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第57話

 俺はカジワラが店を出て行ったあと、お会計をして帰宅した。店から家までの帰り道は今日のデートのダメだったところを省みていた。


えーと、梶原が言うにはデートで行く店は事前にナツキと一緒に行って下見しておかなきゃいけないみたいだな。これは前にも言われてたな。ネットでかなり調べたし、ナツキとハタケの意見も聞いていたから大丈夫だと思った俺が悪いんだよな。あとはデート中の話題だな。俺はデートだからっていつもと違う話題の会話をする必要性はないと思っていたけど、カジワラとしては普段と変わらなくてあまり楽しくなかったみたいだな。カジワラが興味があって普段俺としない話題を用意しておかなきゃなぁ。明日は日曜日だし、市立図書館にでも行って推理小説を借りて読もうかな。うん。それがいいな。


などと考えながら歩いていると家に到着した。カジワラとのデートがあっという間に終わってしまったので、まだ午後3時前だった。俺は家に入ると洗面所でうがい手洗いをして自室へ行った。自室に入ると机の前に座り、今日受けた授業の復習を始めた。やっぱり再来週から期末試験なのに試験範囲の勉強を怠ってはいけないと思ったからだ。まずは英語から取り掛かった。はっきりとは覚えてないが、「ここ試験に出すぞー。」と英語担当の藤井が言ってたところがある気がするので優先的に復習しようと思ったからだ。だが、それがどこなのかが分からないので、キョウヘイにラインのメッセージで聞くことにした。


「今日の授業で藤井が試験に出すって言ってたところってどこだっけ?」


俺がメッセージを送ると5分ほどでキョウヘイから返信が来た。

キョウヘイからの返信に俺が聞きたいことは書かれていなかった。


「もうカジワラとのデートは終わったのか?」と俺が聞いてほしくないことをキョウヘイは聞いてきた。


「そうだよ!悪いかよ⁈」と俺はカジワラとのデートがうまく行かなかった苛立ちを少しキョウヘイにぶつけてしまった。メッセージを送ったあと少し後悔したので取り消そうかと思ったが、すぐに既読が付いたので、消しても無駄だな。と思い、メッセージを取り消すのはやめた。


俺のメッセージが既読になって10秒後くらいにキョウヘイから音声通話が掛かってきた。俺がそれに出ると、「どういうことだよ?デート、1時間ももたずに終わっちゃったのか?何が悪かったんだ?店か?それともやっぱり話題か?」とキョウヘイが矢継ぎ早に質問してきた。


「少し落ち着けって!カジワラの意見だと店選びは間違ってなかったみたいだ。ダメなのはキョウヘイが言った通り、デート中の話題とカジワラとのデート前にナツキと下見に来てないことみたいだ。」


「……そうか。でもナツキと下見に来てないとはいえ、いろいろと調べてからカジワラとデートに行ったんだろ?どこに問題があるって言うんだ?」


「キョウヘイには前に言ってたと思うけど、カジワラは前から自分をデートに誘う時はナツキと下見してからじゃなきゃダメだって俺に言ってたんだ。たぶんだけどカジワラにとってデートはすごく楽しいものであってほしいみたいだな。だから入念に準備してほしいんだと思う。」


「でも俺が聞いた話だと、女性の中には何度も別な女性と行って手慣れたデートコースを嫌う人もいるって聞いたんだけど、カジワラは違うみたいだな。」


「それは何人もの女性と付き合ってきた男性とのデートの場合だろ。カジワラは俺が女性と付き合ったことがないってことを知ってるから、彼女のナツキと1回行った程度のデートコースなら全然気にしないんだろ。」


「そっか。それでデート中はどんな話題を話したんだ?」


「そ…それは…漫画の話をした。」


「やっぱり。漫画の話ばかりじゃいつもと変わらないって言われたんだろ?」


「うん。」


「な。俺が言った通りだっただろ?デートなんだから普段と同じ話題は良くないんだろ。」


「良くないとは言ってないけど、他の話題もほしいとは言ってたな。」


「そうか。それで、『もう別れてほしい。』とかは言われてないよな?」


「それは言われてない。でも、『今日のデートの点数は40点。』って言われた。」


「そ…それは…低いな。で…でも、別れてほしいとは言われてないんだから、今日のデートで見限られたわけじゃないんだろ。伸びしろがあるって思ってもらえたと思えばいいよ。」


「ああ、ありがとう。これでめげずに頑張るよ!」


「うん。じゃあ聞きたいことは聞いたしこれで。」


「ちょっと待ってくれ!」


「どうした?」


「藤井が試験に出すって言ってたところはどこなんだよ?」


「ああ、そうだったな。教科書43ページの6行目から7行目の日本語訳だよ。」


「43ページの6行目から7行目の日本語訳だな?分かった。ありがとう。」


「ああ。じゃあな。」


「うん。じゃあな。」


キョウヘイとの通話が終わると、俺はさっそくキョウヘイに教えてもらったところの日本語訳に取り掛かったが、うまく訳せなかったので、恥ずかしいがラインでまたキョウヘイに質問した。


そのあとも今日の授業の復習をしていたら、いつの間にか6時を過ぎていた。俺は部屋の電気をつけて授業の復習を続けた。7時前になると母さんが夕飯ができたと呼びに来たので、リビングに行って夕飯を食べた。それから自室へ戻ってスマホを確認すると、ナツキからメッセージが来ていた。


「カジワラさんとのデートはどうだったの?」とあったので、俺は、「ダメだった。」と返信した。

返信したあとに、こんな内容の返信を送ったらナツキがまた「窓を開けろ。」と言ってくるかもしれない。取り消すか。と考えたが、俺の返信はすぐに既読が付いてしまったので諦めるしかなかった。


俺はナツキが窓を開けろと言ってくる前に窓の前で待っていると、ナツキからラインの音声通話が掛かってきた。


あれ?おかしいな。と思いつつ通話に出ると、「セイ、ごめん!私のお店選びが悪かったんだよね?ホントにごめん!」と開口一番に謝ってきた。


「違う違う!ナツキは悪くないよ。店選びは褒められたから。悪いのは俺のデート中の話題選びだから。」と俺が正直に話しても、ナツキは、「ホントに?嘘をつく必要はないんだよ。」とすぐには信じなかったが、「嘘じゃないよ。ホントに店選びは褒められたよ。」と言うと、「そっか。」と答えてしばらく無言になってしまった。


このまま無言には耐えられそうになかったので、俺は、「そうだよ。悪いのは俺の話題選びだよ。キョウヘイに事前に注意されていたのに、漫画の話しかしなかったのが悪いんだよ。それがマイナスの評価になって今日のデートの点数は40点らしいから。」と言わなくてもいいことまで話してしまった。


「え?セイとカジワラさんっていつも漫画の話してるんじゃないの?それなのになんで悪い評価になるの?」


「それがカジワラは普段と同じ過ぎるのが嫌だったみたいだ。」


「ふーん。そっか。でも良かったね。40点も点数もらえて。」


「え?どこがいいんだよ?40点だぞ!40点!」


「だって、いつも赤点すれすれの点数の私に比べたらかなりいい点数だよ。それに人生初めてのデートでそれだけ取れればよくない?」


「ま、まあ、そういう考え方もあるか。」


キョウヘイからは励まされた点数を、ナツキはいい点数だと言ってくれた。どっちも正しい気がするし、間違っている気もする。だが、どちらにしても、まだ次があるのだから次を頑張ればいいや。と思っておくことにした。


「ありがとう。ナツキ。」


「急にどうしたの?」


「まあ、その、店選びの時にアドバイスもらったしさ。」


「そのくらいだったらいつでも言ってよ!私とカジワラさんのセンス、そんなに違わないみたいだしね。」


「あはは。そうみたいだな。」


「それじゃ、おやすみ~。」


「おやすみ~。」


ナツキとの通話が終わり、俺はキョウヘイとの通話が終わった時よりもやる気が出ているのを感じた。とりあえず明日は図書館に行って推理小説を借りて来よう!と予定を立ててから眠りについた。


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