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3.彼女達の噂!

クラス替えが終わり、高校二年生になって俺の学生生活に異変が起こった。


授業が終わって、休憩時間になる度に、工藤さんと香坂さんが俺の席に集まってくるようになったのだ。



その二人に釣られて、当然のごとく蓮も一緒にいるわけで……



「もう友達になってから三日も経つじゃん。いい加減にヒマリって名前で呼んでくれてもいいでしょ」


「そうそう、照れる必要ないんだって。アヤネッて呼んでみて」


「わかった。ヒマリ、アヤネ、あのさ――」


「一号には話してないの。一号はさっさと自販機に行って、ジュースを買ってきて」



工藤さんと香坂さんの名前を気安く呼んだ蓮は、二人から鋭く睨まれて、慌てて両手で口を塞ぐ。


彼女達に気安く下僕になるなんて言うから『一号』って渾名まで付けられたのに、懲りない男である。



「いきなり友達になろうって言われても、やっぱり無理があるだろ。名前で呼び合うなんて、よほど親密にならないとさ」


「それって私達と親密な仲になりたいってこと?」


「それこそ私達も心の準備があるから、きちんと段階を踏んでもらわないとっていうか……涼介って急ぎすぎというか、大胆なんだからー」


「いやいや、そういう意味じゃないから」



……段階を踏むって……どんなことをするんだよ……そんな事を考えだしたら、妄想が止まらなくなるじゃないか……



すると蓮が二人を見て首を傾げる。



「工藤さんと香坂さんも色々と噂あるでしょ。あの噂ってホントなの?」



……そういえば俺も聞いたことがある……



工藤さんは大人な男性とお付き合いしていて、タワマンを買ってもらったとか……香坂さんは大学生の貢くんが三人もいるとか……その他にも、二人とも真夜中に遊び回っていて、数人の男性と付き合っているとか……



彼女達は群を抜いた美少女で、芸能界やモデル業界からいつでもスカウトが来てもおかしくないレベルだから、どんな噂があってもおかしくないと思っていたし、どうせ俺みたいなモブには、二人は高値の花だから、話すこともないだろうと忘れていたけどさ……



すると工藤さんと香坂さんは険しい表情になって蓮を睨みつける。



「私達はそんな安い女子じゃないわよ。きちんと遊ぶ相手は選んでるし、変な男子についって行ったりしないよ」


「こう見えても身持ちは固いんだからね。今まで男子と付き合ったこともないんだから」


「変だな。それなら、なぜあんな噂が立ってるんだ?」


「そんなの私達が聞きたいわよ。変な噂で迷惑してるのは私達だし」



……そうなると考えられるのは、工藤さんと香坂さんの人気に嫉妬した女子達が勝手に噂を流したってことか……


学生の間での噂は怖いからな……事実とは違うことでも、本人達が否定していても、それが事実として、お構いなく広がっていくもんな。


ということは、俺が彼女達と仲よくなったことはクラスの全員が知ってるわけで、俺のことで妙な噂が立つのも時間の問題かもな……



そんなことを考えていると、工藤さんが少し寂しそうな表情をする。



「やっぱり私達のように目立つギャルと友達になるのは迷惑かな?」


「そんなことは全くないよ。女子と話したことがあまりないから、戸惑ってただけだから」


「そうだよな。二人のような美人で可愛い女子と友達になれるのに、断るバカはいないよな」


「一号と友達になるって言ってないじゃん」


「呼び方は一号でも何でもいいからさ。俺にできることなら何だってやるから、友達になってよ」



蓮は二人を見て笑うと、顔の前で両手を合掌して頭を下げる。



……今までの高校生活の中で、俺にも蓮にも春は来なかった……だから女友達が欲しい気持ちも十分に理解できる……でも、そこまで下手に出られる蓮はある意味で、すごい男ではないだろうか……



「そこまで言われたら断れないじゃん。一号って呼ぶのはやめてあげる。ただし恋愛対象としては見ないからね」


「それでいいよ。ありがたやー」


「拝むのはやめてよ。超、カッコ悪いし、周りから変な目で見られるでしょ」



どうやら工藤さんも香坂さんも、蓮を友達として認めてくれるようだ。


俺達四人がワイワイと話していると、一人の男子が「ヒマリ、アヤネ」と彼女達に声をかけてきた。


その方向へ顔を向けると、クラスカーストの頂点にいる葉山雅人はやままさとが立っていた。


今回、初めて同じクラスになったんだけど、彼の噂は聞いたことがある。


サッカー部のエースでイケメンな彼は、学校中の女子からの人気も高く、数々の女子と付き合っては別れていると噂されている男子だ。



……たしか今は一学年上の三年生に彼女がいるって噂もあったよな……



葉山は後ろの男子の集団を親指で指差しながら、ニヤリと微笑む。



「同じクラスになったんだから、俺達とも仲よくしてくれよ」


「葉山っちか。それに後ろの男子達もごめんだけど、興味ないわー」


「だね。スポーツってよくわかんないし、それが上手いとスゴイことなのかイマイチ興味ないのよね」



工藤さんも香坂さんもニッコリを笑って言い放つ。


その言葉を聞いて、葉山は表情を引きつらせると、今度は僕のほうを睨んで、すごすごと男子達のところへ戻っていった。


それを見ていた周囲の女子達も、なぜか俺に鋭い視線を送ってくる。



……もっと手加減して応えてくれればいいのに……そんな塩対応をするとは思わなかったよ……これで俺も完全に、クラスの中で浮いた存在になったよね……

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