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狂愛の檻籠  作者: 濃姫
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早熟した果実

 未成熟だったはずの身体も、いつの間にか成熟していた。


 小ぶりだったはずの胸は輪郭をハッキリと表し、特段華のなかった顔立ちは大人っぽく変化していた。

 

 これが「女」として成長の証だというなら、私はまだ子供でいたかった。


 人生最大の変期は、十五の桜が開花するであろう三月中半だった。


 朝起きるとベッドに広がる夥しい血。


 一瞬にして困惑が頭を占めるが召使の人は殊の外嬉しそうに事情を説明した。


 曰く、これは生理の際行われる月経だそうで、赤ちゃんが産める身体になった、と。


 それを聞いて私がどれほど絶望しただろう。


 今の調子では確実に私は孕んでしまう。


 あの男の子供など想像もしたくないし、万が一愛してしまったら待っているのは地獄だ。


 報告はすぐさま男の元へ行き、初めて犯すわけでもない訪問があった。


 男は満面の笑みで私の胎を撫でた。


 それは男が子供を望んでいるということで、私がどんなに抵抗しようと孕まされるのは確実だという証明に他ならなかった。


 生理が終わると、これまで以上に激しい性交が始まった。


 慣れた私の身体でも悲鳴を上げるほど、激しく私の中を暴れまわった。


 苦しかった。


 痛かった。


 辛かった。


 そして二週間と少し経ったある日、体調の異変に気付いた。


 身体が気だるく、立ち眩みが酷かった。


 南海さんに相談すると、少し悲しそうな顔をされた、医者に通された。


 妊娠0週目らしい。


 分かっていたこととはいえ、実際に口に出されたその事実は、私が思うよりずっと重く感じられた。

 

 桜が満開となった四月。


 本来であれば花の高校生活に期待し、胸躍らせていたであろう季節に、私は孕んだ。


 その十か月後、第一子 オリバーを出産した。


 初めての出産は痛みで悶え死にそうなほどだった。


それでも、予想とは裏腹に生まれてきた赤ん坊は、殊の外可愛かった。


 出産の後、ベビーベッドで眠っているオリバーを目にすると、その場で泣き崩れた。


 この子を憎むことなんてできなかった。

 

 いくら彼との子どもであろうと、なんの罪もないこの子を、憎むことなんて…。


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