第92話
いつもの4人での話が終わった後、図書室に行こうとしたが、ハナザワさんからスマホにメッセージが来ているのに気付き見てみると、「今日はちょっと話したいことがあるので、第3特別教室に来てくれませんか?」とあったので、第3特別教室に向かった。
ハナザワさんの話というのは予想していた通り文化祭のことについてだった。
「文化祭の出し物、食べ物系をやろうと思っていた人が多かったんです。特に男子が。でも、飲食の提供はダメだって先生に言われたので、食べ物系以外を考えなくちゃいけないんですけど、何をやればいいのか思いつかないんです。トツカ先輩は去年の文化祭何をやりましたか?参考に教えてもらえませんか?」
「俺が1年の時は15分ぐらいのオリジナルの短編映画みたいなのを撮って、それを教室で上映してたかな。目立ちたがりの奴は映画に出演したし、俺みたいに目立ちたくない奴は裏方で参加できたから、それほど悪くなかったよ。」
「そうですか。短編映画ですか。参考になります。ところで正直に疑問に思うことなんですけど、食べ物系をやれないのに部活に所属している人たちって何の出し物をやったりするんですか?軽音楽部や演劇部は分かりますけど、運動部は出店みたいなものをやれなかったらやることなんてない気がするんですけど。」
「うん。俺も去年はそう思っていたけど、野球部はストラックアウトや実際に打席に立ってもらって投げた球を打ってもらったりしてたし、サッカー部はPK体験やリフティングできた回数でお菓子をプレゼントしたりしてたし、バスケ部はフリースロー体験や1on1をやったりしてたし、運動部もそれぞれ特色のある出し物をやる気になったらやれるんだよ。まあ、本当は出店とかをやりたい人も多いだろうけどね。」
「そうなんですね。私は考えが足りなかったみたいですね。なんか運動部の人たちに申し訳ないです。」
そう言って、ハナザワさんはしゅんとしてしまったので、俺は、「俺も去年は同じこと思ってたし、1年生のハナザワさんがそう思うのは仕方ないよ。それに漫画なんかの創作物だと現実よりすごい出し物をやったりするものもあるから、俺なんか高校の文化祭なら、もっとすごいことができるんじゃないかと勘違いしてたしね。それに比べたらハナザワさんの考えなんて普通だよ。」と元気づけた。
ハナザワさんは俺のフォローを聞いて少し元気を取り戻した様子で、「そう……ですかね?トツカ先輩がそう言ってくれるなら、そう思うことにします!ありがとうございました。ところで、トツカ先輩は今年の出し物は何を提案するつもりですか?」と聞いてきた。
「俺は何かの展示会みたいなものを提案しようと思っているけど。自分のクラスの出し物で誰かを楽しませるのもいいけど、他のクラスの出し物を楽しむのも文化祭の楽しみ方の1つかなと思うしさ。」
「なるほど。参考になります。」
ハナザワさんは非積極的な俺の考えを本当に参考にしようとしているみたいで、俺は申し訳ない気持ちになった。
「トツカ先輩のクラスの出し物は絶対見に行きますから!」
「う、うん。俺もハナザワさんのクラスの出し物見に行くから。」
ハナザワさんと文化祭の出し物の話をしているうちに、バレー部の活動が終わる時間になったので、ハナザワさんとは昇降口で別れた。
昇降口でナツキと合流して、一緒に帰宅した。帰宅する間の会話はやっぱり文化祭の話だった。
「ナツキはバレー部の出し物の方を重点的にやるんだろ?」
「うん。そのつもり。でも、バレー部の出し物はそれほど準備がいらないから、クラスの出し物の準備は手伝うよ。セイは文化祭のクラスの出し物、何か提案する?」
「俺は何かの展示会を提案するつもりだけど。」
「えー?面白くなーい!」
「そんなこと言うなら、ナツキは何を提案するつもりなんだ?」
「私はバレー部の出し物をやるから、クラスの出し物には口を出さないつもり。」
「うわっ!ズルッ!」
「ズルくないよ!自分があまり参加しない出し物に口を出す方がおかしいでしょ!」
「それはそうだけど。今のは会話の流れ的にズルい気がする。」
「あははは!まあ、どんな出し物になっても見に行くからね。」
「ああ。俺も見に行くよ。」
そんな話をしてるうちに家に着いたので、別れの挨拶をして、それぞれの家に入った。