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5話
5話
《夏の銀河その3》
哲也は星空を見ながら言った。
「ねえ、一緒に死のうか」
私は一瞬、息が止まった。
「え?」
と訊き返したが、哲也は返事をせずにまた星空を見ていた。
私はじっと考え込んでいたが、やがて哲也の横顔を見て言った。
「いいよ」
哲也は私の方を見ないで小さくうなずいた。それから彼はやっと私の手を握った自分の手に力を込めてくれた。
「ありがとう」
と哲也は言った。
私は彼の横顔を見ながら答えた。
「うん」
そう答えるのが精いっぱいだった。
哲也はやっと私の方に顔を向けると、優しい声で言った。
「死んじゃおっか」
私はその笑顔をまっすぐ見つめたまま、何も言わなかった。
私はあの晩の星空をずっと覚えているだろうと思う。