怪奇事変 仮面
すいません、休みで日付を勘違いして投稿遅れました;
第四十二怪 仮面
「そうですか!ありがとうございます!はい、はい、ではそちらの日程でお伺いします!」
男は営業職に努めている新人の社会人であった。
同期と共に切磋琢磨しつつ業績を上げるためにアポイントメントを取りつつ、営業で自分の会社を売る。
そんな仕事だ。
当然競争率も高く、可視化できるように業績はホワイトボートに載っており、一目見て分かるようになっている。
人によってはこれをブラックと呼ぶ者もいるが、最初の会社がそう言うものだと思ってしまっている男は特に気にした様子はなかった。
学生時代の旧友にその話をした時は、若干引かれていたがまぁ……本人がどう思うかが大事なのかもっと、簡潔した。
「よし!」
業績が伸びるのもありがたいがまだ決まった話ではない。
これからどう営業していくかを練るために考える時間が必要となってくる。
「何はともあれこれで仕事もらえたし、ありがたいや!」
そう背伸びをし会社に戻ろうとしたところで、奇妙な店を発見する。
骨董品を取り扱ってる店……なのか、様々な国で作られた商品が展示されていた。
その中に見たことある“仮面”が飾られていた。
仮面舞踏会で被る目と鼻を覆った仮面だ、だが一番不気味に感じた物は白い仮面だった。
目の辺りは円形状に彫られており、鼻呼吸ができる部分を掘られており、口の部分は塞がっている。
「何に使うんだ?」
思わず手に取って仮面の感触を確かめる。
特段変わった感じはなく、強いて言うなら触り心地が良いっと言ったところだ。
だからと言って——これを被るとなると、何処で使うんだって話になる。
そんなことを考えていると、店の奥から声が掛かる。
「何かお求めで?」
「あ、いえ、ちょっと気になりまして」
「そうですか、どうぞゆっくり」
店主はそう言うと椅子に腰をかけて新聞に目を通し始めた。
接客がああで良いのか?と言う疑問もあるが、昔ながらの風習を持ったお店と言う認識で、気にせず店内を物色する。
やはり珍しい物が沢山あるが、あの仮面以外には特段惹かれる物が見当たらなかった。
仮面の値札を見るとなんと800円で販売されていた。
もう少し値が張るもので3000円以上だと思っていたが、案外安く拍子抜けだ。
「あの、これって」
「ん~?ああ、“白い仮面”か。800円だよ」
「いや、これってどう言うものなんですかね?」
「仮面だよ」
「ああ、すみません、言い方が悪かった。どういう用途で作られたモノなんですか?」
「ふむ……」
新聞を置くと店主はこちらまで歩み寄り仮面を手に取って、顔に近づける。
「こう使う」
「いや、それは分かりますが……」
「誰が作ったのかは分からないが、身分を隠すためのものだろう、ホレ此処を見ろ」
そう言って指を指した場所は目の穴がある場所と空気を入れる通気口となる鼻の部分であった。
「余程知られたくない素性、身分、それらを隠すために巧妙に作られておる」
「……はい、そうですね」
「例えば犯罪とか」
「それは!不謹慎ですよ……」
幾ら何でも犯罪に使われていた物を買いたいとは思わないだろう。
「すまんな、儂の頭じゃこれぐらいが精一杯じゃ」
「例えば大昔、素性を隠すために致し方なく付けてたとか」
「まぁどちらでも構わん、ようはコレが現代でどう使われるかと言う問題を気にしてるのであれば、対して役には立たん。本当に精々犯罪ぐらいだろう」
「……」
まぁ確かに、この仮面を被って犯行に及べば顔はバレないだろうが。
購入した所で展示品のように飾られるのがオチならば、生憎そう言った趣味は持っていない。
「色々聞いてすみません、失礼します」
「まいど~」
そう言って店を後にするも、店主の最後に言った言葉が過る。
「……“まいど”?」
店内で購入した商品は1つもないのになぜ“まいど~”なんだろう?っと疑問に思った。
帰宅後、コンビニで購入した商品を温めてそれを食べる。
ほぼ日課だ、自炊は正直疲れるのでしない、やった方が金銭的には安くて済むのかもしれないが、それよりも体力の方が疲れて限界を迎えている。
骨董品店に行ける元気があるなら料理の1つできるじゃないかって思うかもしれないが、端的に言えば面倒なのだ。
リュックを漁り明日必要な物を確認するなか、何やら硬いナニカに触れる。
それを引き出すと——
「えッ!?」
骨董品店で見ていたあの仮面が手元にあったのだ。
購入などはしていない、かと言って無断で持って出て行くような犯罪的な真似はしていない。
何時からこの鞄の中に入っていたのか?
あの店主が入れた……なんてことはあるはずがないが、その時にあの店主の最後の言葉が蘇ってくる。
『まいど~』
「いやいや、買ってない、俺は買ってないぞ」
そう言って骨董品店に戻そうかとも考えたが時間が時間だ、今日のところは無理がある。
仮面に触れるとやはり手触りが良い、裏面を返すと——驚いたことに、何か皺?ヒビ?のような膜のようなモノが付いていた。
「なんだ、コレ……」
手でゆっくりとその場所をなぞるも、ただ乾燥しているだけと言う結論。
だが、店主と色々な推測を話している内に変な憶測が頭を過った。
——これはかつて面を被った人の皮膚ではないのか?——
「……ありえない」
嘲笑的な含み笑いをして仮面を置く。
とりあえず、明日にまたあの骨董品店に行ってこれを返却すれば問題ないだろう。
いや、多少問題にはなりそうだが誠心誠意話せばわかってくれるはずだと信じて今日は就寝した。
翌日になって仕事は驚くほど順調に進んだ。
営業も取れて新入社員の中で頭1つ抜けたと言う形で社内でも大々的に祝いの言葉がかけられた。
その日打ち上げで飲みに行く話も出たが、今日は遠慮しておいた。
本当は行きたかったが、昨日恐らく無断でもってきてしまった仮面を返却しなければならなかったからだ。
そうして仕事終わりに骨董品店に向かい店主に声をかける。
「すみません~」
「はい~」
そこに現れたのは昨日のお爺さんとは違ってお婆さんだった。
「(参ったな、まぁでも事情を説明して返すだけだし、良いか)」
そう言って鞄から取りだした仮面を見せて事情を説明するも、お婆さんは真顔になったまま最後まで聞くと自分をある場所に案内した。
それは昨日展示されていた“仮面”の場所、そして——展示されていた“仮面”はそこに有るのだ。
「えッ!?」
「一年前にも似たようなお客様がいらっしゃいましただ、当店でこの“仮面”をお買い上げされたお客様は過去の帳簿を見てもいらっしゃいませんだ」
「でも……じゃ、この仮面は?」
「……“仮面”に触れたかだ?」
「はい」
「……皆この“仮面”に見とれて触れた数時間後から“仮面”が知らない内に自分の家に有った、見つかったと報告がありましただ」
「……それは、本当……ですか?」
「“複製の仮面”と私達は言ってます、正式な名前は分かりませんだ」
「……」
「ただ言えることはコレが何の用途に使う物なのか分からないことだけ……私達は間地かでコレを見てますが、1つ言えることは——直感的にコレを被ることは止めた方が良いってことだけですだ」
「……なぜ?」
「あくまで直感です、よくねーことが起きる気がして、あくまで観賞用として留めて置くことだけが一番良い方法な気がするだ」
そんな物を普通に売却して大丈夫なのか?と問いたいが、確かに、男も理由もなく魅了されてしまった。
被りたい……とまではいかないが、何故か魅入ってしまう、そんな魔力を帯びた力さえ感じてしまうほどに。
「その仮面も早く捨てた方が良いですだ」
「え?あ、はい……そのコレは此処で引きとってはもらえないんでしょうか?」
「……数人のお客様も同じ様に提案したが、全部次の日にはなくなってただ」
「……」
つまりどうしよもない…と言うことだろう。
だが注意点としてはお婆さんの直感を信じるならば被らなければ安全と言ったアドバイスはもらった。
それさえ覚えて観賞用にしておけば問題ないのだろう。
「わかりました、夜分遅くにすみません」
「気を付けてだ、いつだって はそこに居る」
「はい?」
途中聞き取れなかったが、それ以上お婆さんは何も言わずにただ静かにこちらを見ているだけだった。
それが不気味で囃し立てられるような形で店を後にした。
帰宅後、寝っ転がりながら仮面を見つめる。
被らなければ大丈夫の観賞用仮面、店主のお爺さんとは色々と推測の話をしていただけだが、推測と言うより憶測に近いかもしれない。
お婆さんはまるで核心に近いことを言っていた、経験談だった。
ともかく、あの店ではやれることはないし、男は無断で仮面を持って帰った訳でもお爺さんが入れた訳でもない。
通称“複製の仮面”と名付けられたそれからは魅了される何かがあった。
——もしこれを被ってみたら?——
そんな誘惑が何度も頭を過る。
自然と手に持った仮面は顔に肉薄しており、そして事故は起きた。
咄嗟に顔を逸らそうとしたが、身体が硬直したように動かなった。
何とか手を逸らそうとするも、まるで誰かに操られたように手はゆっくり、そう、まるでこれから肌にメスを入れる様にゆっくりと、吸い付くように顔面に引き寄せされ、装着された。
「ゴボッ!」
口の部分が塞がれているせいで言葉が籠る。
急いで引き離さそうとするも——仮面は外れることはなかった。
「ンンーッ!!ンンンーー!!?」
パニックになった男はそのままよろめきながらも、辛うじて見える2つの視界を使い、手探りで家の中を彷徨う。
着いた先は洗面所で自分の姿を確認するためだった。
当然の結果だが、自分の顔はあの仮面の形を成しており、決して外れることはなかった。
その日から生活は変わった、鳴りやまない着信音は会社からの連絡……だが、今は真面に話すこともできない。
外へ出るにも大変だった。
フードで顔を隠すような形で出たは良いものの、職質を免れない姿となってしまっていた。
あの骨董品店に向かうと店主とお婆さんは驚いた様子もなく、まるで「またか」と言わんばかりに頭を抱えるだけで具体的に対策は何もなかった。
結局、今後どうするのかもわからず彷徨う姿はゾンビ、或いは亡霊のような姿だったのかもしれない。
「どうですか?」
「ああ、痛いよ、凄く痛い」
「鏡を見ますか?」
「頼む」
そこに映し出されたのは包帯をグルグルに巻かれたミイラのような姿。
目は眼球が飛び出すかのように丸い窪みが出来ており、まだ痛みと共に血が滲んでいた。
鼻はなくなり、口は開きたくとも数年以上閉じた状態だったため、顎の筋肉が硬直して完全に開かなくなっていた。
「この仮面は」
「捨ててくれ」
ならどうして喋っているのか?
それは喉に装着された機械が言語かすることで喋っている。
スムーズに喋っているのではなくカタコトで。
この仮面は結局なんだのかいまだに解明できていない。
ただこの3年で分かったことは、これは装着してはならない仮面、装着した持ち主の顔の形を仮面そっくりに“複製”する仮面で過去にどのような用途で作られたかは不明。
男が感じた3年間を言葉にするなら——拷問。
これは昔、そういう使い方をされていたのかもしれない。
ただ、意図してやった訳ではなかったにしろ、もう男は普通の日常に戻ることは——できなかったのであった。
今もあの骨董品店はあるのだろうか?
そう言えばあの店主、あのお婆さんもやけに詳しかったな。
そうか、俺は——付けられたのか。
第四十二怪 複製する仮面
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