好都合オブザデッド
宝くじが当たった。億万長者になった。
ジィちゃんが死んだ時、十数万円の遺産を巡り親族が目も当てられない小汚い争いをしたのを僕は知っている。
無いよりは良いが、ありすぎる方が問題だ。ということで今年中にある程度使うことにした。
会社はできれば今すぐに辞めたい。ただ、後腐れがないように会社の規定は守ろう。1ヶ月−有給残=5日。辞めると決めたら5日くらい気楽なもんだ。
何か楽しい店を始めたいな。最近ソロキャンプにはまっている。素人ながら使いやすいギアを見る目はあると思う。初心者向けのキャンプ用品店なんて楽しそうだな。まさに趣味の店。
せっかくだし秘密基地や要塞のような風体の店にしたい。屋根裏部屋と地下室、シアタールームも欲しい。温泉も好きだ。釣りも好きだ。海の近くも楽しそう。船も良いな。井戸水ポンプにも憧れがある。
だが、元々インドア派なので家から出ない生活を極めるのも楽しそうだ。日持ちのする食料と水も買い込もう。それなりに器用な方だ。時間がある時は手間をかけて家事をするのも楽しい。
1年後。
「ついに、明日オープンだ」
ここぞとばかりに広げた夢の大風呂敷をギュウギュウに詰め込んだ、大きなシェルターのような家を建てた。その一部を初心者向けのキャンプ用品店に。明日オープンする。商品を仕入れすぎた気もするが、日用品としても使えるものばかりだし食品類は保存食が多いので賞味期限が長いし。などと、心の中で言い訳しながらテレビをつけた。
どうやら近くの街で、ゾンビが出たらしい。