十九皿目、 ――油断大敵 3
「あの卵はとても危険なものです。
まだあなたが無事だというのはとても運がいい。
あの卵はあなたに害を与える。
早く私達に返した方がいい」
「私達?」
問い返されて、キンダイチは口を滑らせたことに気付いた。
胡乱げな視線で見返す俺に、キンダイチは肩を竦めて、事実を明かし出した。
「私は、国際生物研究所の研究員で、鹿島平祐といいます。
あなたが盗んだのは私達の研究対象で、危険な生物のサンプルです。
あなたに窃盗を依頼したのは、恐らく私達からサンプルを奪おうとしている敵対組織です。
あなたの事も組織の人間かと疑っていましたが、どうやらそうじゃないようですね」
あなた騙されたんですよ、とキンダイチは言った。
「あなたに依頼した人物の特徴を教えては貰えませんか?
あなたは危険に晒されています。
私達なら、あなたの安全に協力できます」
身元と自分達の事情を明かしたことで、俺の信頼を得られたと思っているのだろう。
だが、“このままでは危険、助けられるのは私達だけ”なんて話は、丸きり新興宗教の勧誘文句だ。
信用できるか。
俺はキンダイチに尋ねる。
「教えてもいいけど、こっちの質問にも答えて貰う」
「何でしょう?」
「鞄の中身は何だ?」
「竜です」
意外にもあっさりと、キンダイチは暴露した。
主人公と、キンダイチの立ち位置がはっきりしてきました。




