第十六章 オカン、冒頭で特訓
本当にオカンの特訓は冒頭です。
一言で言えばオカンの特訓は無茶苦茶であった。千本ノックを始めに雪山に連れて行き、大きな雪玉を転がして除けさせたり、ジープの代わりに馬で追い回したり、腕立て伏せ百回、上体起こし百回、ヒンズースクワット百回、十キロ走る。重りを担いでのうさぎ跳び、滝行に大きな岩を押して動かす、座禅による精神の鍛錬など、アニメや特撮の特訓をモチーフにバーナード騎士団を鍛え上げるオカン。
無論、命の危機にならないように配慮はしているが。ちゃんと、真輔もサポートしているし。
アホみたいな特訓でも着いてこれるようになれば、その分強くなる。さらに着いてこられるなるようになればますます強くなっていく。
帝都では真輔がアニメや映画を見て興味を持ち、ネットで調べていた“ある武器”の開発を行っていた。
“真輔からネットで覚えた知識を聞きいた話だけを参考にしたにもかかわらず、しっかりとした設計図を描き、それを元に製造を成功させた。帝都の職人たちの優れた腕前のなせる業。
製造に成功した後は量産体制へ。
武器を持って戦うだけが魔族との戦いではない、非戦闘員も出来ることは沢山ある。
☆
人間の領域と魔族境界ある町ロアゴンの領主、セニはため息を吐く。
単身、オカンを仕留めに行ったザニーグ魔男爵が帰ってこない。部下に調べに行かせたところ、返り討ちにあっていたことが解った。
オカンが強いとは聞いてはいたが、その強さが一人で爵位持ちを倒してしまう程の物とは想像さえもしていなかったこと。
これまではパワーバランスで言えば魔族側が圧倒的に有利であった。人間側は何とか侵攻を食い止めている程度でじり貧状態。
ところがオカンが現れたことにより、パワーバランスが逆転。あまつさえ、爵位持ちが倒されてしまうなんて。
「どうしたものか……」
このままでは人間を勢いづかせかねない。
「「オイ」」
突然、背後から呼びかけてきた二つの声。振り返った瞬間、セニは平伏。
いつの間に部屋にいたのか、一人はザニーグよりも大きくスキンヘッドで筋骨隆々の魔族、もう一人はいかにも貴族と言った風貌と出で立ちの魔族。
二人の放つ雰囲気にセニは冷や汗をかく。
「これはこれは、テモーワコオ魔子爵様にバンアー魔伯爵様」
筋骨隆々の魔族がテモーワコオ魔子爵、貴族の風貌を持つ魔族がバンアー魔伯爵。
「報告は受けた。ザニーグがやられたとな」
「申し訳ありません」
響くようなテモーワコオの声に床に額を擦りつけ、セニは謝り続けることしかできない。爵位持ちは簡単にセニを殺せるし、殺せる権限を持っている。
「あなたが気にする必要はありませんよ。所詮、ザニーグはその程度だったと言う事なのですから」
セニに優しく語り掛けるバンアーだが目には優しさなど微塵も無く、全く見向きしていない。まるでそこら辺にある小石のように。
ザニーグが倒されたことは報告した。報告はしたが、こんなにも早く爵位持ちが来るとは思ってもいなかった。
「オカンは俺が殺る」
「人間ごときをこれ以上、増長させるわけにはいけません。どちらが強者なのか思い知らせる必要があります」
響くようなテモーワコオの声に対し、バンアーは冷たさを感じさせる声。
「俺とバンアーの部隊を招集させた」
「いかにオカンが強くとも、所詮は一強。集団には勝てません」
爵位持ちの部隊は手練れぞろい、テモーワコオとバンアーの実力にザニーグは足元にも及ばない。
「セニ、お前には我々の部隊の出迎えの準備とラティストアン帝国へ攻め込むための物資を用意しておけ」
爵位持ちに命令されれば魔族の返事は一つしかない。
「はい」
だけである。
新たな爵位みちねそれも二人登場。




