十三皿目、 ――どんな非日常にも、意外と慣れる 3
少し大きくなっても、二匹はやっぱりカレーを好む。
スパイスが好きなんだろうか?
辛いものなら何でもいいのか?
具には拘りが無いようで、牛も豚も鶏も魚介も好き嫌い無く食べるが、
クロウはチキンカレーが好きでシロウはシーフードカレーが好き。
玉子も好きなようで、俺の分だけに目玉焼きを乗せた時には二匹揃って狙ってきた。
今では二匹の分にも目玉焼きが乗っている。
仲良く奪い合って半分こして食べている。
竜の卵の殻は、砕いて燃えないゴミに捨てることにした。
二匹は暫く見当たらない玩具を探していたが、その内別の新しい玩具に興味を移して気にしなくなった。
家計簿をつける隣で、二匹が小さなサッカーボールにじゃれついて、もつれて転がっている。
「……ふむ」
俺は、電卓を叩く手を止めて溜め息をつく。
嫌なことに気付いてしまった。
……食費の出費が激しくなっている。
水道や光熱費は抑えている。以前からの節約の賜物だ。
クロウとシロウに買い与える玩具だって大したことじゃない。
それよりも、二匹の食費の方が深刻だった。
体はすくすく大きくなり、それにつれて二匹の食う量も増えつつある。
今のところ二匹合わせて大盛一人前くらいだが、これからもまだまだ増えるだろう。
いくらカレーで済むと言っても、今まで一人分だった食費が単純に二倍だ。
これは痛い。
ただでさえ金がないというのに。このままでは遠からず干乾びてしまう。
俺はあの狐目の口車に乗ったことを今更になって後悔した。
欲に目が眩んだせいで盗人になり、こいつらを飼う羽目になったのだ。
だが、何も知らずにボールを追い掛けて遊んでいる子竜に罪は無い。
憎むべきはあの狐野郎だ。
くそ、思い出しても忌々しい!
……それにしても、あいつはどこに行ったんだろう?
俺に卵を盗ませても、受け取れなければ意味はないだろうに。
俺が奴の名を知らないのと同様に、あいつも俺のことなど何一つ知らないはずだ。




