十一皿目、 ――どんな非日常にも、意外と慣れる 1
爬虫類が苦手でなかったのは幸いだった。
餌は何でも良いらしく、鼠を絞める必要が無かったのは有り難い。
インターネットで蜥蜴の餌を検索してみたけど、結構値が張るものだ。
竜が雑食で助かった。
餌用鼠なんて買う金は、俺には無い。
俺と同じものを食べさせ、水を与えれば十分だった。
牛乳はあまり好みでないようだ。
卵生だし、竜はミルクで育たないんだろう。
竜なくらいだから頭も良く、三日もすれば俺の言うことを粗方理解していた。
と言っても当然言葉なんて通じないから、大まかに意味だけ捉えているんだろう。
それにしたって分かるだけで凄い。
“待て”、“よし”、“ダメ”の三つはすぐに覚えた。
竜は、やはり俺を親扱いしているようだ。
少し姿が見えないと、ぴぃぴぃ鳴いて俺を探し始める。
寝る時は必ず俺の布団にやって来て、掛け布団の上に丸くなって眠った。
腹に乗った布団越しの二つの重みにも、割とすぐ慣れた。
竜達はカレーが好物だった。次が肉。
しかし俺の乏しい財政状況ではそうそう肉など食えるはずがなく、必然的に食卓にはカレーが増えた。
他に竜が好んだのは、テレビだ。
特に幼児向け番組。
意味が分かってるんだろうか?
二匹並んでテレビの前に伏せて、食い入るように画面を見つめる様は、人間の子供そっくりで思わず微笑ましくなった。
それから、ビー玉やピカピカした小銭、ガラスの箸置きや俺のジッポーライターも子竜どものお気に入りだ。
玩具だと思っているのか、二匹で持ち出してはどこかに隠してしまう。
卓袱台の下やテレビの裏、箪笥の隙間など。
俺が見つけて片付けようとすると、まるで番人のように立ちはだかって威嚇する。
そういえば、竜って光り物が好きなんだっけ?
俺は適当な箱を用意して、二匹が隠した宝物をその中に入れてやった。
カサカサした包装紙を中に敷いて、ラメ入りのシールで飾った。
二匹は大喜びで、それを宝物殿と決めた。
俺の所有権を主張したら、ライターは返してくれた。
宝物殿を作った建築士への報酬のつもりだろうか。
或いは、ライターは火を吐くから竜の仲間で、親である俺には預けてもいいと思ったのかも知れない。




