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第74話

 早めに家を出てしまったので、午前8時40分ぐらいに駅前についてしまった。

やることもないのでスマホで漫画を読んでいると、あっという間に時間が過ぎ、気付くと午前9時前になってしまった。


もうカジワラも来てるかな?俺がキョロキョロと辺りを見回すと、駅の出入口からちょうど出て来るカジワラを見つけた。俺が手を振って近づくと、カジワラも俺に気付いたらしく俺の方へ小走りで近づいてきた。


「待った?」


「いや、今来たとこ。」


「そっか。じゃあ行こうか?」


「ああ。」


俺とカジワラはバス乗り場に向かって歩き始めた。


うおー!今の会話、なんかカップルっぽいよな。ナツキとは駅で待ち合わせじゃなかったから、こんな会話なかったもんな。


カジワラが肩からかけてるバッグは小物ぐらいしか入りそうにないくらい小さいから、ナツキみたいにお弁当を作って来てはくれなかったみたいだな。


少し残念だが、それにしてもカジワラの今日の服はスカートコーデか!別にカジワラのスカート姿なんて制服で見慣れてるけど、私服のスカート姿は制服とは違う可愛さがあるよな。ナツキのスカート姿はムズムズしてあまり見てられないけど、カジワラのスカート姿はずっと見てられるな。あ!こういうことはちゃんと本人に伝えた方がいいんだよな。よーし!


「カジワラ!今日の服装可愛いと思うよ。」


「ありがとう。デートだからそれなりな格好しなくちゃいけないと思ったからね。トツカくんは……なんか無難な格好だね。」


「あ……そう?ははは。」


カジワラの服装は褒められたが、俺の服装に対する微妙な意見を聞かされて苦笑いするしかなかった。そのあとはバスに乗って水族館の最寄りの停留所に向かった。この日も先週と同じく親子連れの方が多かった。


バスの中での会話は、せっかくこの日のために推理小説を読んで話題作りをしたというのに、カジワラを待ってる間に読んだ漫画の話をしてしまった。この前は怒っていたのに、この日のカジワラは特に嫌な顔もせずに一緒に漫画の話をしてくれた。もしかしたらデートが始まったばかりで場の空気を悪くするのは良くないと思ってくれたのかもしれない。


水族館に着くとすぐにチケット窓口に並んだ。この日もそれなりに人が並んでいて6組くらい前に並んでいる人たちがいた。俺たちの番が来て学生証を見せて高校生2人分の料金を払ったが、ナツキとは違い、カジワラは財布を出す素振りさえ見せなかった。


もちろん、カジワラの分は俺が払うつもりでいたし、カジワラは愛人だから払わないのは分かっていたが、ふりぐらいはしてほしかった。


水族館に入ると最初にこの水族館の目玉である大きな水槽が見えた。ナツキと一緒に来ていたので俺の感動は薄れたが、カジワラは少し感動しているようだった。それから10分くらい俺とカジワラは水槽を眺めてた。一緒にいる相手がカジワラじゃなかったら、3分も見てられないと思うが、この前ナツキが言ってたみたいに、こういうのは誰と見るかが大事なのかもしれない。


「それじゃ、次行こうか?」


「え?うん。」


ナツキは30分くらい眺めていた水槽を、カジワラは10分ほどで見るのをやめてしまったことに少し驚きつつも、俺はカジワラの提案を受け入れて次の展示物を見に行った。


次のタカアシガニやミズダコ、チンアナゴといった展示物もカジワラは少し見ただけで、次の展示物へと移動してしまった。カジワラとナツキは別の人間だから感性が違ってもしょうがないのだが、少し寂しく感じるとともに、俺とカジワラが似ていることに少し親近感を感じた。


すぐに別の展示物へ移っていったから、ナツキの時よりも早くイルカショーの会場まで来てしまった。あと10分ほどでイルカショーが始まるので席もだいぶ埋まっていた。


それを見て焦った俺はカジワラに、「カジワラ、どの席に座る?前の席に座るのなら水しぶきで濡れないようにかっ……。」と言ったところで、カジワラが食い気味に、「後ろの席に座ろ!濡れるの嫌だし。」と言ってきた。


「後ろの席でいいのか?まだ少し前の席も空いてるけど……。」


「後ろの席がいいの!ほらほら早く座ろ!」


カジワラに促されるままに最後列に座ってイルカショーを見た。俺はこれで3度目なので感動はかなり薄かったが、カジワラはそれなりに楽しんでいるようだった。


イルカショーが終わると、また展示物を見に行った。アザラシやペンギンといった魚以外の展示物はカジワラも興味があったらしく、それなりの時間眺めていた。午前11時くらいになると混雑しないうちにという理由で、フードコートでお昼を食べた。お昼を食べ終えるとまだ見てない展示物を見たあとお土産物売り場に行った。


俺は(気持ちだけは)何でも買ってあげるつもりでいたが、カジワラは何も欲しがらなかったので懐事情では助かったが、記念になるものを買わなかったので少し残念だった。


午後12時半には全部の展示物を見たので、これからどうするかカジワラに聞いてみると、「もう帰ろうか?」と提案してきた。


「え?どこかのカフェとかに入ってお茶とかしない?」


「ヒナタさんともそうしたの?」


「いや、ナツキとは行ってないけど……。」


「じゃあ、私も行かない。」


「ちょっとだけでもダメ?奢るからさ。」


「私はトツカくんの彼女じゃなくて愛人なんだよ。しかも、お金ももらってないのにデートしてあげてるんだから、楽しそうじゃなければお茶にはいかない。」


確かにカジワラの言うことも一理あるように感じたが、その理屈なら俺にも言いたいことがある!


「それじゃあ、カジワラは本物の愛人みたいにお金を払えば手をつないだり、キスとかしたりしてくれるのか⁈」


俺はちょっとカッとなって聞いてはいけないことを聞いてしまった。


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