7話
7話
《銀河鉄道の夜は幻想的だったその2》
その夜は二人で一緒に死のうと言った。
本音は分からない。
あれは哲也の思いつきだったかもしれないし、ずっと前から決めていたことだったのかもしれない。
それでもあの日の朝、哲也は私の手を握ってくれた。私は彼の手を、ぎゅっと握り返した。
「いいよ」
と私は答えた。
それしか言える言葉はなかったし、他に言葉を発することが怖かった。
哲也は微笑むと、少し黙ってから口を開いた。
「じゃあさ、とりあえず東京を出ようか?」
私もうなずいて答えた。
それから私たちは旅行の準備をして、その晩のうちに電車に乗って東京を飛び出した。
行き先はどこだって良かった。
哲也が言ったのは、
「できるだけ遠くに」
ということだったが、私は最初からどこへだって行くつもりだったからどうでもよかったのだけれど。
二人で行けるところまで行って、二人で死のうと思っていた。
ただそれだけのことだったのだ。
哲也はたぶん、まだ私が怒っていると思っていたのだろう。
だから私に声をかけずに一人で死のうと思っていたのだと思う。
私はそれを分かっていたけれど、彼と一緒に死のうと思っていた。