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4・異世界初遭遇のモンスター



 さて…。


 いざ百魔荒野の探索となった訳だが、実はあまりあちこち動き回る予定はない。と言うのも、そろそろ日が暮れそうだからだ(笑)。


 でも多少の情報収集、これは必須だ。

 全くなんの情報も無いまま夜を迎え、暗闇の中で悶々と妄想を逞しくするのと、ほんの少しでも情報を得て事前にシミュレーション出来るのとではかなりの違いがある。


「だから、とりあえずある程度探索したらすぐに切り上げよう。今日はそれで終わりだ」


 雅隆はそうエヴァンリーサに対してリーダーシップありげな宣言をしてみせたら。


「あ、私かなりの闇でも見通せる暗視持ってるから大丈夫だよ?」


 と言われた。


―やだ、この子スゴい上級者っぽいんですけど…。


「あ~、いや…。でも今日は少しだけにしよう、少しだけ、ね…」


 雅隆はなるべく動揺を抑えて取り繕ってはみたものの上手くいったのだろうか?、よく分かんない…。

 ただ夜の探索は雅隆の方に問題があるからダメなのだ、だって暗いの怖いし。←お前な…


 それにしても、エヴァは見た目によらずかなり頼りになりそうだった。

 こんな美少女が護衛と言うとどうしても心許ないが、たぶん雅隆が思う以上に大丈夫なのだろう。正直もう一人護衛を増やそうかと悩んでいたのだが、これなら必要ないかも知れないと雅隆は思い直す。

 と言うのも、実はエヴァの召喚にかなりのポイントを消費したので、早速節約する必要があったからだ。


 当然の事だが、エヴァだけでなくあらゆるユニットの召喚には召喚ポイントが必要である。

 一応言うと、SR流々崎エヴァンリーサの必要ポイントは約3000ポイント。そして今回この特殊ステージで配布された召喚ポイントは1万5000Pだ。

 つまり、エヴァンリーサの召喚に3000万使ったので、現在は約1万2000P。エヴァ一人で、現在雅隆の使えるポイントの約20%が消費されてしまったと言う訳である。


 まあ流々崎エヴァンリーサのレアリティーは5段階中で上から2番目、星4のSRだ。

 最高位の星5レジェンドは、あくまでも入手確率が低くて希少価値が高いと言うだけで、強さ的には星4とほぼ変わらない。だから星4のエヴァは実質最上級キャラなのだ、召喚ポイントが高いのは仕方ないだろう。


 ちなみに今居るこの異世界もそう設定されているのだが、特殊ステージでは召喚ポイントの補充や課金が可能だ。

 各ステージ毎に与えられる召喚ポイントとは別に、ゲーム内全体で使えるゲーム内通貨に「ダンジョンポイント(DP)」と言うのが存在し、そこへ課金したりして更に特殊ステージの召喚ポイントへと補充する訳である。


 ゲームでは大半の通常ステージはむしろサクッと終わるミニマップなので、与えられた召喚ポイントを増やす方法もなく、また増やす必要性もない。

 しかしそれじゃあ重課金者や廃プレイヤーが満足しないので、がっつりプレイする用の特殊ステージが存在すると言う訳だ。

 そしてこの異世界がそんな特殊ステージとして設定されていると言う事は、つまりこのステージがかなり―もしくはとてつもなく広大で、しかも長期間―続くくらいにステージ設定されている可能性があると言う事でもある。

 まあこれも実際やってみなければ分からないし、やってみればいずれ分かる事だろう。


 で、超高コストキャラのエヴァさんについての話に戻ろう。

 いくら必要性があるとは言え、なんで利用可能な召喚ポイントの20%も使ってお高いキャラをいきなり召喚するのよ?と思われるかも知れないが、実は雅隆も少し後悔していなくもない。(これはエヴァには内緒だ)


 とは言え、エヴァ召喚時は素早い対応が求められていた事に加え、召喚って本当に出来るのか?と言う疑念さえ存在した。だからもし本当に召喚出来てしまった場合、癖が強すぎて使いづらいキャラだった時のリスクを考えるのは当然である。

 確率は低くても、もしかしたら環境にどハマリするかもしれないキャラをワンチャン狙いとか、ゲームならともかくリアルな世界でそんな破滅的な賭けに出るのは大バカだ。

 それに比べSR流々崎エヴァンリーサは、上級者にも採用されるハイスペックでありながら初心者にも扱い易い鉄板キャラである。もし選択に悩んだ時はこいつにしておけばまあ間違いない、そう言われるほど安定感のあるキャラなのだ。

 さらにイラストだって有名絵師の傑作と言われるくらいに超人気だったし、雅隆が限られた時間の中で彼女を選んでしまったのも無理はない。


 てな訳で、召喚してしまったものは仕方ないが、ここからは節約を心掛けるべきだった。

 DPには限りがあり、適当にホイホイ使ってたらすぐに底を尽きてしまう。状況に応じて必要なものを必要なだけ召喚する。まさにやり繰り上手な主婦のごとき手腕が求められるのだ。

 しかも召喚出来るのはキャラだけではなく、実はアイテムも同じく召喚対象である。これはゲームでもそうだったし、この世界でもそれは変わっていない様だ。

 なのでぶっちゃけエヴァの召喚はかなり痛い消費だったものの、これは初期にありがちな授業料として諦めるしかないだろう。


 そんな事をつらつらと考えながら、雅隆は「百魔荒野」とやらを歩いた。

 傍らにはエヴァが真横に付いて周囲を警戒している。


 そして歩き始めて約数十分。ようやく3匹のモンスターと遭遇した。


 そう、それはまさしくモンスターだった。

 やはりここは異世界で間違いなかった様だ。消費ポイントこそバカ高かったが、とりあえず護衛エヴァを召喚しておいて正解だった。


 で、そのモンスターはと言うと、それは大きな蟲系モンスターだった。

 体長は約1メートル程、黒っぽい体色で平べったいGに似た生物。ただしシルエットこそ似ているがあの安っぽい羽は無く、むしろムカデとかに近いいかつい系の蟲モンスターであった。

 まあ気持ち悪いかどうかで言えば気持ち悪いのだが、あくまでそれはGが持つDNAに刻まれるくらいの嫌悪感ほどではなく、虫本来が抱える宿命的な気持ち悪さなので、そこは分かってあげて欲しいと思う。

 ちなみにこのモンスターは群れで行動するみたいで、異世界初のエンカウントモンスターは3匹同時となった。


 え〜、さて。


 それでは実際に、その初モンスターとの遭遇を最初から順を追って解説しよう。

 それは、突然エヴァの制止から始まった。


「雅隆止まって…」


 急にエヴァが手を伸ばし、雅隆の歩みを止めた。エヴァの真剣な声色に、雅隆は一瞬でガッチガチに固まる。

 そしてしばらく張り詰めた緊張に震える雅隆だったが、ところがいつまで経っても何も起きない。

 この出来事は、それまで結構ゆるい探索中に起きた突然のハプニングだった。だから雅隆にとってこの時点ではモンスターが現れたのか、それとも他の違う何かが起きたのか?、エヴァからは何の説明も無いのでさっぱり訳が分からなかった。

 ただエヴァがいつに無く厳しい表情で周囲の気配を探っているのでなんだかヤバそう、そんな風にしか見えなかったと言う。

 そして雅隆は、この手の緊急事態に全く不慣れであった故に、すぐその緊張に耐えられなくなり集中力を切らせてしまう。


「なあ、いったい……」


 一体何が起こっているのか?。

 大人しくしてればいいのに、つい緊張に耐え切れずそう雅隆が振り向くと、いつの間にか両手に魔法光を浮かべたエヴァが素早く動いた。


 後で聞いた所によると、この雅隆の迂闊な動きがきっかけでモンスターが反応したらしい。(す、すんません…)

 すると突如大気が膨れ上がり、低い爆音が連発した。そして少し遅れて熱波が雅隆の体を包み込んだのだった。

 雅隆にとっては、何がなんだか分からない内に事が始まり、結局何も分からないままに事が終わる。そんな一部始終であったと言う。


「雅隆?」


 気が付くと、いつの間にか雅隆は尻もちを付いていて、見上げるとエヴァが手を伸ばしていた。


「大丈夫?、お尻痛くない?」


 雅隆は茫然と自失したままで、そんな雅隆の尻に付いた砂をパンパンとエヴァが払い落としてくれた。

 もはや完全に面倒見のいいお姉さんである、惚れてまうかも?。


 一方、周辺は今だに仄かな熱気に満ちており、違和感ある物体が三つ煙を上げて転がっていた。

 以上、これが異世界初のモンスター戦であったと言う。






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