九皿目、 ――そして今に至る 5
しかし、俺の心配を余所に、一旦驚きから立ち直った後には、もう竜達は平然とカレーに食らいついていた。
もう一匹も、兄弟につられて黄金色に染まった米を貪り始めている。
生まれたての赤子だっていうのに、まるで平気な様子だこいつら。
後で知った話だが、竜の胃袋は桁外れに頑丈にできていて、食べたものは何だって消化して栄養に変えてしまうのだそうだ。
例えば、牛を一頭丸呑みしようが、岩を齧ろうが何ら問題ない。
つまりカレーのルー如き、全く要らぬ心配というものだった。
俺の昼飯が無くなった。
満腹した小さな竜どもは、だらしなく腹を見せて寝転んでいる。
と思いきや、一休みした次はそわそわと退屈し始めた様子だ。
卓袱台から飛び下り、俺の足元や膝の上をちょろちょろ這い回って遊ぶ。
二匹でもつれ合って、畳の上をごろごろと転がり合う。
俺が皿を片付けに台所へ移動すると、ピィピィ喚きながら慌てて着いて来た。
もしや…?
“刷り込み”というヤツだろうか?
鳥の雛などは、卵から出て最初に見た動くものを親だと勘違いするらしい。
この竜にとっては、俺がそうなった可能性は……十分ある。
皿を洗う間、竜は俺の足元でうろちょろしていた。
小さな爪を引っ掛けて、俺のズボンに登ろうともした。
皿とコップがカチャカチャ言うのが気になるようだ。
洗い物を終えると、また居間に戻る。
竜も揃って追いかけて来る。
座布団の上に胡座をかいて、まとわりついてくる竜をかまってやりながら考える。
……さて、どうしたものか。




