第85話
いつもの4人の漫画談義が終わったあと、俺はカジワラとハタケが教室を出ていって下校するまで、カバンに荷物を入れてるふりをしていた。
というのも、カジワラとハタケにバレずに図書室へ行こうとしていたからだ。なぜなら、この後にハナザワさんと図書室で待ち合わせしていたからだ。そのことをカジワラとハタケに知られたくない。そのためには、カジワラとハタケよりも後に教室を出て図書室に向かうのが一番楽だと考えた。目論見通り、カジワラとハタケが教室を出て下校していった後、俺はさらに1,2分待ってから教室を出て図書室へ向かった。
おそらくカジワラとハタケにバレることなく図書室に来ることができた俺は、昨日と同じく図書室のドアの近くで待っていたハナザワさんと合流して図書室に入った。その後は昨日と同じく図書室が閉まるまで図書室で本を読んでいるだけだった。俺は昨日ハナザワさんに薦められた本を読み切っていなかったので、その本を読んでいたら、図書室が閉まる時間になってしまった。
図書室が閉まった後はハナザワさんと一緒に昇降口まで行き、ハナザワさんが下校するのを見送った。ハナザワさんを見送った後、俺はそのまま昇降口でナツキの部活が終わるまで待っていた。15分ぐらいするとナツキが昇降口まで走ってやって来たので、一緒に帰宅した。
ナツキは昨日と同じくハナザワさんと何をしていたのかを聞いてきたので、正直に図書室で本を読んでいたと答えても、ナツキは納得してくれなかった。なので、「ハナザワさんはナツキと俺が何をしてたかなんて聞いて来なかったぞ!」と忠告すると、渋々納得したのか、それ以上問い詰めて来なかった。家に着くと、お互いに、「また明日。」と挨拶して玄関のドアを開けて中に入った。
次の日の木曜日も、いつもの4人で漫画の話をした後、ハナザワさんと図書室で本を読み、ナツキと一緒に下校した。そして金曜日、いつもの4人で漫画の話をした後、ハナザワさんと図書室で本を読むところまでは前日までと同じだったが、その後が違った。一緒に昇降口に向かってる時に、ハナザワさんが、「あの、トツカ先輩、ちょっといいですか?」と意を決した感じで話しかけてきた。
「どうしたの?」
「あの、次の日曜日、私と県立図書館に行ってくれませんか?」
「え?」
そっか。そうだよな。付き合っているんだから、ナツキと同じくハナザワさんともデートするのが当然だよな。ナツキは嫌がるかもしれないが、そこは平等にしないとな。
「うん。いいよ。」
「本当ですか⁈」
「うん。断る理由がないからね。」
「ありがとうございます!楽しみにしてます!」
図書館に一緒に行くだけですごく喜んでくれるのはちょっと申し訳ない気持ちになった。
昇降口でハナザワさんを見送った後、ナツキが来るのを待って一緒に帰宅した。
一応、ハナザワさんとデートすることを言っておくか。と思い、ナツキに次の日曜日にハナザワさんと県立図書館に行くことを話すと、ナツキは、「ふーん。そう。」と、あまり関心を示さなかった。
そのことを訝しんだ俺は、「え?気にしないの?俺がハナザワさんとデートすること?」と尋ねた。
するとナツキは、「そりゃ気にはしてるけど、私がセイとデートしてるのに、ハナザワさんとデートしないでとは言えないよ。」と答えた。
「そっか。それなら良かった。」
「何?私が『ハナザワさんとデートするな!』とでも言うと思ったの?」
「うん。そう思ってた。」
「そんなに子供じゃないよ。」
ナツキが気にしないみたいなので、不安材料が減って俺は少しホッとしていた。
家に着くといつも通り、「また明日。」と挨拶して家の中に入った。夕飯を食べてお風呂に入って自分の部屋に行きスマホを開くと、ハナザワさんから、「日曜日はよろしくお願いします。」とメッセージが来ていた。「こちらこそよろしく。」と返信してベッドに横になって図書室から借りた本を読み始めた。
本を読みながら、そういえばハナザワさんから初めてメッセージが来たな。と考えてるうちにいつの間にか眠ってしまった。