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十皿目、 ――そして今に至る 6
この竜は、盗んだ卵から孵ったものだ。
だから、竜は俺のじゃない。
しかし、竜は俺を親だと思い込んでいる。
単純に野良に放しておしまいという訳にもいくまい。
犬や猫とは違うんだ。
いや、犬や猫だって捨てるのは良くない。
ましてや、竜なんてものならば、下水道で生き延びた鰐より危険だったりするんじゃなかろうか。
何にせよあいつには連絡を取らねばなるまい。
何故竜の卵なんてものを盗ませたのか。
卵は孵ってしまったが引き取るつもりはあるのか。
あと、ギャラの値上げも交渉すべきだ。
俺の気も知らず、竜どもはテレビの下や箪笥の上を縦横無尽に探索している。
甲高い鳴き声を上げてはしゃいでいる。
それを眺めつつ、俺は溜め息をつく。
――竜なんて生き物が本当にこの世にいるなんて、今日まで思っても見なかった。
今は、知らなかったのは幸せなことだと思う。
そして、非日常的な生活が始まります。




