第50話
夜、ベッドに入ってナツキと一緒に帰宅したことを思い返してみたが、やっぱりカジワラと一緒に帰る時にカジワラを楽しませる参考になることはなかった。カジワラとナツキが友だちだったら、「ナツキってすごくモテるみたいなんだよ。」というゴシップネタで楽しませることができるかもしれないと一瞬考えたが、カジワラとナツキが友だちだったらすでにそのことを知ってるかもしれないし、知らなかったとしても、カジワラがナツキにその話をして、「誰からそれ聞いたの?」とナツキが問い詰めたら、俺から聞いたということがばれて、俺とナツキの仲が悪くなるかもしれないなと思い、仮定の話で少しヒヤリとした。これは、明日もナツキと帰らなきゃいけないかなと考えているうちに眠りについていた。
次の日の放課後、今日もキョウヘイはホームルームが終わるとすぐに帰宅してしまった。
しかし、昨日は放課後教室にてスマホで漫画を読んでいたので、俺は話題にできる漫画のネタが豊富にあったので、カジワラやハタケに話を振ってキョウヘイがいる時と同じく5時まで漫画の話をすることができた。
5時になるとカジワラが、「もう帰ろうか?」と切り出したので、俺とハタケは「そうだな。」と同意した。俺がごく自然にカジワラとハタケと一緒に下校しようとすると、カジワラが今日も、「トツカくん、何してんの?」と聞いてきた。それでも俺は諦めずに、「昨日カジワラに言われた通り、ナツキと一緒に帰ったんだから、今日はカジワラたちと一緒に帰ってもいいだろ⁈」と反論した。するとカジワラは、「一緒に帰ってもいいよ。昨日ヒナタさんと一緒に帰って、私を楽しませられること思いついていたらね。」と言ってきた。
「いや、それは、何も思いついてないけど……。」
「じゃあダメだね。何か思いつくまではヒナタさんと帰ってね。それじゃあトツカくん、また明日。ミーちゃん帰ろ。」
カジワラはそっけなくそう言うと教室を出て下校しようとした。
「カジワラ、ちょっと待ってくれ!もし俺が『デートしよう!』って言っても、俺がナツキとデートしなくちゃ、カジワラは俺とデートはしてくれないのか?」
俺が今後の計画を立てる上で重要になることをカジワラに質問した。
カジワラは振り向くとにっこり笑って、「もちろん!私を楽しませるデートを考えるためにもヒナタさんとデートしてからじゃないと、私はトツカくんとはデートしない!」
そう言い残すとカジワラは俺の視界から消えていった。俺が呆然とそれを見送っていると、まだ教室にいたハタケが、「トツカくん、頑張って!」と言い残してカジワラを追いかけていった。
結局今日もカジワラと一緒に帰れなかった俺は、ナツキと一緒に帰るため教室で時間をつぶしていた。ハナザワさんと出会う可能性があるため図書室には行けなかった。スマホで漫画読んだり、明日古文の授業で当てられそうなので教科書の本文を訳したりしていた。
6時にはナツキが練習している体育館の近くまでやって来た。昨日みたいに女子バレー部員や男子バレー部員に見つかると、またにらまれるかもしれないので、気付かれない場所で座ってナツキの練習が終わるのを待った。30分ぐらい待つと女子バレー部が練習を終える挨拶をして体育館から出てきた。ナツキが体育館から出てくるのが見えたので、話しかけようと思ったが、今出ていったらせっかくバレー部員に見つからないようにしたのが無駄になる。見つからないようにラインで連絡しよう!と思い直した。
「部活が終わったら、昇降口まで来てくれないか?」とメッセージを送って、昇降口でナツキを待つことにした。部活をやっている人たちは、部活が終わったら部室で着替えてそのまま帰宅すると思うので、昇降口をナツキとの待ち合わせ場所にした。昇降口に先回りして10分ほど待っているとナツキが走ってやって来た。
「セイ、お待たせ~。今日も一緒に帰ってくれるの?」
「うん。ぶっちゃけるとカジワラと一緒に帰ろうとしたんだけど断られちゃってさ。何かカジワラを楽しませることを考えなきゃいけないんだけど、なかなか思いつかなくてさ。恥を忍んで聞くけど、ナツキは俺と何をしてると楽しい?」
「え?私?そうだな~?私は……。」
ナツキが俺の質問に答えようと腕組みして考え始めると、グ~!とナツキのお腹が鳴る音が聞こえた。
「あはは。恥ずかしいな。」
ナツキはバッとお腹を押さえて恥ずかしそうにしていた。
「お腹すいているなら、何か食べて帰るか?」
と俺が提案すると、ナツキは恥ずかしそうに笑いながら、「うん。出来ればそうしたい。」と同意した。
俺とナツキはどこかで何か食べてから家に帰ることにした。