4.四人で下校!
新学期になり工藤さんと香坂さんと会話をするようになってから、クラスの男子からは嫉妬の視線を送られるようになり、女子達からは敬遠されるようになった。
蓮が他のクラスで聞いてきた情報では、俺が彼女達の弱味を掴んで、彼女達を従わせているという噂が校内に広がっているという。
……今まで存在感のなかったモブが、美少女ギャル二人といきなり急接近したのだから、裏に何かあると妄想されるのは当然だよな……俺も第三者であったなら同じように考えていたと思うし……
人は自分が信じたものを真実と思うから、噂を信じる者に事実を伝えてもムダなんだよな……別に俺も彼女達も後ろ暗いことはしていないのだから、堂々としていればいいよな。
だんだんと他の生徒達の視線を気にするのもバカらしくなってきた……
放課後のHRが終了し、下校時間になった。
俺は席から立ち上がり、工藤さんの席までスタスタと歩いていく。
すると席に集まっていた工藤さんと香坂さんが首を傾げる。
「どうしたの涼介?」
「いや、一緒に帰ろうと思ってさ」
「へえー、今まで私達が誘っても、逃げてたのに珍しいじゃん」
「どうやっても噂が広まるなら、何を言われてもういいかなって」
「でしょ。噂なんて気にしてられないわよ」
俺の意見に二人は深く頷く。
そして俺達三人は一緒に教室を出て廊下を歩いていると、蓮が必死な形相で追いかけてきた。
「皆で帰るなら、俺にも声をかけてくれよ」
「別に蓮と一緒に帰る必要ないじゃん」
「ちょっとは俺にも優しくしてくれてもいいだろ」
ちょっと身を低くして、蓮が懇願するような表情をする。
すると香坂さんが悪戯っ子のようにニヤリと微笑んだ。
「どうしようかな。それは蓮の行動次第だよね」
「俺、アヤネに気に入られるように頑張るからさ」
「蓮が気安く、私の名前を呼ぶな―」
香坂さんは持っていた鞄で、軽く蓮のお尻を叩く。
叩かれた蓮は、ちょっと嬉しそうだ。
新学期が始まって一週間すぎたわけだけど、その間に工藤さんも香坂さんも蓮と打ち解けたようだ。
俺も少しずつは彼女達に慣れてきたけど、まだ二人のことを名前で呼べなかったりする。
……だって今まで女子とまともに話したことのないモブが、いきなり容姿もスタイルも抜群な美少女二人と急接近しているわけだから、心の準備が必要というか……
改めて自分のことを考えてみると、ホントに俺ってヘタレだな。
蓮と香坂さんを見て、ちょっと羨ましくなって髪をかいていると、工藤さんが首を傾げる。
「どうしたの?」
「いや……蓮って人に慣れるのが早いなって」
「そう思うなら、涼介ももっと私達に慣れればいいじゃん」
工藤さんは屈託なく微笑むと、俺の腕に自分の腕を絡めてきた。
そんなことをすれば、俺の腕に彼女の豊満な胸がグニュッと当たるわけで……
その感触に慌てて腕を引き抜こうとすると、工藤さんが体をもって寄せてそれを妨害する。
「別に私は恥ずかしがってないんだから、涼介が照れてどうすんのよ」
「だって、工藤さんの胸が当たってるんだって」
「わざと当ててるに決まってるでしょ」
「なんでそんなことするんだよ」
「涼介の反応が面白いからに決まってるじゃん」
必死で工藤さんから体を離そうとするけど、彼女は面白がって体を寄せてくる。
二人で体を密着させながら階段を下りて下駄箱へ向かう。
廊下ですれ違った男女は、立ち止まってりして俺達二人をジーっと見ている。
……これで、また新しい噂が広がるんだろうな……もう、どうにでもなれだけど……
一階に到着してやっと体を開放してもらい、下駄箱で靴を履き替えて四人で校門を潜る。
すると香坂さんが両手を大きく広げて、グンと背伸びをする。
「やっと開放されたって感じよねー。学校って窮屈な感じが雰囲気がして超イヤー」
「二人は目立つからね」
「私達、別に目立つことやってないし。学校にも遅刻しないて行ってるし、授業も真面目に出てるしさ。ちょっと他の女子達よりも、オシャレしてるだけじゃん」
「私達だって、家に帰れば家事もやってるし、テストが近づいたらキチンと勉強だってやってるし。毎日毎日、遊んでるように思われるのって気分悪いのよね」
……校内でもギャルで有名な二人だから、これまでは噂を信じてたけど、この一週間で意外と普通の女子高生をしてるのはわかる……でも家事までこなしているとは思わなかったな……
そういえば二人とも、昼休憩になると姿が見えなくなるけど、自作の弁当を持参してるのかな……
しばらく歩いて、信号待ちをして横断歩道を渡り終えると、香坂さんが立ち止まって、左に進む道路を指差す。
「私はちょっとショッピングして帰りたいから。蓮、荷物持ちをしてよ」
「どこまでもご一緒しますとも」
「その言い方、超キモイんだけど」
香坂さんは工藤さんに向けてウィンクをして、鞄で蓮のお尻を叩きながら去っていってしまった。
女子と二人で下校したことのない俺は、上手く会話をリードすることもできず、工藤さんと二人でしばらく黙って歩いていると、彼女が手を握ってきた。
「この後暇なら、私の家に寄っていかない? すぐそこのマンションだから」
いきなり女子の家に誘われるなんて……これは、ちょっと期待してもいいのかな?




