十七
ジオと私のお出掛け理由は私の衣服の購入となっているが、本当の目的は漁師達に会って火をつけること。
彼と私はこの国に花街監査祭りを開催してもらいたい。
その為に彼が考えた作戦の一つが、かつて皇帝交代さえ引き起こした漁家達を怒らせることだ。
私はその歴史を知っているけど、ピンッとこない。
しかし、ジオはあの面倒な人達を上手く焚き付けると役所が燃えると語った。
そんな作戦でいけるのか半信半疑だけど、アサヒ姉さんが「恩人ユラ姉さん関係の娘に何をした!」と激怒して、さっそくあちこちに放火を始めたらしく、それと似たようなことだそうだ。
神社を出た私達に、ジオはこう笑いかけた。
「ナナミさんもアズサさんも箱入り育ちなので、買い出し前に観光はどうですか?」
「良いならそうしたいわ。アズサさんはどう?」
彼女は病弱という情報が気になるけど、きっとジオやユリアは知っていて、彼女に無理をさせないだろう。
「うわぁ。観光ですか? したいです」
アズサが大賛成という様子なのでそれなら私も賛成みたいに振る舞う。
私も少しはお嬢様らしくなろうかなぁとアズサを眺めた。
誘拐されなかったら、私はきっと女学校に通えて、アズサのようだったのだから。
「繁華街観光はいつでも出来ますので、せっかくだから船を見せてもらいましょう」
今日は晴れているし、叔母達のおかげで魚が空から降ってきたという珍事があったらしいので、きっと漁師達の機嫌が良い。
ジオはそう告げて、知人のいる船着場へ行こうと私達を誘った。
魚を降らしたのはアズサ疑惑だけど、彼女は何も言わないで挙動不審なだけ。
とりあえずその話題は出さずにジオに賛成。
全員賛成なのでジオの案内で船着場を目指す事に。
「あっ」
「ナナミさん。どうしました?」
ジオに問われたので、思い出した質屋の娘の話をした結果、ユリアにそれは自分の友人だと告げられた。
そんな偶然があるんだ。
「そうなんですか?」
「私からマリさんのお父様にご報告しておきます。色々ありまして」
「そうですか」
ふーんと流そうとしたけど、私は親切な人達のおかげでここにいるので、質屋のマリは大丈夫なのかと尋ねた。
「私の叔母様と親友がお世話しているので安心です」
「ユリアさん、自分はその話を知りません。そのマリさんを気にかけているのはどの叔母上ですか?」
「レイ叔母様です。ジオさんには関係ない話だから誰も教えていなかったのでしょう。助けが必要なら言います」
「そうですか」
この会話が終わると、アズサがおそるおそるというように、レイスという人物はどう悪いのかユリアに質問。
ユリアはお兄様は反抗期ですと一言。
「反抗期ですか」
「ジオさんは優待生なのにお兄様は不真面目です。文通ならジオさんとした方がええですよ」
「じ、自分ですか? いやぁ。レイスの文通相手を奪うなんて、略奪なんて、世間体が悪いです」
そう言いながらデレデレしているので腹が立って、前を歩くジオの草履に軽く石をぶつけておいた。
不思議なことに風が吹いて、似たような小石が飛んできてジオの草履に直撃。
彼は何も気がつかず、アズサを眺めて照れ笑いを浮かべたまま。
私の方が美人だけど人には好みがあるし、お嬢様、お嬢様していると良いのかもしれないので、とりあえず言動に気をつけようと決意。
なんで決心しているのだろうと自問して、答えはうっすら出ているので自然と体温が上がった。
「ふ、不真面目でも……反省しているそうで……。私は優し……と思……です」
レイスさんがええですという声は蚊の鳴き声くらい小さかった。
この顔は遊楼で何度も見た恋する女の顔で、花街も外街も、遊女もお嬢様もこれは変わらないのだなぁとぼんやり。
「いえ、二人の優しさは同じくらいです」
キッパリ否定したユリアは、ひょうひょうとした顔で凛々と歩いている。
彼女の兄ならきっと、レイスもこういう雰囲気なのだろう。
「そうかなぁ。自分は全然なので精進します。レイスと異なり文通お申し込みすらされません」
ぼやいたジオを、驚愕という顔のユリアが見つめている。
「ユリアさん。どうしました?」
そう、アズサがユリアの顔を覗き込む。
「いえ。コホン。ジオさんは文通お申し込みをしたいと考えたことはないのですか?」
「知っているではないですか。ありましたけどミズキでした。あの嘘つきに騙されて悔しいです」
ミズキの見た目は普通だけどやたら妖艶だったし、一つ屋根の下にいればそんなこともあるのだろうか。
ミズキだとあまり腹が立たない。私もうっかり、ときめいたので。
「ミズキさんには皆、騙されています」
「テオは騙されていないですよ」
「……」
「今日はなんでいないんですか? ジオと海なんてズルい。休みを交換するって言いそうなのに」
テオとは誰かとアズサに質問したけど彼女は知らない人物だそうだ。
「あの、ユリアさん、ジオさん。テオさんとはどなたですか?」
アズサが勇気を出したというように話しかけた結果、テオは二人の幼馴染の火消しだと判明。
ユリアが険しい顔になり、宙を睨むような表情に変化した。
「ユリアさん、どうしました?」
「……実はテオさんを骨折させてしまいました」
「……なんでですか?」
ジオの問いかけに、ユリアはぼそぼそと小さな声で回答。
テオが蜂に刺されて死んでしまうと、木刀で蜂を突いたら彼の後ろの木が倒れたそうだ。
それでテオはユリアを庇おうとして、木からは守れたけど、近くの灯籠が倒れて、彼の左腕が下敷きに。
「……それは知りませんでした」
「蜂ですと言いそびれたので、照れて木刀を使ったと誤解されています……」
テオに嫌われる、婚約破棄されるとユリアはしかめっ面になった。
「男性は星の数程いるから、そのくらいでユリアさんなんて嫌だと言うなら次に行くとええで……」
キッと睨まれたジオはユリアから顔を背けて、仲立ちくらいしますと一言。
「助けようとしたのですから、誠心誠意謝れば許してくれるでしょう」
そう言いながら、ジオは気まずそうな表情なのでテオという人物はユリアを許さないのかもしれない。
自然と私はユリアから逃げ気味のジオ、ユリアは彼女を慰めるアズサと歩くように。
突然、食い逃げを誰か捕まえてくれ! という声がして、気がついたらユリアが木刀をスパーンッと犯人らしき男性に食らわせた。
早くて何が起こったのか理解しきれず。
風がさらさらとユリアの一本結びの髪を揺らして目を奪われた。
「食い逃げ犯さん、悔い改めなさい。耐えられない腹減りならまずは物乞いや役所に相談です」
ユリアは懐から細い縄を取り出して、騒ぐ犯人をあっという間に縛り上げた。どんどん人が集まってくる。
「なんだユリアちゃんじゃないか。さすが副隊長の娘。またまたお手柄だな」
「姪です」
「立派になったな、ユリアちゃん。ますますあいつ……じゃなくて副隊長に似てきたな! ついついあいつって言うちまうな。今のは疾風の如し!」
「あいつには威厳が足りねぇんだよ。副隊長なのに相変わらずへこへこ、へらへらして」
「まっ、そこがあいつのええところだ。あっ。俺もあいつって言うちまった」
神社で遭遇した漁師達みたいな服装や雰囲気の男達にユリアとテオが囲まれていく。
「おっ。ジオ坊じゃねぇか。両手に花ってこれはなんだ」
両手に花……私とアズサは無意識にジオの腕にしがみついていたからだろう。
アズサが無意識だったかは不明だけど、彼女は指摘された瞬間、真っ赤になって、怖くてつい、はしたなくてすみませんと縮こまったので、私と同じく意図的ではなさそう。
「タカさん、こんにちは。こちらはナナミさんとアズサさんです」
「そのナナミとアズサはどこの誰だ」
「今度、奉納品を納めて下さる豆腐屋のお嬢さんがこちらのアズサさん。ナナミさんはしばらくオケアヌス神社に泊まるお嬢さんです」
「おお! 噂の大豆姫さんか!!! 富豆腐は俺も大好きだ」
「我が家の豆腐をそのようにありがとうございます」
アズサが丁寧なお辞儀をしたので私も軽く会釈。 ジオと私は彼ら漁師が国に訴えるくらい怒らせたいけど、どうするんだろう。
「アズサさんは分かったけど、オケアヌス神社に泊まるナナミはなんだ。お嬢さんで泊まるって、ナナミさんと呼ぶべき子か?」
「その、彼女は訳ありで、まだ家がないので叔母上が神社に招きました」
「ふーん。それならナナミでええな。ナナミ、俺に身分証明書を見せろ」
アズサにはにこやかだった漁師が私には不躾な感じで雰囲気も怖くなった。
大丈夫ですとジオに耳打ちされたので、身分証明書を提示。
「やっぱり平家か。……おい、身元保証人はジオ坊じゃねぇか」
「ええ、そうです」
「身元保証人が神社でも豊漁姫でもないのはなんでだ」
「なんでと言われても、彼女は訳ありなのでこのようなところで、それも配慮無しの状況では教えられません」
一歩前に出て私に近寄ってきた漁師は、威圧感たっぷりという強面で私を見下ろした。
「ちょっと、タカさん。やめて下さい。彼女が可哀想です」
「お前ら一族はお人好しだから俺らが気にかけてやらないとならねぇ。おい、ナナミ。訳ありの理由はジオ坊に教えてあるんだな?」
「彼女から聞いていますし、叔父上がきちんと捜査していますからやめて下さい。彼女は苦労人です」
ジオは私と漁師の間にずいっと入ってくれて、しっかり反論してくれた。
漁師と遭遇したら、基本的に愛想良くして喋らなくて良いと事前に言われているので、曖昧に笑ってうつむいておく。
「行きましょうナナミさん。ユリア! アズサさんのことをしばし頼みます!」
ジオにこっちですと誘われて、とりあえずついていくことに。
おいこら逃げるなとタカから追いかけられかけたが、そのタカの着物をユリアが掴むように止めて、任せて下さいと一言。
「ナナミさん、行きましょう」
「ええ」
ついていったらそこは海岸で、初めて砂浜に立ったから嬉しくて大興奮だけど、ジオは頭を抱えてしゃがんでしまった。
「ここはひらけていて、観光客も多いので二人きりではありません。ユリアさん達からも見えます。ええですか?」
「良いって何がですか?」
「何って二人きりとも言えるこの状況のことです」
「どう見ても二人きりではないですよ」
「それなら君の常識の範囲ということで許されますね」
やっぱり律儀で真面目なのだなぁと感心しながら、とりあえず彼の前にしゃがんでみた。
「すみません。君の過去をペラペラ喋った結果、好奇の目にさらされるのではないかということに、今更気がつきました。作戦変更です」
「つまり、漁師は怒らせないってことですね」
「ええ。ジオ坊が訳あり女性といたという噂が少しくらいは立つと思うので、誰かが調べる可能性が出ました。そこから少しは怒ってくれないかなぁ」
「気を遣ってくれてありがとう。でも、平気ですよ。もしも生家に帰れても、失踪娘が帰ってきたってヒソヒソされるんですもの。失踪というか死亡娘か」
「……これまでの分、沢山笑って幸せになって欲しいから、そんなの嫌です。嫌な事は、なるべく先手を打って減らしましょう」
「ありがとう」
感謝したらなぜか照れられた。この顔はどう見ても照れ顔だと思う。
なんだか嬉しくて、それでいてくすぐったくて、彼を見ていられないから立ち上がり、草履も足袋も脱いで砂浜に立ってみた。
「うわぁ! これが砂浜の感触なのね」
走ってみたくて、邪魔な裾を少しだけ持ち上げて小走り。
私はこんなに自由になったのだと嬉しくてはしゃいだけど、死んだ戦友やまだ朧屋にいる妹達のことが脳裏によぎってモヤモヤ。
これまでは自分に余裕が無かったからあまり深く考えていなかったけど、余裕が出来た今、あの街のことに胸を痛められた自分にホッとした。
私はそんなに悪い人間ではないようだ。だからこうして新しい世界にいるのだろう。
『腹が減ったのか?』
誰かに声をかけられたと思ったけど、ジオの声では無かったし、彼は私に手を振って、海に入っても良いけど危ないから見張るので少し待って下さいと叫んでいる。
お昼時だからお腹は少し減ったけど……と心の中で呟いた瞬間、空からドサドサと貝が降ってきた。
「貝って雨みたいに降るんですね。潮干狩りって砂浜を掘るんでしょう? 砂にいる貝と雨降り貝があるんですか?」
私の近くに来たジオは、驚いたという表情で、雨降り貝なんてありませんと首を横に振った。
「……多分、君の苦労人生を哀れんだ海の大副神様からでしょう。そうでないと、いきなり海から貝が飛んでくることはありません」
「へぇ。海ってそんなことが起こるんですか。知らなかったです。だからこんなに人が集まるのね。皆、労って欲しいもの」
いやぁ、うーんとジオは歯切れが悪い。
まぁ良いかと海に入ることにして、波に向かって進んだら、寄せてきた波は楽しかったけど、引いていく波は怖くて震えて、思わず助けてと叫んでいた。
「あはは、さらわれないから大丈夫ですよ。落ち着いて」
「やだ。海の藻屑になったらどうするのよ!」
意識してお嬢様言動をするのは難しい。
戻るのも怖くなってジオに向かって両手を伸ばしたら、手拭いを巻かれてから手を取られた。
これは素肌に触れないという意味だろう。
「大丈夫だからゆっくり戻りましょう」
「ゆっくり、お願いします」
少し震える足が泥みたいな海中の砂でもつれて彼に激突。
そうしたらジオもよろめいたので、一緒に共倒れかと思ったけど腕を軽く掴んで支えてくれた。
ジオの手拭いが風に飛ばされて、海の遠いところに落ちてしまった。
心臓がいきなり大鼓動を始めたので、海に対して震えていた足だけではなくて、体全体が羞恥で震え始めたのが自分でも分かる。
なのにごくごく自然に、そうしたいから胸に寄り添うようにして、ジオの着物を軽く掴んだ。
「……上手く歩けなくなってごめんなさい」
「いえ。離したら倒れるかもしれないのでこうしていますが、男性が怖いですか? こんなに震えて……」
「ううん。波にさらわれそうで怖いだけです。私は必死に触られないようにしていたし、お店も高値で売るために手つきがないように……でしたので」
「……それは不幸中の幸いです」
自分で選んでいない相手が最初なんて心底嫌だったから、水揚げ前に誰かを誘ってしまおうと考えてきた。
清潔感があって、見た目が悪くなくて、年が近くて、乱暴しなそうなら相手なら誰でも良かったけど、朧屋に来る客やその連れに、誘いたい程の人は現れたことはない。
あの夜までは。
こっそり送った手紙は無視されたし、会いに来てくれることもなかったけれど。
「手紙……」
「手紙? 手紙がどうしました?」
「……ううん。落ち着いたら本当にお見合いする約束って、練習でないと嫌なんですか?」
「ん? 練習でないと嫌ってなんですか?」
なんでこんな恥ずかしいことを口にしたと自分に驚きながら、チラッとジオを盗み見して、戸惑い顔だったのでまたうつむく。
照れたり緊張してくれているかと思ったのに。
「……。練習じゃなくても別に……」
「練習じゃなくても? なんでですか?」
私を踏み台にして他の女性とニヤニヤ、デレデレお出掛けされたくないからよ! とは言えず。
というか、そのくらい理解出来るはずだからはぐらかしやすっとぼけだ。
「別に。砂浜に戻りましょう。向こうまで歩くのを助けて下さい」
「もちろん、喜んで助けます」
さぁ、と両手を引かれてゆっくり砂浜へ戻ったら、奇妙な生き物が歩いていたので気になって、ヤドカリだと教わったのでしばらく観察。
絵でしか見たことのないカニとも出会えて楽しい。
ジオの叔母ウィオラの権力行使は漁師達の動き次第なのでまた彼女に相談する、別の作戦も考えるということで、漁師に放火作戦は一旦棚上げ。
軽く打ち合わせを出来たのでと、足を拭いて、砂を払いきれないので足袋は履かず、ユリア達のところへ戻った。
漁師達に会いにはやめたので、船見学はまた今度にする為に、私の具合いが少しと言うはずが、アズサが体調があまりというので一度神社へ戻ることに。
「頭痛持ちではないのに、頭が痛くて。すみません」
「謝ることではありません」
ジオと買い出しは漁師達のところへ行く口実だったし、アズサを一人残すのは忍びないので、私に用意された部屋で休んでもらい、私は残り、ジオとユリアに買い物を依頼。
質屋で手に入れたお金で、最低限の衣服があれば良くて、それはユリアがいれば購入可能だ。
「ナナミさん、質に入れたものはなんですか?」
「櫛です。アサヒ姉さんが客からもらったて、嫌いな意匠だからあげるってくれました」
「今はもう大事なものでしょうから、お金を返して取り戻しましょう。今日の買い物分は自分が出します」
「えっ? なんでですか? ああ。生まれた家に帰れたら、私の親から貰えるからですね」
「まさか。そんなことはしません。では、行きましょう、ユリアさん」
ジオはそう告げるとユリアを連れて去った。
アズサの頭痛のことは、彼らがウィオラやアズサの母親に伝えてくれる。
「すみません、ナナミさん」
「すみませんって何がですか?」
「お出掛け……したかったですよね」
「そんなのこれから何度だって出来るから何も問題ありません。それよりも友達の頭痛の方が大事」
友達と口にして緊張。花街内で友人と心の中で呼んでいた子は死んで、アズサもそうなったらどうしよう。
頭痛で人は死ぬことがある。倒れて呂律が回らなくなっていないから大丈夫なはずだけど。
「……ありがとうございます。嬉しいです」
「ほらほら、休みましょう」
横になって目を閉じてもらい、邪魔にならないように、でも困った時はすぐに何かしてあげられるように近くでぼんやり。
どうか神様、この優しい彼女を頭痛の病から助けて下さい。そう祈りながら。
☆ ★
さて、ジオとナナミはこうして作戦変更だと決めたが、海辺街において、ジオ・ルーベルは本人の認識よりも有名人。
神職の家族で神事の場によくいて、背が高くて、顔も良く、その人柄ゆえにちょこちょこ人を助けて覚えられるからだ。
あの高嶺の花の見ているだけで幸せになれる私達庶民の皇子様ジオがとびきり美人とデートしていた。
ジオ坊が影のある美女の身元保証人になった。
神職ウィオラやお世話になっているネビー、その家族に対して過保護な漁師達は、彼らに直接ではなくて、日頃の不満に対する嫌がらせも兼ねて、漁師達を管理する農林水省に、謎の美少女ナナミについての調査を依頼。
それとは別に、自分達独自の情報網でナナミについて調べた。
結果、農林水省の報告と、自分達の調査結果が異なり腹を立てた。
おまけに、漁師達はナナミの周りで起こっている不思議な事を理由に、彼女も豊漁姫の可能性があると考え始めていたので、アズサの事も含めて、お前ら役人はまた豊漁姫を探せなかったと怒りを倍増。
この怒りを聞きつけた朝露花魁ことアサヒは、そこにさらに放火。
正確には、一緒に放火犯になりません? と漁師達の組合に直談判。
そんな風に、ジオは自分なりに放火しようとして失敗したと認識するのだが、その度に偶然の火種が出来て、ちょっと調べてみるかと考えた者達は腹を立て、顔の広いアサヒが情報を仕入れて人を使っていっちょ噛み。
最終的にはたまたま帰国していた猛虎将軍ドルガの耳に入り、彼が「俺は未成年搾取は大嫌いだ。龍神王様も許さない」と激怒したので慌てた皇帝が大捜査と大監査命令を出した。
なお、気性が荒くて皇帝の目の上のたんこぶ、正義感の強いドルガを利用しようと考えたのは、アサヒと繋がりのある皇子妃、かつて花街で大輪を咲かせた女性である。
彼の耳に入らないようにという指示を無視して、うっかりを装って雑談。
日頃の激務の反動で女好きの皇帝は、それから三年間はどの花街にも行かず、後宮だけで過ごすことに。
そう、大捜査と大監査はドルガが納得する結果が出るまで三年継続したのである。
その三年間で、多くの罪人が裁判後にドルガ本人の手で処分を受けた。
ジオは自分が上手く放火犯になれたと知らないまま、この三年間でナナミと仲を深めて祝言するのだが、それはまた別の物語。




