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ヒロインを選ばなかった攻略対象 ヒロイン 後編

「なんで? どうして? どうして誰も、私を選ばないの? 私、ゲーム通りやったじゃない……」


 卒業一カ月前に、フロリネルからの決別宣言。

 卒業直前にベンディックからは拒絶。

 卒業パーティーでは、ヴィンチェンゾに振られた。

 断罪返しでもなく、諭され振られた……


「ここは私の世界でしょ? どうして誰も私を選ばないのよ……」


 私は王宮での官僚試験を受験するも面接で不合格。

 王都で仕事を探すも、どこも私の名前を聞いた途端豹変する。

 仕方なく、貴族の屋敷の使用人として働く為に面接。


「イリーナ……学園を卒業したばかりですか……」


「はい。学園では生徒会の仕事を補佐していました」


「……分かりました。本日の面接は以上です」


「あの……私、いつから働けますか?」


「……旦那様と奥様の確認の許可が下り次第です」


「それは、いつ頃でしょうか?」


「私からは何とも……」


「そうですか。私は今……」


 住んでいる場所を告げる。

 使用人の面接を受けてから何日も経つ。

 いつ報せが届くのか分からないので、家から離れずにいた。

 

「イリーナ、いつまでそうやっているつもり?」


「お母さん、もうすぐ面接受けたところから連絡が……」


「これだけ待っても何もないんだ。落ちたんだよ。新しい仕事先見つけてきなさい」


「使用人だよ? 落ちるなんて早々ないよ。それに、私は学園で生徒会で補佐までしてたし……」


「今日は、お母さん仕事休みで家にいるから次の仕事の候補みつけてきなさい」


「……はい」


 母に急かされ街を歩く。


「使用人なんて、落ちる事なんて滅多にないのに……どうして?」


 とぼとぼと町を彷徨う。

 学園を卒業し生徒会の補佐の経験のある私が有意義に働けそうな場所は既に面接済み。

 面接していないところと言えば、食堂や屋台での呼び込みか役者。

 人通りのない場所にある店くらい……


『貴方のところも気を付けなさい』


『何をですか?』


『例の平民が色んなところに面接を受けているらしいわよ』


『例の平民って、貴族に婚約解消を迫って卒業パーティーで王子に直接警告されたっていう?』


『そっ、間違ってもそんな子を雇ったりしたら爪はじきにあうからね』


 隣同士の店員が開店前に話している場に遭遇。

 

「そんな平民いるのね……もしかして、私その人と間違われていたりするの? だから、皆私を警戒していたのね」


 理由が分かり納得。

 学園で優秀な人しか入れない生徒会の補佐を任命されるくらいの私が、職に就けないのはおかしなこと。

 もう一度同じ店に面接しに行こうと決意。


『その平民の名前ってなんていうんだっけ?』


『イリーナよ、イリーナ。忘れちゃだめよ』


 自身の名前が聞こえ振り向く。


「……私?」


 何かの間違いではないかと思い、会話をしていた二人の女性に近付く。


「あの……」


『『はい』』


 客商売なだけ、二人は初対面の私に声を掛けられ一気に仕事モードに。


「先程話していた平民について知りたいんですが……」


『あぁ、あんたも気を付けな。高位貴族や王族が警戒しているって話だから』


『そっ、イリーナって平民だけは雇っちゃだめよ。お店が潰れちゃう』


「潰れ……」


『お貴族様御用達の店には、卒業パーティーの後日にお達しが来たくらいだからね』


『私達のところに来るかどうかは分からないけど、「イリーナ」って名前だけは覚えて損はないよ』


「……そうなんですね……教えて頂きありがとうございます」


 私は逃げるように家に帰った。


「……嘘……でしょ……」


 私が就職できないのは、貴族や王子が関わっていたのを知った。

 

「ゲーム通りにしただけなのに……」


 それから私は名前を変え面接を受ける。

 まだ、名前しか知れ渡っていないのは幸い。

 だが、いつ顔まで覚えられるか恐怖でしかなかったので、貴族と拘らない場所を選び面接を受ける。

 『学園卒業』『生徒会の補佐』というアピールポイントを失い、顔も隠すように。

 なので、今も面接の日々。

 最近のヒロイン転生に幸せはないと知る。

 私なら大丈夫と思っていたが、現実は甘くなかった。

 もう、こんな世界にいたくない。

 

「イリーナ、あんた今回も面接落ちたの?」


「お母さん、イリーナって呼ばないで」


「イリーナをイリーナって呼んで何が悪いの? お父さんと一緒に考えた名前よ」


「……それは……」


 私は母に就職できない理由を話していない。

 母は私が王都の学園に通う事が心配で一緒に村から王都に近い場所に引っ越した。

 なので、古くからの馴染みがいないので私を「イリーナ」と知っている者はいない。

 外で母に会うことも今のところ無いので、私が「イリーナ」と知られていない。

 それもいつまで続くか……

 そろそろ、母に話すべきなのかもしれない。

 万が一娘が「イリーナ」と知れた時、母まで職を失うかもしれない。

 私は覚悟を決めて、話すしか……


「お母さん……大事な話が……」

 


 ───完───

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