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第69話

 ナツキのこの日の格好はいつもと同じパンツコーデだったので、少しホッとしていた。駅まで歩いて向かっている途中、ナツキが肩にかけているカバンが少し重そうに見えたので、やべっ!こういう時は男が荷物を持つものだよな。と思い、「ナツキ、カバン重くない?俺が持とうか?」と尋ねた。するとナツキは少し困ったような笑顔をしながら、「大丈夫。そんなに重くないし。でも、ありがと。」と答えた。


どう見ても重そうに見えるのに何で渡さないんだろう?俺が頼りなく見えてるのかな?ほぼ毎日部活で体を動かしているナツキと比べたら、俺の方が体力ないように見えるかもしれないが、俺も一応男だし、少しは筋トレもしてるんだけどな。もしかしたら遠慮してるのかもしれない。もう一度聞いてみるか。


「ホントに大丈夫か?俺、特に荷物持ってないから全然持てるぞ。」


「ホントに大丈夫だから。」


「そうか……。」


ナツキは頑なにカバンを渡そうとしないので、もしかしたら万が一にも中を見られたくないのかもしれないな。と思い、それ以上は、「カバン持とうか?」とは尋ねなかった。


駅に着いたら水族館の近くまで行くバスに乗った。バスの乗客は親子連れの方たちが多かった。20分ぐらいバスに揺られてたら最寄りのバス停に着いた。親子連れの方たちも俺たちと一緒に降りたので、この人たちも水族館に行くんだろうな。と思った。ほぼ親子連れの方たちに付いて行くような形でしばらく歩いていると水族館に到着した。すぐにチケット窓口に並んだが、すでに7,8組の親子連れの方やカップルが並んでいたので窓口に行くまでに数分かかった。


「いらっしゃいませ。お客様は何名ですか?」


窓口の人にそう聞かれて、俺は、「高校生2人です。」と答えた。


「それでは学生証はありますか?」


「あ!はい。学生証ですね。ナツキも学生証出してくれるか?」


「うん。」


俺とナツキが学生証を見せると、窓口の人が、「はい。ありがとうございます。それでは高校生2名で3400円です。」と言ってきたので、俺が財布を取り出して払おうとすると、ナツキも財布を取り出そうとしていたので、「ナツキ、何やってんだよ?ここは俺が払うからいいよ!」と伝えた。すると、ナツキは少し驚いた顔をしながら、「え?でも、セイ大丈夫なの?自分の分くらい払うよ?」と、俺の財布事情を心配してきた。


確かにナツキの分をポンと払えるほど俺の財布事情は良くないのだが、俺はナツキとのデートはカジワラとのデートの予行演習だと思っているので、カジワラにさせないことはナツキにもさせちゃいけないと考えていたため、ナツキが自分の分の料金を払おうとするのを止めた。


「大丈夫だよ!そんなことナツキは気にしなくていいよ!」と答えると、ナツキは心配そうな表情をしながらも、「そう?それならお言葉に甘えちゃおうかな。」と受け入れた。


「そうそう。甘えとけ!甘えとけ!」


俺は2人分の料金を払い、チケットを受け取り、ナツキと一緒に水族館に入館した。


入館して少し進むと大きな水槽が目に入った。デートコースのことを考えていた時に調べたが、この水族館の目玉となる展示物の一つらしい。イワシの大群が泳いでいたり、サメやエイなんかの大きな魚や名前がよく分からない魚などたくさんの種類の魚が泳いでいたりした。最初は、「うわぁ。」とスケールの大きさに圧倒されていたが、俺は10分も見てると、テレビや映画と違って特に何も起きないので少し飽きてきた。ナツキの方を見るとまだまだ魅了されているようだったので、何も言わずに水槽を眺めることにした。それから10分ほど経つと、やっとナツキも我に返ったらしく、「あ!セイ、ごめん!つい夢中になって見てた。そろそろ次の展示物を見に行こうか?」と言ってきた。俺としては願ったり叶ったりだったので、「そうだな。次行こうか。」と答えた。


「ところで、こんな風に大きな魚と小さな魚を一緒にいれて食べられたりしないのかな?」


「ああ、食べられてるらしいぞ。だから減らないように新しい魚を供給してるらしいぞ。」


「そうなんだ。そりゃそうだよね。」


ナツキは少し元気をなくしているように感じた。気を取り直させようと、「ほら、次行こうぜ!次!」と早く次の展示物を見に行くように誘った。


「そうだね。次行こうか。」


次の展示物はそれほど大きな水槽という訳ではなかったが、それなりの大きさの水槽に個別の生き物を展示しているようだった。タカアシガニやミズダコ、チンアナゴなどいろいろな生き物が展示されていた。俺は極端な話をすれば1つの生き物を10秒も見れば十分なのだが、ナツキはじっくりと展示物を眺めていた。


楽しんでもらえてるみたいだから、これはこれでいいか。


午前11時になると、ナツキが俺の肩をポンポンと叩いて、「そろそろイルカショー始まるから急ごう!」と言ってきた。「イルカショーまではまだ30分あるから、そんなに焦ることはないんじゃないか?」と伝えると、「いい席が取られちゃうでしょ!私、前の席で見たいんだよね。」とナツキは答えた。


この時は何も言わずにナツキに付いて行ったが、俺はイルカショーを前の席で見るのならナツキに伝えなきゃいけないことがあるのだが、それを伝えるかどうか悩んでいた。


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