表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/111

第83話

 「ごめん!待たせちゃったかな?」


俺が図書室に着くと、すでにハナザワさんが入り口のドアの近くで立って待っていたので、来るのが遅れたことを謝った。


「全然待ってないですよ!」


ハナザワさんは笑ってそう言っていたが、明らかに嘘だということが分かり、申し訳ない気持ちになった。でも、ここで何度も謝っていてもしょうがない気がしたので、ここはハナザワさんの優しさに甘えることにした。


「そっか。なら良かった。ところでホントにいいの?図書室が閉まるまで一緒に本を読むだけで?」


「はい!トツカ先輩に読んでほしい本がたくさんあるので、まずはそれを読んでほしいんです!その後で本を読んだ感想を話し合えたらいいなぁ。って思ってるんです。」


夏休みが終わるまでハナザワさんに付き合ってあげればいいと考えている俺にとっては、楽しそうに今後のことを話すハナザワさんを見ていると、すごく申し訳ない気持ちになった。


「そっか。それじゃあ、俺もできるだけ早く薦められた本を読み終えられるように努力するよ。」


「いえ!ちゃんと内容を理解できるようにゆっくり読んでほしいです!」


「そっか。ごめんごめん。内容を理解しながらできるだけ早く読むよ。」


「はい。それでお願いします。それじゃあ、図書室に入りましょうか?」


「うん。そうだね。」


図書室に入ると、俺が2人分の席を確保してる間にハナザワさんは俺に薦める本を持ってきて、俺の前の机に2冊の本をポンと置いた。


「あれ?2冊だけでいいの?」


読んでほしい本がたくさんあると言ってたのに、ハナザワさんが2冊しか持ってこなかったことを疑問に思い、そのまま口にしてしまった。


すると、ハナザワさんは微笑みながら、「全部持ってきても今日は読み切れないと思ったので、2冊だけ持ってきました。」と答えた。


「それもそうだよね。それでどっちから読んだ方がいい?」


「どっちもすごくお薦めなので、どっちから読んでもらっても構いませんよ。」


「そう?じゃあ、こっちから読んでみようかな。」


その後は、図書室が閉まるまで俺とハナザワさんはほとんど話すことなく(図書室なのでペラペラとしゃべることはできないのだが)本を読んでいた。俺はハナザワさんに薦められた本を読み切ることができなかったので、2冊とも借りることにした。


図書室が閉まった後はナツキと一緒に帰宅する約束をしていたので、「それじゃ、ハナザワさん、また明日。」と言って、ナツキとの集合場所である昇降口に向かおうとした。するとハナザワさんが、「あの!トツカ先輩!ちょっといいですか?」と俺を呼び止めてきた。


「どうしたの?ハナザワさん?」


「あの……ラインのIDを交換してもらってもいいですか?」


ナツキとはラインのIDをとっくに交換しているので、この申し出を断るとナツキとハナザワさんとの間に格差ができてしまうなぁ。と考え、「うん。いいよ。」と言って快諾した。


ハナザワさんとラインのIDを交換したあと、俺はハナザワさんと別れて昇降口へと向かった。15分ほど昇降口で待ってるとナツキが走ってやって来た。


「ごめん。待たせちゃって。」


「大丈夫だよ。さっき来たところだから。」


俺もハナザワさんを見習って、ナツキに気を遣った嘘をついた。


「そう?なら良かった。それじゃあ、帰ろっか?」


ナツキも嘘だと分かってるのか、少し影のある笑顔をしていた。


学校から家に帰るまでの間、ナツキはずっとハナザワさんと何してたかを質問してきた。

俺が正直に図書室で本を読んでいたと答えても、半信半疑といった表情をしていた。


「あとラインのIDを交換した。」と言うと、ナツキはすごく複雑そうな表情をしていたが、「まあ、それはしょうがないよね。」と、最終的には納得しているようだった。


家に着くと、ナツキは最後に、「私としたことがないようなことは、ハナザワさんとしちゃダメだからね!」と釘を刺してきた。


俺は大体意味は分かっていたが、ナツキをからかってやろうと思い、「たとえばどんなことだよ?」と聞き返した。


「たとえば……手をつなぐとか、キ、キスするとかよ!」


ナツキは顔を真っ赤にしながら俺の質問に答えた。


「大丈夫!そんなことしないって!」


俺が断言すると、ナツキは安心したのか笑顔で、「それならいいけど。それじゃあ、セイ、また明日。」と言って、玄関のドアを開けて家の中に入って行った。


「ああ。また明日な。」


そう挨拶する心の中では、ナツキともしないけどな。とさっきの発言にさらに付け加えをしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ