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狂愛の檻籠  作者: 濃姫
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『平凡』が壊れた日

自身が生まれながらにして当然に持つ権利、誇り、名誉、その全てを奪われたならば、人はどのようになるのだろうか。


 私は、平凡を絵に描いたような人間だ。


 父はクリニックで働く内科医。


 母は週に三回パートを勤務する主婦。


 そんな二人の間に生まれた子供。


 容姿が特段優れているわけでもなく、成績が良いわけでもない。


 そこそこに友達がいて、そこそこに楽しい思い出もある。


 そんな可もなく、不可もない生活が、当たり前だと信じて疑わなかった。中学三年の夏までは…。


 父が多額の借金を残して自殺した。


 母との心中自殺だった。


 部屋から香る木炭の残り香は、今でも生々しく鼻腔に残っている。


 自殺の第一発見者だった私は、警察での事情聴取を終えた先に、世の中の理不尽さを思い知らされた。


 保護者不在となった私を親戚は受けいれることはなった。


 誰だって一千万以上の借金を背負う娘なんて欲しくない。


 学校も休んだ。


 友達とのやり取りもなくなった。


 居場所がなくなった気がした。


 両親の自殺から一週間もすると、借金取りが現れた。

 

 どうやら父はカジノに行き通っていたようでそこで大負けし、借金を背負ったようだった。


 毎日朝から晩まで続く怒号は、酷く私を憔悴させた。


 近所の人からも毛嫌いされるようになった。


 そんな攻防が丸二週間続くと、ある男がドアを破壊し家にズカズカと入り込んだ。


 今まで一度も破られることのなかった境界線が、一気に崩れ落ちる音がした。


 男はマフィアだった。


 二十歳そこらの外人だったが、周りの反応を見る限り一番偉い人だと分かった。


 男は私を見て笑い、御付きの人間に英語でペラペラと話すと私の顎を掴み持ち上げた。


 怖かった。


 奥歯がガチガチと鳴った。


 平凡を冠したような人生を送っていた私にとって、それは今後も永遠に味わうはずのない、恐怖だった。


 相変わらず英語で話すため内容は分からないものの、その後の行動でなんとなく理解できた。


 支払い能力のない未成年である私。


 臓器でもなんでも売り払おうと考えたが突然になって男の食指に気に入られたのだろう。


 そのまま車に連行され何も理解できないまま日本を離れ、本拠地であろうイギリスへと連れ出された。


 訳も分からない状況にただただ困惑し、通じない言語の壁は重く感じられた。


 空港から車に乗り換え目的地と見られる豪勢な屋敷へと通される。

 

 男が私の手を強引に引き一部屋に連れ入れると、ベッドに投げ出された。


 殺されるのだ。


 その恐怖は尋常ではなく震えを通り越し痙攣を起こした。そしてそんな私の服を、男は破った。


 その後のことは恐怖と痛みで覚えていない。


 少しでも抵抗の素振りを見せれば、首を絞められ、処女を無残に散らされ、私の身体をまるで玩具のように扱い気が済んだらそのまま部屋を出た男を思い出すだけで、痙攣が始まる。


 その後気絶した私を召使いとされる人たちが身を丁寧に洗ったらしい。


 起きた時に全身にあったはずの何らかの体液の感触が消えていたから。


 持ってこられた朝食には食欲が伸びず手が付かなかった。


 そしてまた、恐怖の夜がやってきた。


 男は容赦なく私を犯す。


 どれだけ泣いて謝っても、五月蠅いと吐き捨て奥へ奥へと入り込む。


 中学三年の夏。


 最高の夏休みを謳歌するはずだった私は、最悪の夏休みを味わった。


 毎日のように私を犯す男にもはや抵抗心もなくなり、付けられた日本語通訳の人に英語を教えてほしいと頼み込んだところ承諾を貰えた。


 言葉は死活問題だったためか一か月ほどで日常会話はほとんど覚えられた。


 人間の底力の強さを改めて思い知らされた気がした。


 男はその一か月の中で何日か顔を出さない日があった。


 仕事で海外に行くらしく、私はその日だけ息がつけた。


 それでも男は仕事が終わり次第すぐに私の下へ訪れ、朝昼関係なく犯すようになった。

 

 通訳の南海さんはここまであの男の寵愛を長く勝ち取った人は私が初めてだと言った。


 通常は二週間も持たなかったらしい。


 それを聞いて殺されなかったと喜べばいいのか、これがいつまで続くのかと恐怖で怯えなければならないのかという不安が私を満たした。


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