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6・新人さんいらっしゃい



 かなり特殊な手段で食料を確保した雅隆達。


 では飲み水はどうするかと言うと…。


 雅隆はアイテムボックスからヒールポーションを2つ取り出した。透明のボトルに入った水色の液体が揺れて波打つ。

 雅隆はその一つをエヴァに渡すと、もう片方をグビグビと飲み干した。


「ぷはぁ」


 すると、雅隆の体がほんのり軽くなった様な気がする。


 ヒールポーションはケガを治すアイテムだが、ケガが無いと使えない訳ではない。単に効果が空振りすると言うだけだ。そして今の雅隆達にとって一番重要なのは、喉の渇きを癒やしてくれるかどうかと言う事である。

 これでちゃんとした水分補給になってるかは不明だが、一応これも飲料系だ。つまり、水が無ければジュースを飲めばいいじゃん理論である。と言うか、他にこれ以外の選択肢がないのだからどうしようもない。

 ちなみにヒールポーションは一本100Pで、先程のハンバーガーは一個80Pだ。結構バカにならないお値段である。仕方ないとは言え、早く村や街などの人里を発見しないと色んな意味で詰みそうだ。


 雅隆達は移動を開始した。


 一応、周辺モンスターの一種を狩り終えたので、後は暗くなる前に安全そうなキャンプ場所を探したいのである。

 すると、歩きながらすぐにエヴァが雅隆に話し掛けて来た。


「ねえ、ところでダンジョンは設置しないの?」


 あー、そう言えばすっかり忘れてたが、このスマホゲームの主題はダンジョンの運営だ。ダンジョンを設置する事を前提にあらゆるシステムが存在するのだ。

 ただ雅隆はこのリアル世界に放り出され、重大な欠点に気が付いていた。


 それは―


「問題は食料なんだよ。

 ダンジョンを設置したはいいけど食料をどうするか。ゲームじゃそんな事全く気にする必要はなかったけど、現実ではそうもいかないだろ?」


 いくら最強キャラを揃えて無敵戦略に則ったダンジョンを建てたとしても、水や食料が無ければ数日も保たない。

 実際に雅隆やエヴァは早くも食料問題に直面している。リアルで生活する以上は、まず食料の補給体制を整えてからでしかダンジョンは設置出来ない。

 そしてなるべくなら自給自足したいのだが、ゲームではそんな食料を安定供給出来るユニットやシステムは存在しなかった。


 ま、それも当然である。

 だってゲームにそんな面倒くさいリアリティーを付け足したらクソゲーにしかならないからだ。

 いや、ゲームによってはそんなリアリズムもありかも知れないが、カジュアルプレイが信条なスマホゲームにそこまでのリアリティーは要らないよな。雅隆もそこは納得せざるを得ない。


 とは言え、いざ現実にダンジョンで生活するとなったら水や食料は必須だ。

 それにゲームでは他プレイヤーとの競合があったが、ここには雅隆の他にプレイヤーは居るのだろうか?。もし他プレイヤーがゲーム時代と同様にゴロゴロ居るのなら、なるべく早くダンジョンを稼働させるべきなのだが、悩ましい話になってくる。

 ただもしかすると敵対するプレイヤーが全く居ない可能性もまたある。故に、まだ慌ててダンジョンの設置をする段階ではないと雅隆は考えていた。ダンジョン設置のタイムリミットとかも無さそうだし。


 当たり前だがダンジョンは一度設置したら移動出来ない。一応このリアル異世界でならやり直し自体は不可能ではなさそうだ。しかしその際は備え付けの設備等は放棄しなければならないだろう。

 実際にゲーム内でも基本的にダンジョンのやり直しは無駄の多い仕様になっていた。そしてこのリアルにおいてもダンジョン設置のやり直しだけはなるべくやりたくない、そう雅隆は考えていたのだ。


「そう?。まあ細かい判断はダンジョンマスターに任せるわ」


 エヴァとしては雅隆がちゃんと考えているかどうかが知りたかっただけで、方法論については興味がなかった。

 ただ明らかな判断ミスや勘違いなんかは絶対に避けたい。その為にも常にコミュニケーションを取って連携を密にする事こそ重要だと考えていた。

 なお雅隆は、そんなエヴァを真面目な子やなぁなんて思ってたが、実際は自分の生き死にに関わる話だから真剣で当たり前なだけだ。(←エヴァさん、こいつ全然分かってませんよ)


 と言う訳で、歩きながら二人は新しいダンジョンガールを召喚する事に決めた。


 エヴァにも確認して貰ったが、この辺りには広範囲に渡って荒れた大地しか見当たらない。だから無鉄砲にこの荒野を抜けようとするよりは、なるべく余裕を持って荒野を彷徨える体制を整えたい。

 となると、やはりメンバーの増員は避けられないだろう。


「ところでさ、魔法で水を出すとか出来るかな?」と雅隆


「どうだろ…、私は持ってる魔法を使うだけしか出来ないから詳しくは分からないけど、いわゆる普通の魔法使いなら可能かも?。でも結局は喚んでみないと分からないなぁ…」


 エヴァが腕組みしながら顔を顰めて唸るが、それですら美少女だから様になる。

 とは言え、エヴァと言う武力要員は確保出来ているのだ。なので後はポイントに拠らない水と食料だけだ。これさえあれば、かなりの長期的な活動の自由が見込めるだろう。

 で、一応増員メンバーに対する希望としては、出来れば少しでもこの世界の知識を持っているユニットが欲しいと考えていた。そして、それでいてなるべく低コストで喚べる低レアリティのキャラを、である。


 エヴァと二人でスマホ画面を覗きながら喧々諤々と議論を重ねた結果、そんな欲張りな要望に応えてくれかも知れないのが星3のレア「イステアラの森エルフ(500DP)」だった。

 他にも色々と候補はあったが、とりあえずはある程度魔法に精通していて(主に水出し要員として)、そして名前を持たない一般的な種族キャラである事が重要視された。


 そう、特にネームドではなく無名のキャラと言う所がミソである。


 固有名のあるキャラは、少なからず何らかの個性的な設定を持っていたりする。

 それに対し、無名のキャラは大したキャラ設定もない平凡な個体と言う意味合いが大きいのだが、雅隆からするとそれが逆に安定した能力を推測しやすいと言う訳なのだ。

 それにエルフなら自然を利用する様な魔法を使いそうだし、イラストからもいかにも自然と調和してます感が醸し出されていた。エルフと言う上位種族で、しかも魔法が使えるからちょっとレアリティは高めだが、無名なので星3にしては安い方だ。


「よしっ、最低でも水を出してくれます様に!」


 話がまとまった所で、雅隆たちは適当な空き地を見つけて足を止めた。そして雅隆は、あからさま過ぎるお祈りの言葉を捧げつつエルフを召喚したのだった。

 ちなみにこのゲームでは男キャラなんぞ一匹も出て来ません、そう言う仕様だからです。

 さらにもう一つちなみに言うと、ネタアイテムのハンバーガーのせいで燃えた髪の毛もとっくに元に戻っていた。


 で、サクッと喚んで現れた「イステアラの森エルフ」は、金髪で色白の優しそうな美女だった。もちろん耳はエルフ耳で尖っている。

 この世界への顕現は完了したが、まだ目は閉じたままの森エルフ。少し待つと、すぐに目を開けて雅隆を見た。


 すると彼女はすぐさま雅隆の前に膝を付き、頭を垂れたのだった。


「ああ、わが君。私の様ないやしき者をお喚び頂き恐縮です!」


 そして顔を上げ、薄っすら頰を紅潮させて雅隆の手を取った。


「私の名はエレイヤ、貴方様の忠実なる下僕にございます。是非、貴方様のお名前をお聞かせ下さい。そして何なりと、いえ、どんな事でもお申し付け下さい。我が身に代えて貴方様のご命令、成し遂げてみせます!」


「「重っ……」」







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