第七章 オカン、クロゴネンド奪還作戦に参加する
騎士団、初の攻めの戦い。
早朝から出発したので夕暮れ前にはクロゴネンドに到着。
クロゴネンドから離れた場所に馬を止めた騎士団。騎士たちには攻めの戦いに対する緊張が見受けられた。
馬車から降りてきたオカンは体を解そうと柔軟体操を始める。オカンには緊張のきの文字も無い。常時、マイペース。
バーナードは馬から降り、取り出した折り畳み式の望遠鏡で街の様子を見る。
街の中を徘徊しているのは青い肌の魔族たちばかり、人の姿は見受けられず。
「そこそこいるな」
思ったよりも魔族はいるが、今の戦力で制圧できる。出発前のシンシアとの語らいのおかけで緊張はしていない。
魔族も直に騎士団が来ていることに気が付くだろう。ならば気付かれる前に攻め込む。
そのための作戦を練ろうした矢先、
「あの顔色の悪い連中をぶっ飛ばせばええんやな」
何度か戦った経験から魔族は敵であることは、認識できている。
「ちょっと待ってください」
慌ててバーナードと止めようとしたが、オカンはクロゴネンドへ向けて疾走。
「無理だよ、誰にもオカンを止めることは出来ない。それに作戦を伝えたところで聞きはしないから」
真輔の話は的を得ていた。
オカンの突撃に二人の魔族が気が付き、手に持った剣を構えた。しかし、オカンに敵として認識された時点で詰みなのである。
オカンダブルラリアットが二人の魔族の首に炸裂。ミシッと音がして首を変な方向に曲げながら数m後ろへ吹っ飛ぶ。
いきなりの来襲者。一体何なのか? 得体が知れなくても、いきなり攻撃してきたと言う事は敵であることだけは違わない。魔族たちが襲い掛かった。
不幸にも一番最初にオカンに攻撃を仕掛けた魔族。剣で斬りかかろうとしたが、それよりも早くオカンがしゃがんで足元を引っ掴み、
「なんやねん、その顔色。もっと、栄養とらんかい、栄養を!」
魔族を振り回し、他の魔族たちをふっ飛ばしていく。
「ビタミン採れ、ミネラル採れ、アミノ酸採れ、タンパク質採れ」
魔族は知性を有しているが、。いきなり突っ込んできたおばさんが仲間を捕まえて振り回し、武器代わりに使う光景は魔族の理解の範囲を越えていた。あっけにとられるのも無理はなし。
これをチャンスと捉えたバーナードは騎士団と共にクロゴネンドへ突入。
得体のしれないオカンの襲撃、その上のにバーナード率いる騎士団の連携の取れた攻撃。完全な虚を衝かれる形となった魔族たちになす術はない。
こうして騎士団はクロゴネンドを奪還した。あっけなく、一人の怪我人も出すことなく。魔族は強力な存在。今まで戦った際には怪我人ばかりか死人まで出ていたのに。
「ウイィィィィィィィィィィィィィィィィィ」
バーナードは勝利の雄たけびを上げているオカンを見ていた。
強いことは解るが、どうしても心の中で納得できない部分が拭えない。
一体、オカンとは何なんだ?
「オカンのことを理解しようとしない方が賢明だよ。だって、常識の外にいるんだから」
真輔からのアドバイス。
それならそれでいいかと、何とか納得できたバーナード。
突っ走る、オカン。