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異世界オカン  作者: 三毛猫乃観魂


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第十八章 オカン、嵐を呼ぶぜ

 バーナード率いる騎士団とバンアー魔伯爵とテモーワコオ魔子爵率いる魔王軍激突。

 草が生い茂るだだっ広いラッハパ草原。この草原は帝都の最終防衛ライン、突破されればあっさりと帝都は魔王軍に制圧されてしまう。

 帝都が制圧されればラティストアン帝国は魔族の手に落ちることになる。バーナード率いる騎士団が負けることは、そのままラティストアン帝国の終わりを意味する。

 この戦い、バーナード率いる騎士団は負けられない。


 馬車から降りるオカンと真輔。

「ぎょうさんおるな」

 それがラッハパ草原にずらりと並ぶ魔王軍を見た感想。オカンは不安や恐怖とは無縁の存在なのだ。

 馬から降りたバーナードもラッハパ草原に集まった魔王軍を見る、騎士団の十倍の数。

「十倍の敵がなんだ、数の不利など覆してやればいい。それができるからこそ、私たちはここにいる。恐れる者はここで帰ってもいい」

 帰る騎士は一人もおらず、全員がバーナードと共に戦う気満々。


 バーナード率いる騎士団とバンアー魔伯爵とテモーワコオ魔子爵率いる魔王軍がラッハパ草原で睨み合う。

「人間共の戦力は精鋭を集めただろうに、あの程度とはな」

 テモーワコオ魔子爵はガハハハハッと肩を揺らして笑い出す。

 魔王軍の侵攻は人間側にも伝わっているはず、ならば精鋭を集めていることは容易に想像がつくこと。

「テモーワコオ魔子爵、油断していると、足元をすくわれますよ」

 口ではそう言いながらもバンアー魔伯爵は全く魔王軍の敗北を考えていない。

 それもそのはず、身体能力は魔族の方が圧倒的に上。魔族一体に対し、人間が複数で戦うのが定石。それに加え軍隊は十倍の戦力差があるのだ。バンアー魔伯爵とテモーワコオ魔子爵が魔王軍が負けるはずがないと考えるのも不思議ではないこと。

「突撃しろ! いいな、人間共も一人も生かして帰すな」

 テモーワコオ魔子爵の号令で魔王軍が一斉に騎士団へと突撃開始。

「この後には帝都も攻めるんですから、あまり雑兵を疲れさせないでくださいよ」

「あの程度の連中に魔族が疲れるわけがないだろう」

 またもガハハハッと大声で笑う。

 バンアー魔伯爵とテモーワコオ魔子爵は動かず。人間相手に爵位持ちが出る幕は無いと考えているから。


 動き出した魔王軍を見たバーナードの、

「全員、出撃」

 掛け声共に騎士たちは前進、騎馬隊は馬を走らせる。弓兵と魔法部隊はその場に残る。


 こちらに前進してくるバーナード率いる騎士団を見たテモーワコオ魔子爵。

「人間共、動き出したか」

「どうでしょう、何分で人間共の軍を全滅させるか賭けませんか?」

 賭けを持ちかけるバンアー魔伯爵。

「乗った、俺は十分だ」

「私は五分としておきましょう」

 バンアー魔伯爵とテモーワコオ魔子爵にとって、これから始まる戦いは余興でしかない。余興ならぱ退屈しないように楽しむつもり。


 ラッハパ草原でバーナード率いる騎士団と魔王軍がぶつかり合う。


 身体能力の差と戦力差から、当初こそ魔族は完全に騎士たちを舐めてかかってきていた。

 ニヤニヤした笑顔を浮かべながら、襲い掛かってきた魔族が攻撃するよりも早く深く踏み込んだバーナードが袈裟懸けに斬り捨てる。

 ニヤニヤした笑顔を浮かべたまま倒れる魔族。

 バーナードに呼応するかの如く、騎士たちが魔族を斬り倒していく。騎馬隊は槍や斧で魔族たちを突き刺し断つ。

 本来、魔族に比べて人間の魔法の威力は劣るが魔法部隊もオカンの特訓で心身が鍛えられたことで威力が上がっていた。

 それでも劣る部分は弓兵がカバー。弓兵が装備しているのは真輔のアイデアで開発製造量産された“ある武器”コンパンドボウ。

 コンパンドボウは滑車を利用することで普通の弓よりも飛距離、威力、貫通力が高い。さらに安定性まである。流石に爆薬までは連れていないが。

 騎士団の猛攻。魔族たちの攻撃を躱し防御し、攻撃を繰り出す。次々と倒されていく魔族たち。

 戦闘が始まった時は薄ら笑いを浮かべていた魔王軍は戦いが進むにつれ、笑顔は戦慄の表情へと変わっていた。

 バーナード率いる騎士団との戦いは魔王軍にとって悪夢であった。身体能力も戦力も魔族が圧倒的に上回っているのに、追い詰められているのは魔王軍の方ではないか。

 身体能力の差と戦力差をバーナード率いる騎士団はものともせず、魔族たちを蹴散らしていく。

 開戦当初から二十分が過ぎた。二万人もいた魔王軍はどんどんと数を減らしていくのに対し、騎士団は誰一人として死者は出ておらず。


「こんな馬鹿なことがあるものかっ!」

 驚き大声を上げるテモーワコオ魔子爵。目の前の光景が信じられなかった。人間相手に魔族が圧倒されるなんて、常識的にあり得るはずがない。

 一年前ならば魔王軍が圧勝していただろう。しかし、オカンの無茶苦茶な特訓を乗り越えたバーナード率いる騎士団は無茶苦茶強くなっていたのである。

 魔王軍の半分以上が倒され、生き残った魔王軍の負傷者は少なくなし。何よりも人間に圧倒された精神的ショックは大きい。心身消失状態、このままでは使い物にはならない。

「まだ、負けたわけではないっ!」

「そう、まだ私たちがいます」

 テモーワコオ魔子爵とバンアー魔伯爵が前に出てくる。爵位持ちの魔族の強さは他の魔族たちとは比べ物にならない領域。

「立ち上がれっ、それでも魔族かぁ!」

 テモーワコオ魔子爵の恫喝は生き残った魔族たちの精神的ショックを吹き飛ばし、一気に奮い立たせた。さらに雪辱を晴らそうとやる気を漲らせる効果を生む。


 魔王軍の半分以上倒したと言っても、流石に十倍の魔王軍を相手にしたバーナード率いる騎士団の疲労は深刻、死者こそ出なかったが負傷者は出ている。とても爵位持ち二人を相手にする力は残ってはいない。

「よう頑張った。後はおばちゃんに任しとき」

 ずんずんと効果音が聞こえてくるかのごとく、オカンは歩き出し、どこからともなく取り出した磁石を口に咥えた。

 迫りくるテモーワコオ魔子爵とバンアー魔伯爵と魔王軍の前に立ち塞がる磁石を咥えたオカン。

「最初に血祭りになりたいのはテメーかっ!」

「人間共の見せしめにしてあげますよ、魔族に歯向かうとどうなるのかのね」

 テモーワコオ魔子爵とバンアー魔伯爵が纏う禍々しいオーラ。弱い者なら、触れただけでショック死しそうな濃密さ。

 しかし、オカンには通じない。磁石を咥えたまま両手を左右に真っすぐに伸ばし、回転し始めた。

 回転はみるみるうちに加速されて行き、生い茂る草を引きちぎり、地面の砂は舞い上がり、小石が巻き上げられる。やがてオカンの回転は嵐を呼ぶ。

 磁石を口に咥えたことで磁力の力が加わり、超電磁の嵐となる。名付けて超電磁オカンスピン!

「小賢しい技よ、消し飛ばしてくれるわっ!」

「所詮は人間の技、我々爵位持ちには児戯にも等しいですよ」

 余裕綽々で生き残った魔王軍を引き連れ、超電磁オカンスピンに突撃してくるテモーワコオ魔子爵とバンアー魔伯爵。

 超電磁オカンスピンを殴り潰そうとしたテモーワコオ魔子爵の右腕が消し飛ばされ、バンアー魔伯爵の放った魔法の矢はことごとく弾き飛ばされる。

 想像を絶する超電磁オカンスピンは驚愕するテモーワコオ魔子爵とバンアー魔伯爵と生き残った魔王軍を容赦することなく飲み込んだ。

 いくら爵位持ちであろうが大地を揺るがすオカンの直撃には耐えれることなど、不可能なのだ。それがオカン。オカンは常識の外にいるのである。

 オカンの回転が止まった時、地面にバンアー魔伯爵と生き残った魔王軍が降ってきた。

 ピクリとも動かない魔族。爵位持ちだけあり、テモーワコオ魔子爵とバンアー魔伯爵には微かに息が残っていた。

「お前は一体何なんだ」

「理解が追い付きません」

 そう言い残して倒れ、二度と動くことは無かった。

「VVV、ビクトリーィィィィィィィィィィィィ! フィリピンで大人気!」

「フィリピンで大人気なのはボルテスVだよ」

 勝利の雄たけびを上げるオカンにツッコミを入れる真輔は地面に落ちていた磁石を回収しておくのを忘れず。


 戦いは終わった。十倍の戦力、身体能力の勝る魔王軍相手に死者ゼロでの勝利、間違いなく大勝利である。

 最初から、オカンが出れば良かったのではないかと無粋なことを真輔は言わない。この勝利が騎士団に自信を与え、更なる成長をさせたのだから。







 フィリピン『ボルテスV』大好きだよね。

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