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第8話 主役は俺達だ!

 無事にエントリーできたべッサムは予選に参加するために地下のホールで待たされる事になった。そこそこ広めだが参加者が多いからか、狭くむさ苦しさが出ていた。


 世界中から強者が揃っているからか、どの野郎も勇ましかった。その群衆の中には二大スターである『鉄仮面ロガ』と『青マスクアグリー』の姿はなかった。彼らほどの人気者はこんな汗臭い場所に待機することはなく、特別室に案内されていた。当然観客達の目当ては彼らなので、予選に参加するまでもなく自動的にトーナメントにエントリーされる。


 そんな話を痣の男から聞いていたが、べッサムの頭の中は愛しの妻チャラミーの事しか考えていなかったので気に留めなかった。ちなみに痣の男はべッサムがエントリーしているのを見届けた後、観客席に向かった。


 さて、そうこうしているうちに鐘がけたたましく鳴った。


『ただいまより、クラッシャー王国公式のバトルロワイヤルを開始します!』


 司会が開幕を宣言すると、夥しい歓声が沸き上がった。この日の観客席は全て埋まり、立ち見する客が出てくるほどの大盛況だった。


『さぁ、まずはこの方達に登場していただきましょう! 鉄仮面ロガと青マスクアグリーです!』


 二大スターの名前が登場した途端、黄色い歓声が沸き起こった。彼らの名前を呼ぶ声も地下からでも聞こえていた。


 予選の者達は我こそが鉄仮面か青マスクを倒して優勝し、莫大な金と望みを手に入れてやるという自信とやる気で満たされていた。当然自分以外は全て敵と思っているので、息苦しくなるほど殺気が漂っていた。


 ここでようやくべッサムは周囲の参加者を見渡した。殺気に敏感な彼はザッと彼らの装備をチェックしていた。


『こんにちは、ハニー達! 青マスクのアグリーです』


 艶のある青年の声が聞こえると、たちまち黄色い声が沸き上がった。地下ホールの方では軽く舌打ちしている者が何人かいた。


『……ロガだ。よろしく』


 今度は低音ボイスが響くと、先程と同じくらいの黄色い声援が沸いた。予選者のイライラがマックスになったのは言うまでもない。


 そんな彼らの殺気をべッサムは冷静に受け止め分析し、自分の長年の戦闘経験で得たものを活かせば問題ないという結論に至った。


『アグリー様とロガ様にはセミファイナルでご活躍致しましょう! では、これより予選を開始します! 参加者はどうぞお進みください!』


 司会がそう言うと、ステージへと続く鉄の扉が開いた。


「よっしゃー! やってやるぞー!」

「青マスクには負けねぇ!」

「鉄仮面をぶっ壊してやる!」

「歓声は俺のものだ!」

「優勝してカアちゃんに仕送りだぁ!」


 ロガとアグリーの人気ぶりに感化された参加者は意気揚々と飛び出していった。べッサムは落ち着いた様子で徒歩で向かった。


 参加者は次々とステージに出て、咆哮を上げた。が、彼らが待っていたのは恐ろしいほどガラ空きになっている観客席だった。この大会に観戦しに行っているほとんどが二大スター目当てなので、彼らが登場しない素人の汗臭い試合など見る気もないのだ。


 現在残っているのは酔っ払いか、ボゥとしている老人、痣の男だけだった。黄色い声援を期待していた参加者は呆然と閑古鳥(かんこどり)が鳴いている観客席を見つめていた。


 すると、そこへピエロみたいに白塗りの男が観客席に登場した。先程二大スターの紹介をした司会の男だ。


「……えっと、皆さん。少し寂しいですが……予選を始めてもよろしいですか?」


 司会は申し訳なさそうな顔をして聞くと、参加者達は先程までの勇ましさはどこへやら弱々しく返事をしていた。


 ただ一人、べッサムだけは元気よく「おう!」と叫んでいた。



 さて、彼らの士気が上がるまでの間、ルール説明を記載しておこう。


 参加者はステージ内に転がっているボールを奪い合う。ボールには数字が書かれており、それがファーストステージのチケットとなる。制限時間は三十分。それまでに十六個の球を持っている者が次のステージへ上がれる。ただし、ボールは一人一個まで。複数持っていた場合は失格となる。


 なお、ボールを手に入れるためなら如何なる手段を使ってもいい。参加者を痛めつけたり殺す事も可能ーーそうルールを聞いた途端、彼らは再び殺る気を起こした。


 べッサムは変わらずボールを取ることだけを集中した。


「それでは、予選……スタートです」


 白塗りの司会がそう言った瞬間、上空からボールが降ってきた。

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