↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
49/102

第49話 EP8-9 皆日々を積み重ねる

自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。

オリジナル小説のみです。

 この世界《せかい》の隣《となり》には、『狭間《はざま》』と呼《よ》ばれる世界《せかい》がある。

 狭間《はざま》には、『狭魔《きょうま》』と呼《よ》ばれるモンスターが出《で》る。

 狭魔《きょうま》を倒《たお》す、『魔狩《まかり》』と呼《よ》ばれる人間《にんげん》がいる。


   ◇


 桃花《ももか》と片桐《かたぎり》母《はは》の手合《てあ》わせを目《ま》の当《あ》たりにした七海《ななみ》が、目《め》を丸《まる》くして呟《つぶや》く。

「そうか。ボクは、初動《しょどう》が遅《おそ》いのか」

「そうっす。七海《ななみ》さんは、相手《あいて》の動《うご》きを見《み》てから、自分《じぶん》の動きを決《き》めて動《うご》き出《だ》したっす。桃花《ももか》と片桐《かたぎり》お婆《ばあ》さんは、動き出しながら相手の動きを見て、自分の動きを決めてたっす」

 オレは全面的《ぜんめんてき》に肯定《こうてい》した。伝《つた》わって良《よ》かった。


 オレは、遠見《とおみ》 勇斗《ゆうと》。十四歳(さい)の中学生《ちゅうがくせい》で、冴《さ》えないメガネ男子《だんし》である。普段着《ふだんぎ》のT(ティー)シャツジーパンで、腰《こし》に廉価品《れんかひん》の長剣《ロングソード》をさげる、一応《いちおう》、駆《か》け出《だ》しの魔狩《まかり》である。


「あいたたた。腰《こし》が……」

「おいおい。婆《ばあ》さん、大丈夫《だいじょうぶ》か?」

 片桐《かたぎり》母《はは》が痛《いた》そうに腰《こし》を押《お》さえて、黒《くろ》い革《かわ》ジャン革《かわ》パンツの古堂《ふるどう》に肩《かた》を借《か》りて、縁側《えんがわ》にあがる。

 尊《とうと》い犠牲《ぎせい》だ。片桐《かたぎり》母《はは》は全《すべ》てを理解《りかい》して、未来《みらい》ある若者《わかもの》のために、老骨《ろうこつ》に鞭《むち》打《う》ってくれたのだろう。


「七海《ななみ》さんは、どうして賞金《しょうきん》稼《かせ》ぎなんてしてるっすか?」

 オレも縁側《えんがわ》にあがる。

「賞金《しょうきん》稼《かせ》ぎなんて、危《あぶ》ないわ。水瀬《みなせ》さんも心配《しんぱい》してるでしょう?」

 腰痛《ようつう》に苦《くる》しむ片桐《かたぎり》母《はは》から、重《おも》い忠告《ちゅうこく》が出《で》た。

 七海《ななみ》が気《き》まずげに苦笑《くしょう》する。縁側《えんがわ》にあがって、オレの隣《となり》に座《すわ》る。

「ママは、ボクを自分《じぶん》の思《おも》い通《どお》りにできないのが気《き》に入《い》らないだけさ」


「七海《ななみ》のお母《かあ》さんって、片桐《かたぎり》さんの元《もと》パートナーなんでしょ!?」

 桃花《ももか》が話《はなし》に食《く》いついた。

「もっ、ももももしかして、おっ、お父《とう》さんはっ! かかかか片桐《かたぎり》さんででしょうか!?」

 フリルな私服《しふく》の琴音《ことね》も、興奮《こうふん》気味《ぎみ》に食《く》いついた。


「違《ちが》う違《ちが》う。パパは、一般人《いっぱんじん》のサラリーマンだよ。ママの自分勝手《じぶんかって》に耐《た》えられずに別居《べっきょ》するような、普通《ふつう》の人《ひと》だ」

 七海《ななみ》がボーイッシュな微笑《びしょう》で答《こた》えた。

 複雑《ふくざつ》そうな家庭《かてい》環境《かんきょう》だ。なるべく触《さわ》るまい、とオレは心《こころ》に誓《ちか》った。


   ◇


「どうして賞金《しょうきん》稼《かせ》ぎをしてるのかって? そんなの、決《き》まってるだろ?」

 七海《ななみ》が不思議《ふしぎ》そうにオレを見《み》る。

「お金《かね》を稼《かせ》ぐためさ」


「お金《かね》を稼《かせ》いで、その後《あと》はどうしたいっすか?」

「えっ? そ、それは」

 七海《ななみ》が今度《こんど》は頬《ほお》を赤《あか》らめて、言《い》い淀《よど》んだ。

 不意《ふい》に女子《じょし》っぽい反応《はんのう》をされると、ドキッとする。

「ボクは、その、笑《わら》わないで聞《き》いてくれよ? よくある話《はなし》で、アイドルになりたいんだ。光速《こうそく》のライトニング様《さま》や、華麗《かれい》なるシルヴィア様《さま》みたいな」


 斎賀《さいが》 皐月《さつき》こと『ディメクラ』は、憧《あこが》れる魔狩《まかり》に名前《なまえ》があがらないことで名高《なだか》い。


「まずは、装備《そうび》の充実《じゅうじつ》だね。歌《うた》とダンスのレッスンも受《う》けたい。名《な》のある武器《ぶき》を手《て》にするのが、当面《とうめん》の最終《さいしゅう》目標《もくひょう》かな」

 照《て》れながらも、夢見《ゆめみ》がちながらも、意外《いがい》と具体的《ぐたいてき》だ。


 才能《さいのう》のある魔狩《まかり》なら、一度《いちど》くらいは目標《もくひょう》にする。

 最強《さいきょう》の魔狩《まかり》に名《な》を連《つら》ね、名《な》のある武器《ぶき》を手《て》にする。

 桃花《ももか》も昔《むかし》は、勇者《ゆうしゃ》になって魔王《まおう》を倒《たお》す、と夢《ゆめ》を語《かた》っていた。現実《げんじつ》には魔王《まおう》はいないと知《し》って、落胆《らくたん》していた。


「ボクはね、恵《めぐ》まれてると思《おも》うんだ。希少《きしょう》なマーメイで、ライバルが少《すく》ない。バトルコスチュームが水着《みずぎ》だから、人目《ひとめ》も惹《ひ》きやすいだろ?」

「それは、そうっすね。水《みず》の事故《じこ》を減《へ》らす、って売《う》りも強《つよ》いっす」

 オレは思《おも》わず賛同《さんどう》した。


   ◇


「ところで、片桐《かたぎり》のオバァサン。強《つよ》いんだね、ビックリした。魔狩《まかり》だったの?」

 興味《きょうみ》と話題《わだい》が、片桐《かたぎり》母《はは》に移《うつ》った。

「昔《むかし》は、魔狩《まかり》としてギルドに登録《とうろく》していたわ。でも、才能《さいのう》がなくて、鍛錬《たんれん》を積《つ》んではみたけれど、ランクB止(ど)まりだったのよ」

 片桐《かたぎり》母《はは》が、腰《こし》を擦《さす》りながら答《こた》えた。


「どうりで、強《つよ》かったわ」

 桃花《ももか》が言《い》いながら、片桐《かたぎり》の差《さ》し入《い》れのドーナツを選《えら》ぶ。

 応《こた》えて、片桐《かたぎり》母《はは》が微笑《びしょう》する。

「退治《たいじ》した狭魔《きょうま》の数《かず》なんて、数《かぞ》える程度《ていど》。自分《じぶん》の凡庸《ぼんよう》さを悟《さと》って、諦《あきら》めてしまったの」


 そういう人《ひと》が大半《たいはん》なのだろう。

 近《ちか》くに桃花《ももか》と琴音《ことね》がいるから、忘《わす》れる。皐月《さつき》やライトニングを見《み》たから、錯覚《さっかく》する。

 魔狩《まかり》が狭魔《きょうま》を倒《たお》すのは、ド派手《はで》なヒーローショーじゃない。煌《きら》びやかな舞台《ぶたい》でも、華《はな》やかなステージでもない。


「そんなんじゃなくて、強《つよ》かったわ」

 桃花《ももか》が褒《ほ》めて、照《て》れたように頬《ほお》を赤《あか》らめて、ドーナツを頬張《ほおば》った。

「ふふ。ありがとうね、桃花《ももか》さん」

 片桐《かたぎり》母《はは》が、嬉《うれ》しげに微笑《ほほえ》んだ。


   ◇


「七海《ななみ》さんには、桃花《ももか》と打《う》ち合《あ》えるようになってもらうっす。それくらいじゃないと、『禍《まがつ》』の討伐《とうばつ》なんて無理《むり》っす」

 オレは、心《こころ》をスパルタコーチにすると決《き》めた。七海《ななみ》のためだ。


「え(ふぇ)? この(ふぉふぉ)辺り(ふぁふぁふぃ)に『禍《ふぁふぁふ》』が(ふぁ)いるの(ふふぉ)?」

 桃花《ももか》が、この話題《わだい》にも食《く》いついた。

 オレは答《こた》えようとして、戸惑《とまど》って、首《くび》を傾《かし》げる。

「……え、いや、そういうわけじゃ? えっと、流《なが》れで『禍《まがつ》』がいるっぽい話《はなし》にはなったような?」

 いないならいないでいい。いない方《ほう》がいい。


「ねぇ、勇斗《ゆうと》クン。明日《あした》は、ボクに付《つ》き合《あ》ってよ? 楽《たの》しいことを、教《おし》えてあげる」

 七海《ななみ》がオレを真《ま》っ直《す》ぐに見《み》つめて、悪戯《いたずら》っぽく微笑《びしょう》した。

 何《なに》を教《おし》えてもらえるかは、なんとなく、分《わ》かった気《き》がした。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第49話 EP8-9 皆《みんな》日々(ひび)を積《つ》み重《かさ》ねる/END

読んでいただき、ありがとうございます。

楽しんでくれる人がいると、書く励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。