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第9話 「槍を信じろ」

この日の訓練は、武器の選択から始まった。

短槍、投擲槍、短剣。

新兵は、無意識に短剣へ視線を落とす。

「触るな」

隊長の声が飛ぶ。

「槍だ」

新兵は短槍を取った。

模擬戦が始まる。

相手は剣持ち。

距離はある。

だが、相手は詰めてくる。

新兵は、退く。

半歩。

さらに半歩。

――まだ槍だ。

突く。

浅い。

当たらない。

それでも、距離は壊れない。

相手が苛立つのが、分かる。

踏み込みが荒くなる。

その瞬間、先輩が横から投げる。

相手が避ける。

新兵は突いた。

深くはない。

だが、止まった。

「そこまで」

隊長の声。

新兵は、胸の奥で震えを感じていた。

怖さではない。

――いけた。

隊長は、短く言った。

「剣は、最後だ」

夜。

新兵は教本を開く。

主武器の項に、こうあった。

「槍は距離を管理するための武器である。

倒すためではない」

昼の動きが、腑に落ちる。

剣を抜けば、距離は終わる。

槍を信じれば、距離は続く。

新兵は、余白に書いた。

――槍は、帰るための武器。

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