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異世界オカン  作者: 三毛猫乃観魂


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第二十四章 いくら、オカンでも毒を食らわば皿までは食べない

 事件が起こりました。



「オカンさん、無事ですか」

 帝都に到着するなり、事態を聞いたバーナードが駆けつけてきた。

「平気やピンピンしとる」

 胸を張るオカン。どっから見ても異常は見当たらない、元気溌剌状態。

「本当に何度も往復させて申し訳ありません」

 見せかけではない、バーナードの謝罪。

「しゃないやろ、あんなことがあったんやから」

 担架に乗せられたヘクターの遺体が騎士たちによって馬車から降ろされた。

 この後、鍋に入った“特製”料理と小瓶と共に専門家の元に運ばれ、詳しく調べられる。

 人一人が不審死した、これは間違いなく事件であり、調査や聴取が必要。そのことはオカンも真輔も深く理解している。

「結果が出次第城で話してもらうことになるので、それまでは宿屋で待機していてください」

 既に用意してある宿屋にバーナードが案内してくれた。


 用意されたのは帝都でも一二を争う宿屋。

「ふかふかのベットはええな」

 ベットに寝転がってオカンが寛いでいると、

「すいません」

 ニックが尋ねてきた。

 部屋に入ってきたニックに気を利かせて真輔がお茶を出す。

「ヘクターの話は聞きました」

 ベットからオカンは起き上がり、隣に真輔が座る。ヘクターがニックと料理長の座を競った間柄だったことは聞いている。

 出されたお茶を飲み干し、気分を落ち着かせた。

「ヘクターは性格に問題がありまして、私もいろいろと嫌がらせもされましたが、料理に向かう姿勢だけは本物です」

 ヘクターの料理の腕は認めている。いわば好敵手(ライバル)とニックは思っていた。

 いろいろと嫌がらせもされとはいえ、死んだと聞いて大喜びするような人物ではない。

 むしろ、好敵手の死を悲しんでいる。

 ニックの気持ちを解っているのでオカンも真輔も黙って話を聞く。


 二日後。

「結果が出ました。これから、城で会議が開かれます」

 バーナードが迎えに来た。

「ほな、行こか」

 立ち上がるオカン。

「直接、見たわけではないけど、僕も行くよ」

 手早く準備をする親子。

 バーナードと一緒にオカンと真輔は城へ。


 城の会議室に皇帝のジョセフ、皇女のシンシア、オカンと真輔と騎士団長のバーナードと貴族の代表者たちが集まった。

 咳払い一つしてオカンが話始める。

「あの兄ちゃんが“特製”料理つうのを差し出して来たんで食ったんや。まぁまぁな味やった。その後、なんか知らんけど、兄ちゃんが倒れよったんや」

 身振り手振り交じりで簡潔に話す。

「料理を食べた途端、ヘクターは亡くなったのか……」

「う~む、話からすると、料理に毒が入っていたのでは?」

「しかし、同じ料理を食べたオカン殿は無事だったぞ」

 話を聞き終えた貴族の代表者たちが話し合う。

「オカンは毒が効かないよ」

 えっ! と言うような感じで一同は真輔を見る。本当に毒が効かない人間がいるのか?

「賞味期限や消費期限切れの食品を食べ続けているうちに毒耐性が身に付いたよ。賞味期限や消費期限と言われても意味が解らないと思うけど」

 賞味期限や消費期限が一ヶ月や二か月切れていても気にしない、一年過ぎていても平気で食う。

 確かにこの世界の人たちに賞味期限や消費期限の意味が解らないが、オカンが毒が効かないと言う事は理解できた。

「そうなん?」

「そうだよ、自分のことなんだから、自覚しなよ」

「うん、解ったで」

 オカンが毒が効かないとなると、ヘクターの死因は毒の可能性が一気に高くなる。

「毒を入れ忘れたと思い、いつもの習慣で味見した」

 この二日間、バーナード率いる騎士団はヘクターのことを調査していた。ヘクターが自身の作った料理を味見して腕を磨いている情報は掴んでいる。

「私の出番のようですね」

 ヘクターの遺体と小瓶の中身と“特製”料理を調べていた専門家が進み出た。

「ヘクターの遺体からは毒が検出されませんでしたが……」

 小瓶を机の上に置く。

「この小瓶からは毒が検出されました。“特製”料理からも」

 一同の視線が小瓶に集中する。

「この毒は体内に入ると、一切検出されず、自然死にしか見えないのです。後は“特製”料理を処分すれば証拠は残りません」

 会議室にどよめきが起こる。皆、共通の疑問を持つ。それは、

「そんな毒が本当にあるのか?」

 貴族の一人が言ったこの言葉である。

 遺体からは一切検出されず、自然死にしか見えない毒があれば完全犯罪が容易に出来てしまうではないか。

「人間の世界にはありませんが……」

 人間の世界には存在しない毒なのに、現に毒の入っていた小瓶は机の上にある。

 と言う事は、

「魔族の毒なのですか……」

 シンシアに頷く専門家。人間の世界に存在しない毒があるとすれば、それは魔族の毒。

「信じたくはないが、帝国に魔族と通じた者がおるのだな」

 重々しくジョセフが口を開く。信じたくなくとも、証拠があるからには信じるしかない。誰もが言いたくないことを敢えて皇帝が言った。

「今回の件はヘクター一人では起こせない、他にも魔族の内通者が帝都に中にいる。バーナードよ、すぐに調査を始めろ。必ず内通者を見つけ出すのだぞ」

 ジョセフが指示を出す。

「解りました」

 一礼してから、調査を始めるためにバーナードは会議室を出て行く。バーナード率いる騎士団は優秀、確実に内通者を見つけ出す。

「あの“特製”料理、苦みがあったんやけど、あれ、毒やったんか」

 魔族の毒を盛られても、ピンピンしているオカン。

「一応、オカンさんは検査してもらった方が良いでしょう」

「そやな」

 シンシアの気遣いを締まりのない返事で応じる。







 オカンの食生活が原因で毒が効かなくなったのでした。


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