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第56話

 次の日の土曜日、俺は早く授業が終わらないかなぁ。と気もそぞろに午前の授業を受けていた。

そのため、午前の授業の内容はほとんど頭に入ってこなかった。再来週には期末試験が始まるので、これはまずいんじゃないか?と2時間目が終わった辺りから思っていたのだが、どうせ分からないところはあとでキョウヘイに教わるから別にいいや。と開き直った考えも頭に浮かんでいたので、特に授業態度を変えることはなく、午後のカジワラとのデートのことを考えていた。こういう授業中に上の空の時に限って、授業で指されることが多いが、この日は指されることなく無事に?授業をやり過ごすことができた。

 

午前の授業とホームルームが終わり、部活に行く前に弁当を食べ始める人や帰宅する人などにクラスの人たちが分かれ始めた。俺はカジワラとすぐにデートに行けるものだと思い、カジワラの席に近づいて行くと、カジワラはハタケと一緒に弁当を食べようとしていた。


「トツカくん、どうしたの?一緒にお弁当食べる?」


カジワラの発言を聞いて、カジワラは俺の考えと違い授業が終わったらすぐにデートに行くつもりはないのだということを理解した。


「いや、大丈夫。キョウヘイ!一緒に弁当食べようぜ!」


俺はカジワラと一緒にカフェで食事をするつもりだったが、そのことを母さんに伝えることを忘れていたので、母さんが弁当を作って持たせてくれていた。その弁当どうしようかな?と思っていたが、カジワラが昼食にお弁当を持ってきていたので、俺も昼食はキョウヘイと弁当を食べることにした。


弁当を食べ始めるとキョウヘイが小声で話しかけてきた。


「なぁ、カジワラと行く店は決められたのか?まあ、セイの今日の様子を見るとちゃんと決めてるみたいだけどさ。」


「ああ、キョウヘイにはまだ言ってなかったか。昨日ハタケとナツキにアドバイスをもらってなんとか決められたよ。えーと、ほら、この店。」


俺はこのあとカジワラと行く予定の店の画像をキョウヘイにスマホで見せた。


「へぇー。良さそうな店だな。セイ、よく見つけたな。」


「そりゃ、昨日必死になって探したからな。」


キョウヘイもいいリアクションをしていたので、俺はこの店にしてよかった。と思った。


「話題とかちゃんと考えたか?」


「話題?」


「そりゃあデートなんだから普段と同じ漫画の話題って訳にはいかないんじゃないのか。よくは知らないけど。」


「………。」


キョウヘイの意見を聞いて俺は急に不安になった。

え?話題って考えとかなきゃいけないものなのか?普段と同じ話題じゃいけないのか?デートだからって話題を変える方が変じゃないのか?でも、デートだから雰囲気も大事なのか?


「あ、ごめん。聞かなかったことにしてくれ。別にデートだからって普段通りじゃいけないってことはな

いと思うぞ。」


「うん。……そうだよな……。」


心配にさせるだけなら最初から言わないでほしい。と思ったが、キョウヘイも俺のことを思って言ってくれたんだから。と思う気持ちもあり、キョウヘイに文句は言えなかった。


その後は2人ともほとんどしゃべらずに弁当を食べ終えた。カジワラたちの方を見ると、弁当箱を片付け始めていたので、弁当を食べ終えたことが分かった。


「そろそろ迎えが来る頃だから俺は帰るよ。セイ、頑張れよ。」

と言い残してキョウヘイは下校していった。


俺はカバンを手に取りカジワラたちの方へ近づいて行った。


「カジワラ。そろそろいいか?」


「あ!うん。ちょっと待って。それじゃミーちゃん、今日は一緒に帰れないけど、ごめんね。」


「大丈夫だよ。楽しんできてね。レーちゃん。」


「ありがとう。楽しめるかどうかはトツカくん次第だけどね。」


ここでうまい切り返しができればいいんだろうけど、あいにく俺にそんなスキルはないので、「あははは。」と滑らかじゃない笑いを浮かべていた。


俺とカジワラは校門を出て、カフェへと向かって移動し始めた。キョウヘイに言われて心配だった話題だが、カフェまでの移動中は、今日行く店はどんな店なのか、どんなメニューがあるのかといった話題でなんとかなった。


20分ほど歩くとカフェに着いた。店に入って席に着くとカジワラが、「おすすめはある?」と俺に聞いてきた。「それは店員さんに聞いた方がいいんじゃない?」と俺が答えると、カジワラは、「え?ヒナタさんと来たことあるんでしょう?その時頼んだのでいいから教えてよ。」と言ってきた。


「え?来てないけど。」


「え?そうなんだ。」


微妙な空気が流れ始めたので、俺は店員さんを呼んで流れを変えようとした。店員さんにおすすめを聞くと、コーヒーがブラックで飲めるのならコーヒーだが、苦いのが苦手ならカフェモカなんかもおすすめだと教えてくれた。それを聞いた俺とカジワラはカフェモカを1つずつ頼んだ。


カフェモカが来るまでの間、普段通り漫画の話をしていたが、明らかにカジワラの機嫌がよくなかった。数分後、カフェモカが運ばれてきて少し機嫌がよくなったかなと思っていたが、さらに20分ぐらいすると明らかに不機嫌になっていた。ずっと俺だけがしゃべっていたが、急にカジワラが口を開いて、「40点。」と言ってきた。


「え?何が?」


意味が分からず、俺が問い返すと、「今日のデートの評価だよ。40点だね。」とカジワラが答えた。


「まず、ナツキさんと下見に来てないことがマイナスだね。このお店はいいお店だったから良かったけど、実際に来てみないといいお店かどうかは分からないこともあるからね。あとデート中の話題が漫画の話ばかりといつもと変わらないこともマイナスだね。もっと私を楽しませるように豊富な話題を用意しておいてほしかったな。プラスなのはこのお店を選んだことだけだね。」


俺がポカンとしながらカジワラの評価を聞いていると、「それじゃあ、私もう帰るね。」と言って、カジワラは席を立ち店を出ていってしまった。俺はそれをただ呆然と見送るだけだった。


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