第88話
かなり早めに家を出てしまったので、午前10時の15分前に駅前に着いてしまった。
まだハナザワさんは来てないだろうから、俺が昨日送ったメッセージに対してキョウヘイの返信が来てるかどうか確認することにした。スマホを見ると1時間ほど前にキョウヘイからメッセージが来ていた。
「了解。セイのお母さんに何か聞かれたら、今日はセイと遊んでたって言えばいいんだな?」
「セイも大変だな。」
「ところで今日はナツキとハナザワさん、どっちとデートなんだ?」
とメッセージが来ていたので、
「今日はハナザワさんとデートだよ。」
「自分で蒔いた種とも言えなくないから、大変だとは言えないよ。」と返信を送った。
キョウヘイに返信を送ってもまだ約束の時間まで時間があったので、ハナザワさんに俺が今いる場所をメッセージで送っておこうと思った時、「おはようございます!トツカ先輩!」と誰かに挨拶をされた。
スマホから挨拶が聞こえた方に視線を移動させると、ハナザワさんが少し息を切らしながら俺の前に立っていた。
「おはよう。ハナザワさん。」
「お待たせしてすみません!10分前に着けばいいかな?と考えていたもので……。」
「ハナザワさん大丈夫だよ!俺も今着いたばかりだし、まだ10時になってないから遅刻じゃないし。」
「気を遣ってもらいありがとうございます。」
「そんなにかしこまらなくていいよ。それじゃあ、県立図書館に向かうバス乗り場まで行こうか?」
「そうですね。」
俺とハナザワさんは県立図書館に行くバス乗り場まで移動し始めた。
ハナザワさんの私服はナツキと比べたらはるかに女子っぽい格好だが、カジワラと比べると少し落ち着いた感じがする格好だった。あとパッと見た感じで分かることは、ナツキと同じく肩から重そうなバッグをかけていた。
これはもしかしてナツキと同じく、お弁当を作ってきてくれたのかな?そうだとしたら嬉しいのだけれど、県立図書館から借りた本を入れてるとも考えられる。あまり期待しすぎないようにしよう。そうだ!彼女が重そうなものを持っていたら、言わなきゃいけないことがあるな。
「ハナザワさん、バッグ重そうだね?俺が持とうか?」
「大丈夫ですよ!このぐらいの重さなら、いつも持ってるので。」
「いや、でも一緒にいる女子が重そうな荷物を持っているのを何とも思わない男だと周りの人に思われると俺がつらいから、俺を助けると思って持たせてくれない?」
と、俺が嘆願すると、ハナザワさんは申し訳なさそうに、「そうですか?それならお願いします。」と言ってバッグを渡してきた。
頑なにバッグを渡さなかったナツキと違って、ハナザワさんは嘆願すればバッグを渡してくれた。当たり前のことだが、世の中にはいろんなタイプの女子がいるんだなと思った。ハナザワさんに渡されたバッグは見た目ほど重くなかったのは良かったのだが、本の角らしき感触があったので、お弁当ではないのかと少し残念に思った。
俺とハナザワさんはバス乗り場でバスに乗り込み県立図書館まで向かった。