第84話
次の日の放課後、いつもの4人で漫画の話をした。昨日と一昨日はいろいろあり、4人で漫画の話をしなかったので、俺を除く3人は漫画の話で盛り上がっていた。
俺はと言うと、昨日までいろいろあったため、漫画を読む時間を確保するのが難しかったので、あまり話に混ざれずにいた。でも、久しぶりにカジワラと一緒の時間を過ごすことができて俺はかなり満ち足りていた。
やっぱり、俺はカジワラが好きなんだ!いくらナツキとハナザワさんに俺のことが好きだと言われて心が揺らいでも、カジワラを目の前にするとその心の揺らぎも治まってしまう。というか、今また2人に、好きだ。と言われても俺の心は微動だにしないだろう。
俺が謎の自信に満ち溢れていたら、「ねぇ?トツカくんちょっといい?」とカジワラが話しかけてきた。
「ん?何?」
「一昨日の昼休みにトツカくんを訪ねてきた女子いたよね?あの娘、誰?」
無警戒のところにいきなりバットで頭を殴られたかのような衝撃が俺に走った。
「あ、あの娘はその……えーと……。」
そうだよな。あの時、教室にはカジワラもいたんだからハナザワさんが俺を訪ねてきたことを知っていても何ら不思議ではないよな。むしろ今までカジワラが俺にそのことを質問してこなかったことが不思議なくらいだ。どうする正直に話すか?
いや、カジワラを裏切って2人の彼女と付き合うことになったなんて、とてもじゃないが言えそうにない。カジワラが傷つくかもしれな……い?……いや、待てよ。カジワラは俺の愛人なんだから、俺の彼女が2人になったことぐらいで傷つくだろうか?
傷つかないかもしれない。むしろ、「私はトツカくんの愛人なんだから、トツカくんの彼女の数なんて気にしないよ。」と笑って言うかもしれない。それなら、正直に話しても大丈夫かな?……いや、カジワラがどう思うかも大事だが、俺がカジワラにどう見られたいかも大事だ!彼女を増やしたことを全く隠さずに話すような馬鹿だとカジワラには少しでも思われたくない!俺がちゃんと罪深いことをしているという自覚があり、ホントに好きな人には、それを隠したいという気持ちがあるってことを分かってほしい!
でもどうする⁈俺とハナザワさんの関係をどう説明すればいいんだ⁈
俺が何て答えればいいか迷っていると、カジワラが、「あの娘……もしかして、この前、図書室でトツカくんが一緒だった娘だよね?」とさらに尋ねてきた。
そうだった!カジワラは図書室で俺とハナザワさんが一緒にいるところを見てたんだった!それなら……。
「そうなんだよ。ハナザワさんって言って、本に詳しそうだったから、いろいろ本のことを聞いているうちに仲良くなったんだ。あの時も俺におすすめの本を貸してくれようとして、教室まで来てくれたんだよ。」
よし!そんなに不自然じゃない感じの嘘を言うことができたぞ!これでカジワラが納得してくれたらいいんだけど……。
「仲良くって、どのぐらい?付き合ったりしてるの?」
「何言ってんだよ⁈俺の彼女はナツキだけだよ!ハナザワさんは友だちだよ!友だち!」
「ふ~ん?そうなんだ?つまんないの。」
「『つまんない。』ってどういう意味?」
「だって、トツカくんって愛人作るような人だから、2股も普通にするんじゃないかなって思ってさ。」
何言ってんだよ?俺はカジワラとどうしても付き合いたいから、形ばかりの彼女を作ってカジワラに愛人になってもらったのであって、カジワラが普通に付き合ってくれたら、愛人なんて作ってないんだぞ!と言いたくなったけど、それを言うわけにはいかないので、「するわけないだろ!何言ってんだよ⁈」とだけ言っておいた。
「あははは。私は2股してくれても構わないからね。」
カジワラが笑いながらそう言ったので、「しないよ。絶対!」と言おうとすると、「ダメ‼」とハタケが声を張り上げた。さらにハタケは必死な表情をしながら、「ダメだよ!トツカくん!2股なんて絶対ダメ!」と俺に言い聞かせるように言ってきた。
「落ち着け!ハタケ!大丈夫だよ!絶対しないから!」と答えると、ハタケは落ち着きを取り戻し、「……そう。なら良かった。」と言った。
ハタケのやつ、どうしたんだろう?俺が親友のカジワラと愛人として付き合ってもらうことは気にしなくても、俺が2股するのは気にするのか?ハタケの考えがよく分からないな。
ハタケの謎の気持ちを考えていると、午後5時になってしまったので、4人の漫画談義はお開きになった。




