ドジっ娘のクッキーはコショウの味
何も考えずに読める系小説第二弾
「ねえ。」
「なによ。」
「なんで私たち、今公園にいるの?」
「公園にいるのは子供とサラリーマンだけじゃないのよ。」
「あら、そのサラリーマンはもうサラリーマンじゃないかもしれないわよ。」
「給料もらってりゃサラリーマンよ。」
「わからないねえ、不安だよ。」
「ていうかちょっと聞いてよあんた。」
その公園には今現在二人の女子高生がいる。
子供もサラリーマンもサラリーじゃないメンもいやしない。
そもそも今はそんな愉快なお昼のひと時ではない。
全国の奥様方がいっせいにスーパーに駆け込んでいるような、そんな時間帯だ。というか下校時だ。
なぜ女子高生二人組みがプリクラも撮らず、クレープも食べず、お気に入りの服も着ずに公園にいるのかと言うと、
まああれだよね、誰でも一度は経験したことがあるであろう甘酸っぱい恋の話です。
「女高生っぽいねえ。」
「アンタ女子高生でしょ、香奈ちん。」
香奈「そういうお主も、相当悪よのう布代屋よ。」
布代「その名前気にしてるんだから滅多に使わないでよ。」
香奈「私は気に入ってる。」
布代「アンタの私情なんて知らないわよ。」
いつも通りの香奈の変なムードに今日も布代は振り回されている。
香奈「そんで?あなたは何が気に入らないわけ?」
布代「そりゃあ勿論不条理なこの世界の秩序よ。」
香奈「弱肉強食は必然だと思うわよ。」
布代「違うの!」
香奈「必然と言う名の偶然だったか?」
布代「私、鷹田君に嫌われちゃったかも〜。」
香奈「ああ、やっぱり。」
布代「何がよ!」
香奈「偶然と言う名の必然であってたな。」
布代「あってない。」
香奈「じゃ話もついたしそろそろ帰るか。」
布代「まだ終わってない。」
香奈「ええ?終わったて聞いたけど。」
布代「違う違う!確かに恋は終わったけどさあ。」
香奈「じゃあやっぱこの話もここまでよ、しょうがないねえ。」
布代「まあ座って聞いてきねぇ。」
香奈「分かったわよぅ。」
なんともおちゃらけた会話であったがしかし布代は真剣に話を始める。
香奈はあまり興味を示してはいないようだがおかまいなどなかった。
布代「私ね、昨日珍しくクッキーを焼いたの。」
香奈「そいつは珍しい。」
布代「でね、そのクッキー今日おもいきって鷹田君に手渡したの。」
香奈「へえ、古風だねえ手渡しとは参った。面白くないわ。」
布代「なにがよ。」
香奈「思い切れなくて下駄箱に入れて帰ろうとして、間違えて隣にいれてしまうみたいな
ドジっ娘展開はないのかしら?」
布代「そいつは大往生ね。私もちゃんと考えてるのよ。」
香奈「私だって考えたのよ?(大往生の使い方ちがくね)」
布代「でも私は大きなミスを犯してたのよ。(ツッコミはないのかしら)」
香奈「ああ、そいつはいいねえ。砂糖と塩を間違えたか。」
布代「砂糖とコショウを間違えたわ。」
香奈「えええ!?」
ここに来て香奈はこの話題にとてつもなく興味を示した。
まあ当然のことだった。甘酸っぱい恋の話ではなく、
なにやら辛くて胡椒臭そうな話だったから。
香奈「そりゃまた不器用にドジったな。」
布代「不器用だからドジっ娘なのよ。」
香奈「違うな、ドジっ娘は器用なんだ。」
布代「え?どういうことよ。逆でしょ逆。」」
香奈「じゃあアンタはドジっ娘だ。」
布代「ええ?なんでよ違うわよ。」
香奈「ふふふ、それで?彼はどうなったんだい?」
布代「ええええ?」
俄然興味がわいた香奈は続きが気になって仕方が無かった。
こんな面白そうな話は無い。
布代「もちろん食べたわ。」
香奈「コショウをか、やるねえ。」
布代「とっても辛そうだった。」
香奈「その様子だと二つの意味でとれそうだなその『辛い』は。」
布代「あああ、もうダメだわ。私はもう・・・ダメだわ。」
香奈「ああ、だめね。」
布代「味見しておけば良かったわ。」
香奈「気を落とすなよ。」
まあ思ったより面白い話題ではなかった。
それを早々に(元々だが)感じ取った香奈は普通に励まして普通に帰ろうとした。
布代「まだ終わってないわ!」
香奈「うぇえ?終わりでしょ?」
布代「まだまだ私はポジティブ。」
香奈「まったく布代っぽいわねえ。」
布代「お腹すいたわ。」
香奈「じゃあ行きますかねえ。」
布代「え?どこに?」
香奈「ケーキの味見に。」
布代「ああ、やけ食いね。私も行くわ。」
香奈「やけはアンタだけよ。」
布代「わけてあげるよぉ。」
香奈「いらん。」
その後喫茶店でケーキをほおばる布代はすでにコショウの味など忘れていた。
次の日には元気にケーキを焼く布代の姿があった。
でもあげる人がいなくなったのでそのケーキは香奈の胃袋に入るのであった。
そういうときにはドジを発生させないのがドジっ娘のすごいところでもある。
面白みに欠けるのでつまらない反面、美味しいケーキが食べられて満足な香奈だった。
感想くれたらうれしいねぇ