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第66話

 期末試験は7月第1週の火曜日から金曜日までの4日間で行われた。

今回は前回の中間試験の時と違って3週間前から準備してたわけではなかったので、手応えとしては、また50位以内に入るのは無理だろうなと分かる感じだった。全体的に見ると頭から抜けていた保健体育と家庭科の点数が少しヤバそうだった。それでも得意科目の世界史なんかは前回と同じくらいの点数が取れそうな手応えはあった。


テストは午前中で終わるので、テスト期間中の午後は俺の部屋でナツキと一緒に次の日の試験科目を勉強した。うちに来るナツキの格好は以前と同じパンツスタイルに戻っていたので俺は内心ホッとしていた。試験勉強の前にナツキと試験の手応えについて話をしたが、ナツキは前回よりも良い手応えを感じているようだった。まあ、1週間前から一緒に準備していたので、少しは手応えを感じてもらわないとこっちもやるせない気持ちになってしまいそうだが。木曜日の午後5時半、最終日のための試験勉強を早めに終えたあと、俺は1週間前くらいから考えてたことをナツキに切り出した。


「なぁ、ナツキ、夏休みって部活が休みの日とかある?」


「え?そうだなぁ、ないこともないと思うけど、どうしたの急に?」


「いや、その、どっかにデートに行けないかなぁ?と思ってさ。」


「デ、デート⁈私とセイが?いつ?」


ナツキはこっちが答えてほしいことを質問して来るくらい動揺しているようだった。


「ナツキ落ち着けよ。俺が聞いてるんだよ。ナツキがいつなら行けるか。」


「それもそうだった。ハー、フー。ごめん。まだいつ休みになるかは分からない。」


ナツキは深呼吸して気持ちを落ち着かせてから俺の質問に答えてくれた。


「そっか。それじゃあ、休みの日が決まったら教えてくれ。」


「分かった。そういえば、前に言ってたよね?カジワラさんは私とデートしてからじゃないとデートしてくれないんだっけ?」


「そうなんだよ。そういえば、前にデートしてくれないかって頼んだ時は保留にされたのに、今回はOKみたいだな?なんでだ?」


「そ、それは……私がデートしてあげなきゃ、セイがカジワラさんといつまでもデートできなくてかわいそうだからだよ。」


「そっか。ありがとな。」


「せっかくの休みの日に付き合ってあげるんだから、ちゃんと楽しませてよね。」


「分かってるよ。で、どこか行きたいところある?」


「うーん?そうだなぁ?セイが考えてよ。」


「え?俺が?女子の行きたい場所が分からないから聞いてるんだけど。」


「カジワラさんを楽しませるためって思えば苦にならないでしょ?」


「それはそうだけど。」


「それじゃあ、よろしくね。」


「分かったよ。頑張ってみるよ。」


有無を言わせない圧力をナツキから感じたので仕方なく俺はデートで行く場所を自分で考えることを承諾した。


「それじゃあ、私は帰るね。」


ナツキを玄関まで見送ったあと、俺は試験勉強の合間に高校生のカップルがデートで行くおすすめの場所を調べた。


試験最終日、帰りのホームルームが終わると俺とキョウヘイとカジワラとハタケは漫画の話ではなく、試験の手応えについて話していた。


「イチノミヤくんのおかげで今回もいい点数取れそうだよ。ね?ミーちゃん?」


「うん。私の場合はトツカくんのおかげでもあるけどね。ありがとね。イチノミヤくん。トツカくん。」


「俺が教えられたのはキョウヘイから教わっているところだけだったからたいしたことないよ。」


「そんなことないよ!十分助かったよ!」


「そうか?じゃあそういうことにしておくか。」


「イチノミヤくん、ずっと時計を見てるけど、どうしたの?」


「悪い悪い。ちょっとこのあと用事があるから、すぐに帰らなくちゃいけないんだ。ホントはもっとみんなと話してたかったんだけど。ごめん。」


「そうなんだ?レーちゃん、トツカくん、どうする?私たちも帰る?」


「私はどっちでもいいよ。トツカくんが決めてよ。」


「うーん?それじゃあ、帰ろっか?」


「「え?」」


「『え?』って何だよ?俺、そんなおかしなこと言ったか?」


キョウヘイとハタケが驚きの声を上げたので、俺は自分の発言のどこがおかしいか尋ねた。


「いや、セイはカジワラと一緒にいることができる選択をすると思ったからさ。」


「そうそう。トツカくん、ホントにいいの?」


「ああ、いいよ。俺もしたいことがあるからさ。」


「そうなんだ?それじゃあ、今日は解散ってことでいいね?ミーちゃん帰ろ。」


「う、うん。」


俺がカジワラと一緒にいれる時間をあっさりとふいにしたのをキョウヘイとハタケは訝しんでいたが、これもカジワラと一緒にいるための選択だった。というのもナツキとデートで行く場所を考えようと思っていたからだ。ナツキとデートすればカジワラとデートできるので、結局はカジワラと一緒にいる時間、しかも2人きりでいられる時間が増えることになる。この日は解散したあとまっすぐ家に帰った。家に着くと自分の部屋で高校生がデートで行くおすすめの場所をスマホで検索した。


あまり経費が掛からないデートコースを検索していた。というのも、俺の小遣いは他の家庭と比べるとそこそこもらっている方だと思うが、コミックを買ったり、学校の帰りに飲み物やお菓子を買ったりするとそれほど残らないので、最悪、虎の子のお年玉を貯金していたものを崩すしかなくなる。それも時々、手を付けていたのでたいした金額は残っていない。だからあまり経費が掛からないデートコースを考えていた。俺が検索に熱中していると、急にラインのメッセージが来た。


「なんだ?ナツキからか。どれどれ?」


ナツキからのメッセージを見てみると、「今度の日曜日、顧問の相川先生が練習に来れないから部活休みになったんだ。」とあった。


お!それならデートできるじゃん!


さっそく俺はナツキに、今度の日曜日デートしよう。とメッセージを送ろうとしたが、あることが気になって途中で指を止めた。


顧問が休むくらいで部活って休みになるんだっけか?うーん?中学生の時しか部活に所属してなかった俺には分からないな。でも教員の仕事って結構ブラックだっていうし、顧問がいなくちゃ部活出来ないのかもな。


俺はそれ以上深く考えるのをやめて、ナツキにメッセージを送ってしまった。すると数十秒後に「OK」という意味のスタンプが送られてきた。


よーしっ!それじゃあ、ちゃんとデートコース考えなくちゃな!


俺は試験勉強と漫画を読む以外で初めて日付が変わるまで夜更かしした。


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