第49話
ナツキと帰宅し始めてすぐに、「セイが一緒に帰ろうって言ってくるなんて珍しいね。何かあったの?」とナツキが俺の普段と違う行動の理由を尋ねてきた。
俺は正直に理由を答えるのが申し訳ない気がしたので、「一応付き合ってるんだし、たまにはいいかなと思ってさ。」と嘘をついた。すると、ナツキは嬉しそうに笑いながら、「そっか。嬉しいな。一応彼女として扱ってくれて。」と言った。
ナツキの気持ちを聞いて、俺は嘘の理由を話したことの方がナツキに対して申し訳ない気持ちになったので、「ごめん。今言ったことは嘘なんだ。本当はカジワラに『彼女と帰ったことがない人とは一緒に帰らない。』って言われたから、ナツキと帰ることにしただけなんだ。ホントにごめん。」と今度は本当の理由を答えた。
それを聞いたナツキは一瞬悲しそうな表情を見せたが、すぐに笑顔に戻り、「大丈夫だよ。セイが好きなのはカジワラさんだって分かってるから。たとえカジワラさんに言われて、セイが私と一緒に帰ってるとしても、私はセイと一緒にいられる時間が増えてホントに嬉しいよ。あ!別に変な意味はないよ!ただ高校に入ってからセイと過ごす時間が減っていたから、単純に友だちとして嬉しいってだけだからね!」と返答してきた。
「分かってるよ!俺も友だちとして、このままナツキと一緒にいる時間が減って行って、いつの間にか友だちじゃなくなっているっていうのは嫌だからな。」
俺が正直な気持ちをナツキに伝えると、ナツキはさっきまでの少し悲しそうな笑顔から本当に嬉しそうな笑顔になり、「そうだよね!セイも同じ気持ちだったなんて嬉しいな。」と言ってきた。
その笑顔に何故か少しドキッとしながら、今だったら聞けるかな?と思い、さっきのミナという女子の発言で気になることをナツキに尋ねようと思った。
「なぁ、ナツキ?ナツキってモテるの?」
俺の率直な質問を聞いたナツキは少し狼狽えながら、「え?何?突然?私がモテるかって言われたら、モテないと思うけど。」と答えた。
「そうなのか?今まで告白されたことはないか?」
「告白⁈……告白されたのは2回くらいかな?」
「なんだそのくらいか。」
1度も告白されたことない俺に比べたらモテてるじゃねぇか!と俺は内心慌てながら、平静を装っていた。
「うん。今月は2回かな。」
「『今月は』って何だよ?そんな毎月告白されてるのかよ?」
「え?うん。高校に入ってからは月に2,3回は告白されてる。」
「そ、そうなんだ?」
幼馴染の知らない一面を知り、俺はひどく驚いた。
毎月2,3回も告白されている⁈ナツキのどこにそんな魅力があるんだ?ていうか俺、全然知らなかったんですけど!ナツキもなんで言ってくれないんだよ!……って、幼馴染だからって何でも話すとは限らないよな。むしろ幼馴染だから話せないこともあるよな。あれ?もしかして……。
「あのさ、ナツキ?告白って、男子バレー部員からもされたことある?」
「え?……うん。何度かあるよ。何で分かったの?」
「え?えーと、その……ナツキの部活が終わるまで待っていた時、先に終わって体育館から出てきた男子バレー部の数人ににらまれたから、もしかしてって思ってさ。」
「そっか。ごめんね。」
「何でナツキが謝るんだよ?ナツキが悪いわけじゃないじゃん。」
「そうだけど、ごめん。」
場の空気が悪くなって俺もナツキも何も話さなくなってしまった。しばらくは何も会話せず歩いていたが、俺とナツキの家までもう少しのところで、このままでは良くない!と俺は考え、「毎月2,3回も告白されてて、モテない発言はないわ~。」とナツキを茶化す発言をした。
「え?でも、漫画とかだと毎日誰かに告白されたり、異性の生徒全員から告白されたりするキャラとかいるじゃん!それに比べたら私なんて全然……。」
「プッ。アハハハハハ!漫画のキャラと比べるなよ!あんなのフィクションだぞ!フィクション!」
「何よ!笑わなくたっていいじゃん!」
「アハハ!ごめんごめん。」
何とか場の空気が悪いまま別れることはなさそうなので俺は少し安心した。
そうこうしているうちにお互いの家まで来ていた。
「それじゃ、ナツキ、もしかしたら明日も一緒に帰るかもしれないから、その時はよろしく。」
「うん。期待しないでおくよ。じゃあ、おやすみ~。」
「おやすみ~。」
俺とナツキは同時にお互いの家のドアを開けて中に入った。
しかし、ナツキと一緒に家に帰ってきたが、これがカジワラと一緒に帰る時に役に立つのか?と俺は疑問に思っていた。