第51話
どこのお店で食べるか決めるため、俺がナツキに、「何か食べたい物ある?」と聞くと、ナツキは、「ハンバーガーが食べたい。」と答えた。ハンバーガーショップなら俺とナツキの帰宅ルート上にあるのでそこで食べることにした。
ハンバーガーショップに着くと俺とナツキはハンバーガーとポテトとドリンクのセットを注文して、商品を受け取ってから席に着いた。いくら育ち盛りと言っても家に帰れば夕飯が用意されているので、俺にとってポテトは余計だったのだが、ちょっと考えがあってセットを注文した。席に着くとナツキは、笑顔でハンバーガーにかぶりつき始めた。ナツキの食べっぷりを見てると、こっちまでお腹がすいてくる気がした。
「ナツキは俺としたい話とかある?」
食べてる最中に話しかけるのは申し訳なかったが、カジワラを楽しませるヒントになるかもしれないので、ナツキに俺と話したいことを尋ねた。
「ん?……したい話?したい話ね?」
「したい話というか、ナツキが話していて楽しい話題とかないか?」
「話していて楽しいことなら、バレーの話かな?」
「バレーの話?俺ができるバレーの話はバレー漫画の『ハ〇キュー』の話ぐらいかな。」
「『ハ〇キュー』なら私も読んでるよ!」
「そうだっけ?それなら『ハ〇キュー』の話しようか?」
それからはナツキと『ハ〇キュー』の話で盛り上がったが、しばらくするとナツキの元気がなくなってきた。おそらくハンバーガーとポテトを食べ終わってしまったからだろう。俺はナツキにはハンバーガーとポテトだけでは足りないだろうと思っていたので、「俺もうお腹いっぱいだから、良ければ食べてくれないか?」と言って、俺が注文したポテトを差し出した。
「いいの?ありがとう!」
ナツキは余計な遠慮をすることなく俺からポテトを受け取って食べ始めた。ナツキがポテトを食べ終わるまでハンバーガーショップで『ハ〇キュー』の話をして、食べ終わったら店を出て家まで歩きながら話をした。
お互いの家に着くとナツキが、「今日は楽しかったよ!カジワラさんとも漫画の話をすればいいんじゃない?」と提案してきた。
「カジワラとはいつも放課後、漫画の話をしてるんだよ。帰り道も漫画の話じゃ、代わり映えしなくて却下されるだろうな。」
「そっか……。じゃあ、今日の私たちみたいに、どっかお店に入って何か飲んだり食べたりしながら会話すればいいんじゃない?学校に残って話す時とは雰囲気が変わると思うし。」
「そうだな。それは提案してみてもいいかもしれないな。サンキュー!ナツキ!」
「参考になったのなら良かったよ。それじゃあ、おやすみ~。」
そう言って、ナツキが玄関のドアを開けようとするのを、俺は、「ちょっと待ってくれ!」と言って止めた。
「どうしたの?まだ何かあるの?」
俺の声が大きかったからか、ナツキはちょっと驚いた顔をしながら聞いてきた。
「あのさ、俺がデートしてくれって言ったら、ナツキはどうする?」
「は?デート?私がセイと?どうしたの?私とは付き合うふりをするだけじゃなかったの?……あ!もしかしてカジワラさんに何か言われたの?」
「ああ、実はそうなんだ。カジワラが自分とデートしたかったら、ナツキとまずデートをして自分を楽しませるデートプランを考えろって言ってきたんだ。もちろん、部活のあるナツキにデートする暇がないのは重々承知の上なんだけど、もし時間に余裕があったら、俺とデートしてくれないか?」
ナツキは俺の発言を黙って聞いたあと、「ごめん。ちょっと考えさせて。」と言って、玄関のドアを開けて家の中に入って行った。俺はすぐに返事をするのは無理だよなと思ったので、「分かった。」と返事をして、ナツキがナツキの家の中に入って行くのを見送った。