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第64話

 市立図書館で試験勉強をしている間も市立図書館から家に帰って来る間もナツキは上機嫌だった。理由は何となく分かっている。ナツキが俺にはもったいない彼女だと暗に褒めたからだと思う。まあ、ナツキは俺の彼女としてはハイスペック過ぎるということは認める。それは付き合ってから気付かされたのだが。関係性が変わると見えてくるものも変わって来るんだなあ。それは愛人として付き合ってもらっているカジワラにも言えることだけれど。


カジワラとの愛人関係を続けるために、ナツキと付き合ってるふりをしてるわけだが、その根幹を揺るがすような事実に俺はうっすらと気付き始めていた。これはまだ推測の段階だが、もしかしたらナツキは俺のこと……。いや、それはない。それはただの自惚れだ!そんなことを考えたら、こんなロースペック男子の俺と付き合ってるふりをしてくれているナツキに失礼だ。キョウヘイにも宣言したんだからな、ナツキを傷つけるようなことはしないと。こんな勘違いしながら付き合ってたら、ナツキを傷つけるどころか、キモイと思われて嫌われるかもしれない。気を付けないと。


そんなことを考えていたら、いつの間にか俺の家の前まで来ていた。


「それじゃあ、また明日。」


「ああ、また明日。」


ナツキと別れの挨拶をすると、お互い自分の家の玄関のドアを開けて中に入った。


「ただいまー。」と俺が言うと、リビングのドアから母さんが、「お帰りー。」と言って迎えてくれた。俺が靴を脱いで、脱いだ靴をそろえていると、後ろから母さんが、「で、どうだったの?」と尋ねてきた。


「何が?」


俺が尋ねられてることの意味が理解できず、聞き返すと、母さんはニヤニヤした口に手を当てて隠しながら、「何って、それはナツキちゃんとのデ・エ・トよ。デ・エ・ト。」と答えた。


「デート⁈俺とナツキは試験勉強しに市立図書館に行っただけだよ。デートなんかじゃ……。」


そこまで口に出して、俺はハッと気づいた。これじゃ昨日と同じだ!偽とはいえ、ナツキが彼女でカジワラは愛人だ!だったらここで母さんに言うべきことは……。


「そうだよ。デートだよ。デート。ずっと俺の部屋ばかりだったから、気分転換に市立図書館で勉強デートしてきたんだよ。」


「やっぱりデートだったのね!セイ、昨日はナツキちゃんと付き合ってないって言ってたけど、ホントは付き合ってたのね?何で否定なんかしたの……って、それは恥ずかしかったからに決まってるわよね。うん、でも良かった。」


「そりゃ、思春期ですから、何でもかんでも母さんに話すわけないじゃん。でも、そういう対応はナツキに失礼かなと思ったから、母さんに打ち明けたんだ。誰にも言わないでよ!」


「分かってる。分かってる。」


母さんはにやけ顔というよりは、息子の成長を喜んでいるような顔をしていた。俺は気恥ずかしくなり、

「俺、部屋で勉強してるから、晩御飯ができたら呼んで!」と言って、階段を上っていった。階段を上っていく俺に向かって、母さんが、「あ!セイ!母さん、ナツキちゃんだったら結婚してくれてもいいからね!」と大きな声で言ってきたので、「何言ってんだよ、母さん⁈」と言い返した。隣の家のナツキに母さんの発言が聞こえてないか気が気でなかった。


俺は自分の部屋に入ると、母さんにナツキと付き合っていると伝えるのは言い過ぎたかな?もう少し濁した言い方でもよかったかな?と少し後悔したが、時間が経つにつれて、後悔する気持ちよりもスッキリした気持ちになった。連日の試験勉強の疲れもあったかもしれないが、昨日とは違い、試験勉強を終えてベッドに横になるとすぐに眠ることができた。


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