第16話 「風走り、目覚める日」
森の朝は冷たく澄んでいた。新兵は肩の荷を軽くし、隊列の中に自然と溶け込む。
「今日は風走りとしての本格訓練だ」
隊長の声は低く響き、緊張感が森全体に広がった。
隊員たちは一斉に動き出す。木の間を滑るように走り、互いの距離を保ちつつ進む。
ジャベリンを投げれば、投げ終わる前に次の位置へ移動し、回収と再展開の動きを途切れさせない。
短槍で突く者は、突いた瞬間にはもう別の位置に滑り込み、敵を迎え撃つ味方との間合いを計算して走る。
新兵も、ここでようやく自分の足が風走りの動きに追いつき始めるのを感じた。
今までの訓練では間合いや理論を学ぶだけだったが、風走りとして認められた今、攻撃も防御も、仲間との連携も、すべて素早く動きながら行う必要がある。
ただ走るだけではない。止まらず、無駄なく、隙間を読み、仲間の動きに合わせる――それが風走りの基本だ。
森の奥に設けられた演習場では、隊員たちが互いに攻防を繰り返す。
投げ、突き、回避、間合いの調整――すべてが連続して動く。
光と影が交錯し、隊列は刻々と形を変える。止まることなく、風のように動き、影のように消える。
「次は連携だ」
隊長が合図を送ると、全員が瞬時に隊列を再編。
新兵は、目の前の敵に集中しつつ、隣の仲間の位置も把握する。
無駄な動きは許されない。走る速さと判断の精度、連携のタイミング――すべてが命を分ける要素だった。
風走りとして走り回る新兵の心は、訓練と同時に躍動していた。
これからは、個人の動きだけでなく、隊全体で素早く攻撃し、防御し、連携を繰り返す――
真の風走りとしての戦いが、今、始まろうとしていた。




