第43話
「そうかなぁ?ナツキは放課後も休日もバレーに打ち込んでいるから、彼女って言っても、デートとかはしなくていいから名前だけ貸してくれって言えば、OKしてくれると思うんだよな。」
「それは……確かにそうかもしれないけど、さっきセイが言ってた恋愛漫画みたいに偽の彼女になったナツキがセイのことを好きになったらどうするんだよ⁈」
「ナツキが?俺を?無い無い!ナツキは俺のこと男友達としか思ってないよ!それに彼女って言ってもデートなんかを全くしなければ俺を好きになることなんてないよ!それにしてもナツキが俺を好きになるなんて……アッハッハッハ!」
俺はキョウヘイが言ったことがあまりにもありえなくて大笑いしてしまった。そんな俺の態度を見たキョウヘイは、「あーそうかよ!セイがそう思うんだったらそれでいいよ!ただしどうなっても俺は知らないからな!」と吐き捨てるように言い残して戻って行ってしまった。
「何なんだよ?キョウヘイの奴?」
俺はキョウヘイがあそこまでヒートアップした理由が分からず、しばらく呆然としていたが、飲み物を買いに人がやって来たので、ボーっとしていたら変に思われる!と思い、飲み物を買ってカジワラたちがいる体育館に戻った。
俺が戻った時には、もう決勝が始まっていて、3-2が優勢だった。俺が人の多い体育館でカジワラとハタケを見つけて近づいて行くと、カジワラが、「あ!遅かったね。何かあったの?」と質問してきた。
「ちょっとキョウヘイと話し込んじゃってさ。あれ?キョウヘイは一緒じゃないの?」
俺は当然一緒にいると思っていたキョウヘイの姿が見つからなかったので、カジワラに尋ねた。
「イチノミヤくん?あれ?トツカくんと一緒じゃないの?まだ戻ってきてないからトツカくんと一緒にいると思ってたのに。」
「いや、キョウヘイは俺より先に戻ったはずなんだけど……どこ行ったんだろ?」
「あのさ、イチノミヤくんがどこにいるかも気になるけど、今はこの試合を見ない?イチノミヤくんは学校の敷地内にはいると思うしさ。」
ハタケがそう提案してきたので、俺も、「それもそうだな。」と返答して試合を見ることにした。さすが決勝戦だけあってどちらのクラスも上手かったが、最後は堀田先輩がいる3-2が勝利した。すべての競技の試合が終わり、表彰式を行ったあとクラスに戻った。余談だが、俺たちのクラスの成績は準決勝までいった男子バスケが一番良かったみたいだった。
クラスに戻るとすでにキョウヘイがいた。話しかけようかと思ったが、あんなことがあったので少し気まずかったため、話しかけるのをやめてしまった。その様子を見ていたカジワラが、「何かあったの?」と聞いてきたが、「別に何もないよ。」と答えた。
放課後、いつも通り4人で漫画の話をするのかと思っていたが、キョウヘイはホームルームが終わるとそのまま帰ってしまったので、俺とカジワラとハタケの3人で漫画の話をした。しかし、キョウヘイが抜けた穴は結構大きかったらしく、いつもより話が盛り上がらなかった。そのため、早々に話を切り上げた俺たち3人はいつもより早く下校した。駅への帰り道、今度はハタケが、「トツカくん、イチノミヤくんと何かあった?」と聞いてきたが、カジワラの時と同じく、「別に何もないよ。」と返答した。
その後、カジワラとハタケと駅で別れた俺は自宅へと帰った。
自宅に帰った俺はナツキが帰って来るのを今か今かと待っていた。