第46話
放課後、昨日と同じくキョウヘイがすぐに帰ってしまったので、俺とカジワラとハタケの3人で漫画の話をした。昨日はいまいち盛り上がらなかったが、今日は『チェン〇ーマン』の最新話が更新された日だったので、昨日よりは話が盛り上がった。しかし、『チェン〇ーマン』についてあらかた話し終えると一気に盛り上がりはしぼんでいった。なので、今日もキョウヘイがいる時よりも早く下校することにした。
カバンを手に取り、先に行ったカジワラとハタケを追いかけて、「ちょっと待ってくれよ!」と声を掛けたら、カジワラが、「トツカくん、何してんの?」と聞いてきた。
カジワラが聞こうとしていることの意味が分からず、俺は、「何って、一緒に帰ろうとしているだけだけど?あ!もしかして俺が下校の準備が遅れたことを責めてるのか?ほんの30秒くらいじゃん!そんな責めなくても。ていうかカジワラとハタケもちょっと待ってくれてもいいんじゃないか?」と答えた。
すると、今度はカジワラが俺の発言の意味が理解できないのか、不思議そうな顔をしながら、「トツカくんを待たないのは当然じゃん!一緒に帰る気がないんだから!私が聞いているのは、『何一緒に帰ろうとしてんの?』って聞いてんの!」と言ってきた。それを聞いて俺はますます混乱した。
「え?だって昨日まで一緒に帰ってたじゃん?何で急に仲間外れにするんだよ?俺なんかした?」
「私はトツカくんにとって何?」
「何って?それは……友だちだよ!」
「違うでしょ!私はトツカくんにとって、あ・い・じ・んでしょ!」
「おい!何言ってんだよ⁈カジワラ⁈ハタケ、違うからな!これはカジワラがボケて言ってるだけだからな!」
カジワラがハタケの前で俺の愛人発言をしたので、俺は慌てて否定した。
しかし、ハタケは全く動じることなく、「大丈夫だよ。トツカくん。私、レーちゃんから話聞いてるから。レーちゃんに告白してきた人がいるって。そっか。レーちゃんが愛人になった相手ってトツカくんだったんだ?」と言ってきた。
「いや、カジワラから告白してきた人がいるって聞いてたとしても、その相手が俺で、カジワラが俺の愛人になったってことが分かって何で驚かないんだよ⁈」
「それは、トツカくんがレーちゃんのこと好きなのは前々から感づいていたし、レーちゃんが愛人志望なのは知ってたから驚かなかったんだよ。」
「いやいや、俺がカジワラを好きなのを知っていたのなら、それについて驚かないのはまあいいよ。でも、カジワラが愛人志望なのを知っていたっていうのはどういうことだよ⁈カジワラはハタケには愛人志望のこと話してたのか⁈それに友だちが本当に愛人になって驚かないっていうのはおかしいんじゃないか⁈」
俺は混乱する情報が多すぎて理解が追い付かず、必死で理解しようとまくし立てるように質問した。
「うん。レーちゃんは小学生の時から愛人になるって言ってたよ。最初は私も、『やめた方がいいよ。』って説得したけど、レーちゃんはずっと考えを変えなかったから、いつの間にか説得するのをやめちゃったんだ。レーちゃんが愛人になって驚かなかったのは、そういう経緯があるからだよ。」
ハタケの説明を聞いて、「ああ、そうなんだ。」とは納得いかなかった。カジワラのことを思うのならなんとしても愛人志望の考えを変えてほしかったからだ。まあ、そんなことをカジワラを愛人にした俺が言えるはずもなかった。
「そっか。でもカジワラ、何でカジワラが俺の愛人になったら一緒に帰ってくれなくなるんだ?」
「それは、トツカくん、ヒナタさんと一緒に下校したことある?」
「え?ナツキと一緒に下校?高校生になってからは、ほとんどないな。」
「だからだよ。彼女と一緒に下校したことないのに、愛人とだけ下校するのっておかしいんじゃないって言いたいの!」
「でも、カジワラ、『私を一番大事にしてほしい。』って言ってたじゃん。だから、カジワラとの時間を大事にしようと思っていたんだけど……。」
「一番大事にはしてほしいけど、彼女をないがしろにはしてほしくないんだよ。それじゃ私が本命の彼女と変わらないからね。それに……。」
「それに……?」
「それに本命の彼女よりも楽しい時間を過ごさせてほしいから、本命の彼女と過ごして、どうすれば私を楽しませられるか考えてね。それじゃ、私とミーちゃんは帰るから。トツカくん、また明日。」
そう言い残すとカジワラはハタケと2人で帰って行った。俺はそれをボーっと見送った。