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第76話

 カジワラとのデートを終えて家に帰るとすぐに自分の部屋に向かいベッドに倒れ込んだ。

ナツキとのデートよりも2時間ぐらい早く帰宅したのだが、ナツキとのデートよりもはるかに疲れていた。


このまま少し眠ってしまおうか?と考えたが、ふとカジワラとデートする前にキョウヘイに口裏を合わせてくれるようにメッセージを送ってたことを思い出した。


眠る前に返信が来てるか確認しようと、デート中は一切見なかったスマホを見てみると、「了解。」

「その代わり、カジワラとのデートがうまく行ったかどうかあとで教えろよ。」と2件のメッセージが来ていた。


キョウヘイからのメッセージを見た俺は、カジワラとのデートでの不満をキョウヘイに聞いてもらい、俺の気持ちに共感してもらいたいという思いがドッとあふれ出したために、「今から音声通話してもいいか?」とキョウヘイにメッセージを送った。


キョウヘイから返信が来るのを待っている間、俺はずっとスマホの画面を見続けていた。メッセージを送ってから数分後にキョウヘイから、「OK。」と返信が来た。


それを見るとすぐに俺はキョウヘイに音声通話をかけた。


「もしもし。」


「キョウヘイ!聞いてくれよ!カジワラの奴、ひどいんだぜ!ちゃんと事前にナツキとデートしていろいろ準備したのにもかかわらず、早目にデートを切り上げるし、ナツキとのデートではお茶してないからって、一緒にお茶したかったら金払えって言ってくるんだぜ!ひどいと思わないか⁈」


俺は早口でカジワラとのデートの不満点をキョウヘイが聞き取れるかどうかも気にせずに言い切った。するとキョウヘイは、「そうか。でもナツキとカジワラは別の人間だから、同じデートコースを行ったとしても同じ時間がかかるわけじゃないし。恋人ではなく愛人として付き合ってもらってるんだから、やりたくないことをしようと言われたらお金を請求されるのは仕方ないんじゃないか?」と俺のカジワラに対する不満点をちゃんと聞きとって的確な指摘をしてきた。


「そ、それはそうだけど……。」


「セイの気持ちは分からないでもないよ。だから助言するけど、カジワラがお金を払えば何かをしてくれるのなら、それを利用すればいいじゃないか?手をつなぐとかキスをするとか、それ以上のことも金を払えばしてくれるんだろう?相手は愛人なんだから開き直って愛人らしい付き合いをしたらどうだ?」


「キョウヘイ。実は俺も今日カッとなって似たようなことを聞いちゃったんだよ。そしたら手をつないだりキスしたりするのはいいけど、それ以上はダメだってさ。」


「キスまではいいんだろう?だったらしてもらえばどうだ?キスしたあともやっぱり好きだ!と思うんだったら愛人の関係を続ければいいし、キスで満足してカジワラを諦められるのなら別れればいいと思うんだけど。」


「そう簡単にはできないよ!キスとかはやっぱり相手にも自分のことを好きになってもらってからしたいじゃん⁈」


「現実は理想通りにはいかないこともあるんじゃないか?漫画とか見たいにキスから始まる恋愛もあるかもしれないぞ。」


「それは理想じゃなくて妄想だろ。」


「ハハハハ。かもな。何でそんな不満ばかりの相手と付き合ってるんだ?って思うけど、それはセイがカジワラを好きだからだよな。そもそもカジワラのどこが好きになったんだ?」


「それは……カジワラとは趣味が合うし可愛いし……それに……。」


「趣味があって可愛いならハタケでもよくないか?」


「ハタケはカジワラとは違うんだよ!」


「でも、セイが異性を好きになる理由に当てはまる人は他にもいそうだから言ってみただけだよ。そんな怒るなよ。」


あれ?そういえば、何で俺はカジワラを友だちから恋愛対象としてみるようになったんだっけ?何か理由があったような?うーん?思い出せない。


「まあ、とりあえずセイが本当にカジワラを好きかどうかというのも考え直してみたらどうだ?俺に言えるのはこのくらいだな。」


「分かった。ありがとう。ちょっと考えてみるよ。」


「うん。じゃあまた明日な。」


「また明日。」


キョウヘイとの音声通話を切ってベッドに横になりながら俺はカジワラのことが本当に好きなのか考え始めた。


ナツキとのデートの時間よりも短かったとはいえ、ナツキとのデートよりもカジワラとのデートの方がドキドキした。だが楽しさで言えば、ほんの少しだがナツキとのデートの方が楽しかったような気がする。その理由は考えたくない。考えてしまえば、今まで誤魔化してきたことに向き合わなくてはいけなくなるからだ。


キョウヘイの言う通り、俺の異性の好みに当てはまる人は他にもいそうだ。もうカジワラのことは諦めて別の人を好きになった方がいいのかもしれない。しかし、今は思い出せないがカジワラを異性として認識した出来事があった気がする。それを早く思い出すようにしなくてはいけない!


結局、俺がカジワラを本当に好きかどうかは結論が出なかった。でもすっぱりと諦められないことを考えるとカジワラを好きじゃないわけではないようだ。


俺はその事実に何故かホッとしたが、別の先送りにできないことも思い出した。デートの資金が大分心もとなくなってきたことだ。まだ手を出していないが、このままではお年玉などを貯めておいた(たいした金額ではない)貯金に手を出さなくてはいけなくなる。


明日からバイトでも探すか。そう決意して俺は晩ご飯ができるまで眠った。


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