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第86話

 土曜日、午前の授業が終わり、弁当を食べ終えるといつもの4人で漫画の話を1時間ほどした。

キョウヘイが午後3時までには家に帰らなきゃいけないと言ったので、漫画談義は1時間ほどで切り上げた。漫画談義を終えるとキョウヘイは迎えがすでに来てるらしく、急いで教室を出ていった。


俺は昨日と同じくカバンに教科書などをゆっくり詰めてカジワラとハタケが教室を出ていくのを待っていたが、カジワラとハタケはカバンを肩にかけて話をしていて、なかなか教室を出ていかなかった。5分ぐらいかけてカバンに教科書などを詰めていたが、これ以上時間をかけるのは難しくなったので、カジワラたちに、「あれ?帰らないの?」と問いかけて、早く教室を出ていかせようとした。


するとハタケが、「うん。今日はトツカくんと一緒に帰ろうと思って待ってるんだよ。ね?レーちゃん?」と答えた。


「そうそう。だから早く帰る準備してよ。」


ハタケとカジワラの発言を聞いて俺は戸惑ってしまった。

というのも頑なに俺と一緒に帰ろうとしなかったカジワラが一緒に帰ろうとしてくれることに驚いたというのもあるが、カジワラたちが先に帰ることを見越して図書室でハナザワさんと待ち合わせしていたので、一緒に帰りたいが帰るわけにはいかない状況に戸惑ってしまった。


本当はこのままカジワラたちと一緒に帰りたいが、何も言わずにハナザワさんとの約束を反故にすることはできないし、先に約束したのはハナザワさんなので、なんとかカジワラたちを先に帰らせて図書室に行こうと考えた。


「何で今日は一緒に帰ってくれるんだよ?最近はずっと一緒に帰ってくれなかったのに?」


「私は一緒に帰らなくてもいいんだけど、ミーちゃんがどうしてもトツカくんと一緒に帰ろうって言ってくるんだよ。」


「そうなんだ?ハタケは何で俺と一緒に帰ろうって、カジワラに提案してくれたんだ?」


俺は何気なく質問してるつもりだったが、ハタケは何かを疑うような目をしながら、「だって、最近トツカくん、わざと私たちより後に教室を出ようとしてる気がして怪しいんだもん。それにあれだけレーちゃんと一緒に帰りたがっていたのに、今私たちに問い質してまで一緒に帰ろうとしてないことが一番怪しい!」と答えた。


俺は痛い所を突かれて内心ひどく焦ったが、それをできるだけ顔に出さないようにしながら、「別にハタケたちより後に教室を出ようなんてしてないよ!一緒に帰ってくれるなら一緒に帰ってもらいたいよ!」と反論した。


するとハタケはにっこりと(怖い)笑顔で、「そう。それなら一緒に帰ろう!もう帰る準備はできたよね?」と聞いてきた。


俺はもうこれは一緒に帰らなきゃいけないな。と観念したが、ハナザワさんに一言断ってからハタケたちと一緒に帰ろうと思い、「いいけど、図書室から借りた本を返してからでもいいか?」と聞き返した。


「分かった。それなら私たちも一緒に行くよ。」


「いや、教室で待ってていいよ。図書室に行ってから昇降口に行くのはここからだと遠回りだし。」


「ううん。一緒に行く!一緒に行ったら何か困るの?」


ハタケの有無を言わせない圧力を感じて、俺は、「全然!それなら一緒に行こうか?」と答えるしかなかった。


ハタケとカジワラと一緒に図書室に向かう間、どうにかしてハナザワさんにこのことを伝えられないかと考えたが良案は浮かばなかった。


こんなことならトイレに行きたいから待っててくれ!って言えばよかったな。いや、トイレに行ってスマホからメッセージをハナザワさんに送って、ハナザワさんから返信が来てから教室に戻るのは結構時間がかかるかもしれない。そうなると、トイレで大をしていたというあられもない疑惑を持たれるかもしれない。それはそれで嫌だ。くそ!どうすればいいんだ?


俺がいろいろと考えを巡らせているうちに、図書室の前まで来てしまった。

何故だかは分からないが、図書室のドアの前にハナザワさんはいなかった。

図書室の中にいるのかな?と思ったが、図書室の中にもハナザワさんはいなかった。


良かったぁ。助かったぁ。と俺は安堵した。


何事もなく図書室から出て昇降口に向かう間、ハタケはまだ疑念を持った表情をしていたが、校門から出て駅に向かい始めても俺を待ってる人とは出会わなかったので、そこでやっと疑うのをやめたみたいだった。


「トツカくん、ホントにごめん!私、トツカくんが浮気してるんじゃないか?って疑ってた。ホントにごめん!」


ハタケはひどく申し訳なさそうに俺に謝罪してきた。だけどハタケの疑念は間違いじゃないので、俺はひどく心が痛んだ。


「そんなに謝らなくて大丈夫だよ!疑わしい行動をとっていた俺が悪いんだし。でも、俺が浮気してたとして、どうしてハタケがあんなに怒ってたんだ?」


「それは……レーちゃんにはトツカくんの2番目であってほしかったから。」


「私は3番目でも4番目でも気にしないって言ったんだけどね。」


「レーちゃん、そんなのダメだよ!2番目ってだけでもおかしいのに3番目なんて!」


「ハタケ、大丈夫だよ!俺は浮気なんてしないから!」


俺にとっての1番はカジワラだから。と言えればよかったのだが、それを言ってしまうとナツキが形ばかりの彼女だとバレてしまうので口が裂けても言えなかった。愛人を作るようなやつの言葉に説得力なんてないように感じたが、ハタケは、「うん。トツカくんのこと信じるよ!」と言ってくれた。


そうこうしているうちに駅に着いた。カジワラとハタケが改札口を通っていくのを見送ってから、俺は自分の家に向かって歩き出した。家に向かっている間にスマホでハナザワさんに謝罪のメッセージを送ろうとすると、ハナザワさんからメッセージが来ていることに気付いた。見てみると、今日は用事ができてしまったので図書室に行けませんという内容だった。放課後4人で漫画の話をしている時に送られてきてるみたいだったので、もっと早くスマホを見とけば良かったと後悔した。


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