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1・異世界転生モノのプロローグな件

今回はあらすじにもある様に中編作品です。

たぶん20話から30話くらいで終わると思います。

もし面白かったら評価よろしくお願いします(−人−)



 くたびれたサラリーマン、米宮政隆よねみやまさたか(30)は、神経質っぽい痩せ型のメガネ男だった。

 そんな政隆は今、激しい全身の痛みで目を覚ました。


「あっ痛だだだだっっっ……!」


 あまりの激痛に思わずその身をよじるが、そのせいで余計にさらなる痛みが襲いかかる。

 しかし目覚めてすぐに訪れたこの激痛に対し、つい反射的に逃れようと動いてしまうのは仕方のない事だった。そしてしばらくその激痛にのたうち回った後、結局は何もせずにただ痛みを受け入れるのが最善策である事を政隆は知った。


「ぶはあっ…、はあっ……。はあ………」


 時の経過さえ忘れ、ようやく痛みが許容範囲内に治まる頃、政隆は思い出した様に息を吐いた。もう全身汗だくである。


 一体俺が何をしたって言うんだ…?


 ここで政隆は、ようやく今居る場所の不自然さに気付いた。と言うか、薄々おかしい事には気付いてはいたが、単に痛みでそれどころじゃなかっただけだ。

 雅隆は汗だくになりながらも、ズレた眼鏡をクイッと直して振り向いた。←中二感…。


 政隆が現在居る場所、それは見た事のない荒れ地であった。

 そして灰褐色をした岩と砂、それが政隆の目に写る全てだった。


「ここ…、どこ?」


 まだ痛みの残る体を酷使して上半身を起こしてはみたものの、意外と巨大な岩石群のせいで視界が遮られ、その向こう側を見通す事が全く出来ないでいた。


 もしかして、異世界にでも転生したのだろうか?。


 政隆は今年でもう30才だが、残念ながらまだ中二病を患っていた。本人は全然気付いてないが、会社の同僚にはいい歳して痛い奴とも思われている。もちろんそんな政隆だから独身だし彼女も居ない、なんだったら彼女いない歴30年まである。

 ま、かなりヤバめに拗らせてる感じの男、そう思って頂いて差し支えないだろう。←ちょ、やめて?。


 で、話を戻すと「異世界転生」?。


 正確な事は分からないが、どちらかと言うと異世界転移なのかな?。

 ただ流石に政隆も、本当に自分が異世界に来たなどとは思ってはいなかった。だってトラックに轢かれて死んだ訳でも、って…。


―いや、あったあった、あったよそれ!。(あったんかい!)

 そうだ俺、トラックとちょいぶつかったんだった!。


 と、ここで政隆は、ふと気を失う直前の記憶を思い出した。

 そう、政隆は仕事の帰り道にトラックと接触してしまったのだ。まあ死ぬ程ではなかったんだけど…。


―いやいや、でもあんなの全然大した事なかったよな。ほんのちょっと掠っただけと言うか、少〜し肩にぶつかってよろけてガードレールに接触しただけだ。

 んで、その後アスファルトの上を数回転がったが、そこはもう受け身の範疇だろう。つまりノーカンって奴だ。


 そう政隆は考えていた。


 しかし実際にその瞬間を目撃したおばさんは、100当番か救急車呼ばなきゃと慌てたと言う。ところがはねたトラックもはねられた男も、両者何事も無かったかの様に立ち去ったので呆然と見送るしかなかったとの事。

 ただその後、なんとかアパートに帰り着いた政隆が倒れる様に眠りに就き、そして今激痛で目を覚ました事から察するに、やはりそれなりのダメージがあってたと考えるのが妥当であろう。


 と言うか、人とトラックの接触だ。本来なら立派な人身事故なのだが、実は政隆にも少なからず非があった。

 と言うのも、その時政隆は睡眠不足でフラフラだったのだ。しかも次の日残業がある事を知っていながら、夜遅くまで睡眠時間を削ってスマホでゲームをしていたのだから。まったくこの男は…。


 しかし、いくら政隆が大丈夫そうだったからとは言え、人をハネたにも関わらずそのまま知らんぷりして立ち去ったトラックもトラックだが、体調管理を怠ったせいでフラフラと車道に飛び出した政隆も問題である。

 おそらくそんな多少の罪悪感もあって、政隆は意味不明な虚勢を張ってしまったのかも知れない。


 ただし、自らの健康管理に関しては政隆にも言い分があった。

 それは、ゲームくらい楽しまなきゃ人生やってられないと言う事だ。


 ただでさえ毎日毎日お仕事一色なのに、家に帰って飯食って風呂入ったりなんかしたら、後はもう寝る時間しかない。もちろん睡眠は大切だが飯は食わなきゃ死ぬし、風呂にも入らないと気持ちが悪い。となると削れる時間は睡眠しか無いのだ。つまり確信犯である。まあ改心する気はおそらく無いでしょう。


 とまあ、それくらい政隆は今ゲームにハマっていた。


 特に一番お気に入りは、美少女キャラを集めてダンジョンの運営を行うスマホゲームだ。

 華麗でちょっとエロいイラストの美少女キャラがいっぱい居て、自由度の高い戦略とそれでいてあまり時間を取らないお手軽バトル、それが楽しくてついプレイしてしまうのである。って、お子様かよ…。


「あっ!!!」


 と、ここで政隆は、スマホと聞いて反射的にブサイクな声を上げてしまう。

 と言うのも、政隆のスマホは例のトラックとの接触時に大破してしまったからだ。


 政隆本人は軽微なケガで済んだものの(ほんとか?)、言い忘れていたがスマホしながら歩いてたので(←オイ、それ聞いてねえぞ!)、一番の直撃を受けたスマホは、ふっ飛んでボロボロになっちゃったのである。

 スマホを失うと言う精神的ショック、それなら自らのケガ具合を見誤ったとしても致し方ない(そうか?)。何しろ現代人にとって携帯端末を失うと言う事は、己の半身を失うにも等しいと言っても過言ではないからだ。(※個人の意見です)


 でも、歩きスマホは絶対ダメだろ…。


 で、トラックとの衝突により、一瞬にして廃品と化してしまったスマホ。

 ただ長年、肌見離さず愛用し続けたスマホを壊れたからポイするのもなんだか悲しいので、とりあえずボロッボロに変わり果てたスマホを持って帰って来たのだが…。

 そう言やポケットに入れたままだった事を思い出し、スマホを取り出そうとした政隆は固まった。


「あ、あれ?」


 取り出したスマホは、何故か直っていた!。

 いや、正確には全くの元通りと言う訳ではなかった。よく見たら…。いや、良く見なくても分かる。なんだか妙なパーツがしれっとデコレーションされているのだ。意味わからん…。


 政隆はスマホの本質は機能だと考えているので、スマホを装飾しデコったりしないタイプだった。だから一瞬これは他人のスマホかと勘違いしたが、しかし愛用し続けたスマホを見間違える筈もない。多少デザインが変わってはいるものの、やはりこれは政隆のスマホで間違いなかった。


 それにしても、いつの間にこんな大掛かりなデザイン変更が行われたと言うのか?。

 特に一番目に付くデコ要素、それは骨の模様だった。とは言え、それは安っぽいペイントとかではない。背面の割れて(ひび)が入ったプラスチックボディーの裂け目。そこに本物っぽい小動物の背骨の様な何かが潜り込み、それで補強されているのである。


「なんだか、カッコいいんですけど?」


 一方、正面の液晶画面に張り付いた骨は、何故か半透明化していた。そして小さいひび割れなんかは透明な画面とほぼ同化しており、大きな傷もいずれ消えて完全に透明化するのだろう、そんな気がした。

 簡単にまとめると「完全にぶっ壊れた筈のスマホが直った、ただし魔改造されてる」だ。


 なにこれ…?。


 あまりにも意味が分からなさすぎて政隆は驚く気にもなれなかった。そして政隆はあらゆる疑問をスルーし、とりあえずスマホの電源を入れてみた。


 うん、いた。


 しかし案の定、中身も政隆の知ってる元のデザインとは少し変わっていた。詳しく触ってはいないので分からないが、あまりいい予感がしないとだけは付け加えておこう。

 ま、これだけ外見が変わったんだから多少中身が変わっててもおかしくはないだろう、なんか知らんけど。

 で、そんな事より政隆の危惧した一番の問題点、それが電波状況だったのだが、やはり電波は不通でオフライン状態だった。やっぱね…。


 政隆はスマホの電源を切り、そっとポケットに戻した。

 幸い政隆はスマホを機能面でしか見ていなかった。だからスマホの見た目と本質は関係ない…、そう思う事に、したのである……。


「あー、もしかしたらマジで異世界転生したかも知れん…」


 政隆は知らず知らずの内に天を仰いでいた。

 もしかすると異世界かも知れないその空は、意外と普通の青空だったと言う。






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