニンジンの入った袋をくわえて、ずるずると引きずってやって来る。
何の悪戯かと思ったが、あれだな。多分。
“お手伝い”がしたい年頃なのだ。
「よしよし、よくできました」
人参を受け取った俺がシロウの頭を撫でてやれば、それを見ていたクロウが、我もとばかりにビニール袋を漁り出す。
標的にしたのは、米袋。
いやいやいやいや、いくら何でもそれは無理だろ。
5キロの米袋は、クロウよりも重いはずだ。
と思いきや、袋の端をしっかりと噛み締めて、ずるずると少しずつ引きずり始める。
「待て待て、袋が破れる!」
慌てて取り上げれば、竜の牙で噛みつかれた米袋には穴が開いていたが、
まあどうせすぐ開けるんだから問題はない。
「これは俺が運ぶから、お前はこっちを戸棚の所に持ってってくれ」
クロウの背中にじゃがいもの袋を乗せる。
クロウは戸棚目指して、意気揚々と台所を横断して行った。
そして、それを果たしたクロウを、俺は頭を撫でて誉めてやった。




