第72話
月曜日から土曜日までは、ほとんどカジワラとのデートの準備に時間を費やした。
と言っても、放課後4人で集まって漫画の話をするのはやめなかった。カジワラと一緒にいられる時間を減らす理由がなかったからだ。
ただ、相変わらず一緒に下校はしてくれなかったので、午後5時以降は学校の図書室が閉まるまで図書室で推理小説を読んだ。もちろん、カジワラとのデートでの話題作りのためだ。ハナザワさんと出会う危険性もあったが、ナツキに怒られることよりもカジワラとのデートでの話題作りを優先した。
幸い、ハナザワさんとは出会わずに済んだ。もしかしたらハナザワさんの方から俺を避けてくれたのかもしれない。
図書室が閉まった後は、ナツキの部活が終わるまで時間をつぶし、ナツキと一緒に帰った。せっかく完全下校時間の近くまで学校に残っていたのだから、カジワラと一緒に下校するために、まずはナツキと一緒に下校しようと思ったからだ。
カジワラとの下校を再現するために、付け焼刃だが今まで読んできた推理小説のことをナツキに話しながら下校した。まだ5,6冊ぐらいしか読んでいないので、たいした話はできなかったのだが、ナツキは全然嫌そうな表情もせずに話を聞いてくれた。
話を聞くだけでなく、ナツキは俺のつたない説明では分かりづらいトリックのことなどを、「そのトリックはつまりこういうことだよね?」と聞き返したりしてくれた。
「推理小説に興味あるのか?」とナツキに聞いてみると、ナツキは、「まあ、少しね。……そういえば、この前セイが図書館から借りてた小説を今読んでるんだけど、あれ面白いね。」と答えた。
「ああ、あの小説か?あれは面白かったな。ナツキはどこまで読んだんだ?」
「えーと?私は湯〇教授が……。」
ナツキも俺と同じ小説を読んでいることを知った後は、その小説のトリックや犯人の動機についての感想などを話し合った。俺が一方的に推理小説の話をしている時よりも楽しかった。カジワラとの時もこんな風にうまく行ってほしいなぁ。と願いながら下校した。
土曜日の放課後は4人で漫画の話をした後、駅前のデパートへ行った。目的はカジワラと明日、水族館に行ってイルカショーを前列で見ることになった場合に、水しぶきが飛んで服が濡れないための合羽を買うためだ。いろいろ種類があって最初は迷ってしまったが、ずぶ濡れにならなければいいわけなので、あまり暑くならなくて、持ってきたバッグも覆えるように、薄くて大きめの合羽を2つ買って帰った。
家に帰るとカジワラにラインのメッセージで、「明日は9時前に駅に集合してくれるか?学生証を忘れずに持ってきてくれ。」と送った。するとカジワラからは、「了解。」という意味のスタンプが送られてきた。
俺は寝坊しないように午前6時半と一応午前7時にスマホのアラームをセットしてから寝た。
ちなみに前日の金曜日に期末試験の結果が返ってきた。
俺たち5人の中で一番成績が良かったのはもちろんキョウヘイで15位だった。たぶんキョウヘイは中間試験の時より手を抜いたのだろう。
次に良かったのは40位のカジワラで、次が61位の俺で、次が74位のハタケだった。一番悪かったのはナツキだと思う。
推測なのはナツキが頑なに点数や順位を教えてくれなかったからだ。ただ、本人の話によると中間試験の時よりも成績が良かったとは言っていたが、おそらく一緒に試験勉強した時の感じだと、ハタケの順位は越えていないだろう。