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EP-1星4 LR ウルティメイトゥルース

オレ、神谷圭二(かみやけいじ)はこの朝から急いでいたペダルを漕いでいた。

「ハァ………ハァ……」

普段は特に学校でも目立たないタイプで、数少ない友達も軽い会話もするが遊びに行くほどの仲ではない。まぁ俗に言う隠キャだ。だけど別にそんな人生に対して特に不満は無い。むしろ()()があるから毎日が楽しい。


「ハァ……ハァ…!」

オレが今息遣い荒く急いでチャリを漕いでいるのも()()があるからだ。

「着いた!」

乱暴に自転車をとめ、軽く袖で汗を拭いながらオレはショッピングセンターの自動ドアを駆けていく。慣れた足取りで階段を昇りゲーセンコーナーへ直行する。

いつものうるさい店内を足速に進んでいってオレは辿り着く。


「ホッ………」

オレはそこでやっと一息つくがまだ警戒を怠ってはいけない。オレは辺りを見回す。オレ以外に目の前のゲーム筐体を狙ってるヤツがいない事を確認するとやっとオレは心の底から安堵する。

(よし、今弾は初っ端からいける!)

ガッツポーズを心の中でしながら貸し切り状態の筐体の前にオレは腰掛ける。


え?何でこんなに感情の起伏が激しいかって?そりゃあ今日はデータカードダス『ウルティメイトゥルース』

の新弾稼働日から6日経っただからだ。

「よし……頼むぞ!」


深呼吸しながらオレは筐体に100円玉を投入した。ゲーム選択画面で『カードをかう』を選ぶ。1枚カードが出てきた。記念すべき一枚目は

「まぁ……そりゃ最初だもんな。」

レア度星2の『ガスバードー』というあまり強くないカードだった。だが、これで終わりじゃ無い。オレはまだ4900円分の100円玉がある。前日に両替しておいたものだ。オレはそこから慣れた手つきで次々とお金を入れていく。


合計50枚のカードを購入し、筐体のカード口に溜まったカードを一気に取り出し、オレは一旦その場を離れる。ベンチに腰掛けカード確認をしていくとやはり思った通りだ。

「星4ブレイズパラディンゲット!」

オレは狙っていた最高レアのカードを手に入れる事に成功し、小声で喜ぶ。やはり稼働日初日よりこれくらい日にちが経ってる方が出やすいのだ。早速カードの性能を確認し、事前に持ってきたおいた相性の良いカードと組み合わせプレイしようと筐体に戻ったがオレは来た道を引き返した。


(邪魔しちゃいけないよな……)

子どもが来ていたのだ。そう言えば世間は夏休みか。子供が朝から来ていてもおかしくない。本来の対象年齢は児童層のゲーム。こういう時は大人は子供に席を譲るものなのだ。

一応目当てのものは見つけられたのでカドショでダブりを売りに行こうとした時信じられない事が起こった。


突然目の前の床や天井にヒビが入っていた。思わず立ち尽くすと左方向から炎が吹き上がり思わず腰が抜け叫ぶ。

「うわぁあっ!」

人々が逃げ惑う中、オレは自分の目を疑った。

「フレイラプトル?」

それは『ウルティメイトゥルース』に出てくる強力なモンスターの一体だった。おそらく店内の破壊も、さっきの炎もヤツの仕業なのだろう。


ラプトルは吠えながら炎を吐き、鋭い爪で店内を破壊し暴れ回る。オレはとにかく反対方向に走った。

「でも、え?何で……!」

訳が分からなかった。ゲームの中だけの存在が何で現実にいるんだろうか。これは幻覚か?夢なのか?半分パニック状態でオレは逃げる。が、

「何だよ何だよ!?」

ラプトルは一体だけではなかった。目の前にもう一体が出現し、反対方向に逃げようにもさらに一体出てきた。やがて先ほどの奴も現れた3頭に囲まれる。


目の前で見るラプトルは画面越しで見るよりずっと恐ろしく、オレは動く事が出来なかった。間も無く牙が迫ってきてそこからの記憶は無かった。


「ここは?」

オレは目を覚ます。そこは一応見覚えがあった。『ウルティメイトゥルース』のバトル画面に出てくる平原のような場所だった。起き上がると体のあちこちにガシャガシャと音がする。違和感を感じ手を見ると赤い装甲に包まれていた。それも既視感があった。

「まさか……!」

オレは偶然近くにあった泉に駆け寄り現在の自分の顔を確認する。

「ブレイズナイトだ…………!」

愕然とする。そこに写っていたのは神谷圭二ではなくゲームに登場するキャラの1人『ブレイズナイト』だった。




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