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第3話 「当てなくていい」
この日は、武器が配られた。
短槍より軽い投擲槍。
新兵は、無意識に的の中心を見る。
「見るな」
背後から、隊長の声。
「当てる場所じゃない。
“動かしたい相手”を見ろ」
合図と同時に、新兵は投げた。
槍は、相手役の隊員の横をかすめて地面に突き刺さる。
外れた。
そう思った瞬間、隊長の声が飛ぶ。
「詰めろ!」
相手役の隊員が、一瞬だけ身をよじらせた。
避けるために足が止まり、体勢が崩れる。
そこへ、別の隊員が距離を詰める。
一撃は入らない。
だが、相手は後退した。
「今ので十分だ」
隊長はそう言った。
「一発で倒せなくていい。
削れれば十分だ」
新兵は混乱したまま、槍を回収する。
外れたはずの投擲が、
仲間を前に出す合図になっていた。
何度も繰り返す。
投げる。
避けさせる。
詰める。
また離れる。
隊長は、最後に言った。
「投げるのは、攻撃じゃない。
選択肢を減らすためだ」
夜。
新兵は寝床で教本を開いた。
今日の頁には、こうあった。
「遠距離武器の役割は、敵を倒すことだけではない。
敵の行動を制限し、間合いを作ることにある」
昼の訓練が、頭の中で繋がる。
当てなくていい。
逃がさなければいい。
新兵は、教本の端に小さく書き足した。
――動かせば、勝ち。




